メディアグランプリ

画家が論理思考を人に教えられるようになった理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:門間由佳(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「あなたは、プロデューサーが必要だね」と、画廊のオーナーが言いました。「絵はうまい。技術はある。でも、画題がバラバラで、何を言いたいかわからない。こんな画家を売り出せない。言いたいことがあるんだろうが、さっぱり伝わらない。ひどい」そのオーナーの見下すような態度に、私は返す言葉が見つかりませんでした。長い気まずい沈黙が流れました。その後、どう応えたのか、15年経った今ではよく覚えていません。
 
その画廊とご縁を頂いたのは、友人の個展がきっかけでした。浅草橋という下町情緒のある街並みの中にある、細長くモダンな二階建て。それが、マキイ・マサル・ファインアーツでした。当時、私自身も個展を毎年のように開催していましたので、何度か画廊に通ううちに、「ここで個展ができたら嬉しい」と考えるようになりました。
 
と言っても、画家がやりたい、というだけではその画廊で個展を開くことはできません。画廊側が、「自分の画廊でこの作家の絵を飾りたい」と思わなければ、断られてしまいます。
そのため、まず、画家は自分の作品と略歴をまとめたファイルを画廊主に見ていただくのが通例です。事務の方に話して、オーナーに作品ファイルを見ていただきました。すると、
オーナーが「面白い。実際に観に行きたい」と言ってくれて、自宅まで足を運んでくれました。絵を見てとても気に入ってくれて、「自由に発表しなさい。画廊の使用費用も入りません。売れなくても構わない。門間さんの作品がもっと見たい」と、トントン拍子に話が決まりました。
 
感激した私は、オーナーの期待に答えようと、渾身の作品制作に励みました。個展開催を迎えました。しかし、颯爽とやってきたオーナーの顔が、展示を見た瞬間、さっと曇りました。その暗い表情は、私が大失敗を犯したことを示していました。でも、私にはその理由がわからないのです。絵を見ては目をしかめるオーナーの歩みにただただ、ついて行きました。無言で絵を最後まで見続けたオーナーが、告げたのが「あなたにはプロデューサーが必要だ」という言葉でした。
 
とにかく、覚えているのは、「プロデューサーなんて欲しくない」という強い反発と、「なんて自分には考える才能がないんだ」という絶望で、顔が赤くなってくるほどの恥ずかしさでした。当時は、自分にしかできない表現方法を模索している頃。しかも、美術業界の常識からはみ出た方法に向かい始めていた自分を自覚した頃です。心細い中で、自分を後押ししてくれる画廊主が現れたと私は勝手に勘違いしてしまったのでした。
 
「勘違いした自分を認めて、強くなるしかない」大きな挫折感から、自分に何度も言い聞かせました。「常識からはみ出ようとしている自分は、自分が自分のプロデューサーになるしかない」厳しい現実に正面から向かい合いました。【何か、自分の中に生まれつつある】という、小さくて掻き消えてしまいそうな胸の中の確信を、どうにかして掴み取りたかったのです。絵を描いて社会に何らかの貢献ができる将来の自分、でありたい。自分の絵を、自分を、信じたかったのです。
 
本屋に向かい、初めて考えることを鍛える本を手に取りました。『メモ・ノート活用術』中島孝志著。『考える技術・書く技術』バーバラ・ミント著。『マインド・マップ』トニー・プサン著。『イシューから始めよ』安宅和人著。何十回と読んでも、さっぱり頭の中に入りませんでした。でも、ここで挫けたら終わりだ、諦める訳にはいかない、と思いました。
 
舐めるように線を引き、本を片手に白紙に自分の考えを書き出して実践してみました。書いているときは、「これが考えていることを、書き出して整理することなのだ!」と思っても、
後で見返すと、何を考えていたのかさっぱりわかりません。「やっぱり私には無理なのだ」と、山のように書いたメモに気持ちが真っ暗になりました。
 
そんなとき、「それで、諦めるのか?また、あの時のように、『プロデューサーが必要だ』と言われたいのか?」自分に問いかけました。あんな想いは2度としたくない! と、とにかく、考えたことを書き出す作業を続けました。
 
そんな日々が2、3年続いた後。奇跡は突然起こりました。「言葉は稚拙だけど、どうしても伝えたいことがあるのがわかる」と、絵を買っていただき、さらに、「買う人を紹介します」と言われたのです。ある勉強会でのことでした。
 
美術業界の勉強会ではありません。経営の勉強会での出来事でした。「考えを伝えることができる、ということは、こういう奇跡が起きるのだ!」と雷に打たれたように感動しました。
訓練を繰り返していけば、必ず、自分の絵や考えることは、人に伝わるようになるんだ、と確信できた瞬間でした。
 
その後は、考えを書き出すことが楽しくなってきました。そうすると不思議なもので、自分の絵がどのように社会に貢献するのか、はっきりと見えてきました。「絵を通じて持ち主が成長し、周囲も繁栄するための絵」という自分だけの絵画の立ち位置が浮かんできたのです。そしてそれが、直接販売する画家としてのスタートになりました。
 
早いもので、振り返ればそれから10年経ちました。今の私は、オーダー絵画を描く中で、依頼主の思考整理も自然にサポートできるようになりました。【考えることの重要性】【自分で自分の行きたい方角を見出し、セルフプロデュースする楽しさ】をオーダー絵画の中で伝えています。
 
 
 
 
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2020-11-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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