メディアグランプリ

朝井リョウ最新刊『スター』を読んで


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:野村美帆(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
いきなりですが、もしあなたが「星を描いてください」と言われたら、どうするだろうか。おそらく、多くの人が迷うことなく、5つの角が生えたような、クリスマスツリーのてっぺんで目にするような“星”を描くと思う。いわゆる「星形」である。しかし、この星形が本当に正しいと言えるのだろうか。実際には、誰もその形を知っている人はいないのだ……。
最近した読書の中で、最も心に残った作品がある。朝井リョウさんが2020年11月に発行した『スター』という長編小説だ。TBSのエンタメ番組、「王様のブランチ」のブックコーナーで紹介されていて、興味を持った。また、そのコーナーでは、朝井リョウさんの特集が組まれており、『スター』という作品に込めた思いもそこで語られていた。
朝井リョウさんは、誰もが知るものであり、なおかつその実態をつかめないものの象徴として「スター」を挙げ、それは現代の人間一人ひとりの価値観にも通じるものではないか、と語っていた。その含蓄のある言葉を聞いて、私はすぐにその意味を読んで確かめたいと思った。そして、本屋に直行した。
本屋に行くと、文芸コーナーの一番見える棚においてあり、すぐに気がついた。そのまま手に取って意気揚々と読み始めた。そして、あっという間に読み終えた。集中力の続かない私は、長編小説に苦手意識があったので、自分でも驚いた。
『スター』に登場する主人公は二人。大学4年生でともに映画サークルに所属している、立原省吾と大土井鉱である。省吾は、作品作りに対してはストイックで時間を惜しまないタイプ。鉱は、自らの勘を頼りに素早く決断し、スピーディーに作品を仕上げるタイプだ。性格を異にする二人は、卒業後別々の形でクリエイティブな仕事に携わることになる。省吾は、日本映画界の巨匠に弟子入りした助監督として。鉱は、YouTubeの動画クリエイターとして。その中で、二人はクリエイターとして自分なりの価値基準を見つけていく。
この物語は、「プロとアマの境界線が消えつつある現在において、作品の質や価値をどのように測るのか」というのが大きなテーマになっている。私自身も現在ライティング・ゼミに通う身。実質アマチュアライターであるから、この問いにとても親近感を感じていた。
正直に言うと、私はこの本を読むまで、プロとアマの境界線が消えることを極度に嫌っていた。なぜなら、プロほどのプライドがない一般人が、プロたちの努力をよそに市場を侵入し、楽をして収入を得るというシステムが、理不尽だと思ったからだ。また、世間に迎合してバズらせた作品が増えることで、作品の質や価値がその善し悪しを問わず、人気投票によって決まってしまうのではないかという懸念があったからだ。
しかし、本を読み終えて、考えが変わった。たとえ自分の好きな作品が世間的な評価を受けなかったとしても、自分がその品質を認める限りそれでよいと思えるようになったのだ。反対に、自分の価値観で他人の行動を批判する筋合いも全くないと感じるようになった。じっくり悩みながら労力をかけて作られたものに美を感じる人もいれば、短期間のうちに量産されるものに価値を置く人もいる。私は、前者を好むが、それは単に好みの問題であって、物事の善し悪しではないのだ。だからこそ、今の時代に大切なことは、多様な価値観を自らの善悪のふるいにかけて排除しないことだ。そして、どんなに自分が周りと違っても自分の活動に自信を持つことが重要だと思う。
私は今、天狼院書店のライティング・ゼミを受講している。挑戦心がない私に参加を決意させたのも、この本のおかげだ。文章を書くことは高尚で、才能があるべき人がやるものだ、と数日前まで決めつけていたが、今はアマチュアとして軽い気持ちで文章を書いている。少し前まで毛嫌いしていた人に、自分自身がなったのである。普通の大学生が一つの記事をきっかけにプロになる、アマからプロへの移行が一瞬で起きうる天狼院のシステムは、まさに朝井リョウさんの描く世界の身近な例である。
また実際にアマチュアライターとして文を書いてみて、率直に感じたことがある。それはアマチュアであれプロであれ、肩書関係なく、クリエイターとして生きていくことは難しいということだ。今はSNSが隆盛し、情報過多の時代。アマからプロにステップアップしてもなお自分の作品を見出してもらうのは大変だ。そして、スピード・量と質のどちらも担保するのは至難の業である。
私が文章を習う目的は、自己表現の幅を広げるためだ。だからこそ、自分の書きたいことを自分の書きたいように書ければよいと思っていた。しかし、ライティング力を鍛えることによって、自分の書きたいことを他者が読みたいものに変換して書くことが可能になると知った。今はその域にははるかに遠いが、いつかは到達したいと思った。
価値観は人それぞれ、自分で決めていくものだ。だから、最初から正しく定まった形などない。どんなにいびつな形をしていてもそれが星形だと主張できる自信がさえあれば、存在できる。そんなメッセージがこの本から伝わってきた。
 
 
 
 
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2020-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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