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悔い無き人生なんて、つまらないぞ!!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「後悔等、在ろう筈が有りません」
 
2019年3月、メジャーリーグ・プレイヤーとして、その幕を降ろしたイチロー(本名・鈴木一朗)選手は、こう言い残してグラウンドを去った。額面通り受け取れば、ベイスボール・プレイヤーとして称賛される表現だったろう。
しかし私は、引退会見でのイチロー選手の表情が、苦渋に満ちている様に感じられて仕方が無かった。発言とは裏腹に。
それは以前、メジャーリーグで通算3,000本安打を達成した後の会見で、イチロー選手が発した或る言葉を、私は確かに覚えているからだ。その発言とは、
「3,000本のヒットの裏には、10,000回近い凡退が在る」
と、いうものだ。
稀代のベイスボール・プレイヤーであるイチロー選手は、もしかしたら本気で、全打席出塁を目指していたのかも知れない。世の中の誰もが『出来ない』と織り込んでいることを、イチロー選手なら可能にするかもしれないという、私の望みなのかも知れないが。
 
「悔いは有りません」
引退、特にスポーツ選手の引き際で、よく聞かれる発言だ。世間ではそういった発言を、“潔(いさぎよ)い”と受け取るのだろう。
しかしその裏腹に、後悔は無いと発言しながら、多くの方が涙目で語るのが常だ。そしてその涙は、感極まって出ているものだ。そしてその極まった感情とは、自分の不甲斐なさを恥じて、後悔となっているものだと、私には感じられてならない。
一般の我々が、発言(悔いはないという)を、そのまま受け入れてしまうのは、引退会見の場を設けてもらえる程の選手なら、常人が為し得ない実績(エビデンス)を残しているからだろう。しかし、そのエビデンスだって、一般人の見地からすると物凄いものであっても、高みに登り詰めた者からすると、さして困難では無いのかも知れないのだ。そしてその裏腹には、イチロー選手の“10,000回の凡退”に象徴される様な、後悔が存在する筈だ。
物事の見方なんて、立場によって変わるのが当然だ。
 
マラソン界で、瀬古利彦(現・日本陸上競技連盟強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)のライバルとして、1980年代世界最強と称された長身の双子ランナー宗兄弟が居た。その兄、宗茂(そうしげる)選手は、引退会見で『悔いの無い選手生活でしたか?』の問いに笑顔で、
「後悔だらけですよ! だから、僕よりもっともっと凄い後進を育てるんです」
と、力強く発言した。
その表情には、一点の曇りも無かったと、私の記憶に残っている。『後悔だらけ』との表現の中に、まぎれもない本音が存在したからだろう。
事実、宗茂さんはその後、御自身も所属した実業団チームから森下広一選手を育て上げた。森下選手は、宗茂さんも成し得なかったオリンピックでのメダル(1992年バルセロナ大会・銀メダル)を獲得する。
宗茂さんは、オリンピック後の記者会見で森下選手を褒め讃えつつも、
「銀メダル(2位)で終わらせてしまった」
と、自身の後悔がにじむコメントを残していた。
私にはそんな宗茂さんの姿が、実に格好良く映った。
 
多分、宗茂さんは、ずっと瀬古利彦さんの陰に居た、御自身の選手生活が無念だったのだろう。現役当時の宗茂さんは、好成績は残したものの大きな大会で勝つことは出来なかった。勝つのはいつも、ライバルの瀬古利彦さんだったのだ。
 
日本では兎角、
「勝負にこだわるな。自分の全力を出せばいい」
と、教えられ言われることが多い。ところが、ここに本音が在るのだろうか。
結果を残さなければ、それ迄の努力は無に為るのではないのだろうか。
だから、ことを為し得なかった時に、感極まって無念さや口惜しさが爆発し、自然と涙するのではないのだろうか。
だから私は、この教えを敗れた際の“事前の言い訳”としている様に感じてならない。初めから負けを見込んでいる様で、私にはどこか違和感がある。
 
余分なことを考えずに、全力で準備し闘い、そしてもし、その上で敗れたとしたならば、ただただ、
「悔しい!!」
と、泣き叫ぶといい。
その方が、本音が前面に出せて、ずっとずっと潔い筈だ。
仮に、その姿を“恰好悪い”と嘲(あざけ)られたとしても、毅然とこう答えればいい、
「With nobody’s help.(誰の助けも借りてはいない)」
と。総ては、自分の力で得た結果だ。例えそれが、好ましからざる結果であっても、すべて自分の責任でしかない。
他人の結果を、四の五の批判するのは、何もしなかった者の証明であり、無責任に敗れし者を嘲笑するのは、実に格好悪いし恥かしい。その上、自らが何もせず他人(ひと)への批判は、その多くが直接に発せられず、むしろ、当人が聞くことが出来ない所で発せられる。いわゆる“陰口”だ。
陰口の様な卑劣な行為に対し、全力を尽くした上でも悔いを残してしまった者は、対応する必要は無いと思う。むしろ、そんな対応は無益でしかない筈だからだ。時間の無駄に他ならないのだから。
 
こうした社会の風潮は、ややもすると、頑張ること・努力すること・全力で取り組むこと等を、恰好悪いと思わせてしまう。物事の結果や過程を重視せず、他人の評価ばかりを気にしてしまうからだ。
そしてついつい、自分の目標や夢を必要以上に下げてしまっている様に思えてくる。その結果、為し得なかった後悔をしたくないが為に、何も挑戦しない悪循環に陥っている方が多いと見受けられる。
 
私だって、他人様に誇れる程の人生は送って来てはいない。自慢出来るほどの、エビデンスだって持ち合わせてはいない。
ただしかし、他人様に迷惑を掛けていないし、正当な批判としての陰口を叩かれたり、後ろ指を指されたりするような人生を歩んでは来なかった。
それでもなお、山程の悔いを残してきた。その殆どが、“~をしてこなかった”後悔だ。例えば私は、今もって英語は全く話せない。現代の大学生の多くが、自在に英会話するのを見て、実に羨ましく感じる。実際、大好きな映画を観る時でも、字幕を頼らなければ理解することが出来ない。今でも、学生時代にもっと英会話を勉強しとけばと、後悔しきりなのだ。
 
しかしその一方で、これでよかったとも思っている。
英会話を学ばなかった分、他の勉学をしたし、趣味に没頭することによって、沢山の想い出も出来たし沢山友人・知人も増えたのだから。
誇ることは出来ないが、決して他人に引けを取らない人生だったとも思っている。
自信を持って言い切ることが出来るのは、後悔したくないが為に目標を下げる様なことをしてこなかったことだ。出来なかったこと、遣り切れなかったことばかりの人生だったが、全力疾走はしてきたし持久力だって付いてきた筈だ。
 
多分私は、死ぬ直前まで後悔し続けるだろう。
いや、沢山の悔いを残す人生をこれからも送りたいと思っている。
 
そして、本当に死が迫ったら、
「遣り残しばかりの人生だったけど、まあまあだったな」
と、言い放ちたいと思っている。
 
少しだけ偉そうに、若い方々に伝えたい。
悔い無き人生なんてつまらない。目一杯高い目標と夢を持つがいい。それに向かって、全力で向かえばいい。
達成出来なくとも、後悔となるだけだ。全力を尽くした結果の後悔なら、その後の人生で背負って歩ける程度のものだ。また、全力で活きていれば、後悔なんぞ軽々と持ち歩くことが出来る力だって付く筈だ。
 
決してやってはいけないことは、何事か達成出来なかった場合を恐れたり、はたまた陰口を叩かれない様にと考えることだ。
他人の評価を気にし過ぎて目標を下げるなんて、“まっぴら御免”と言ってやればよい。
 
だから、沢山の悔いとなるかもしれない目標を立てよう。
 
全打席出塁を目指したで有ろうイチロー選手だって、沢山の後悔を背負ってこれから先の人生を活きてゆくのだから。
 
 
 
 
***

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2020-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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