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健さんと私とを繋ぐもの


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦康志(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「僕はいつもマウスピースをしています。皆さんもするといいですよ」
 
俳優の高倉健さんが、ドキュメント番組の中で、スタッフに向けてそう語っていました。何を意図してマウスピースを使っているのかまでは語っていませんでした。いつもといっても演技している時は外すでしょうし、いつ使うのだろうかと疑問でした。
 
健さんが亡くなる少し前の番組だったので、2013-14年頃の発言だと思います。遺言のような提案です。
 
当時そんな疑問を持っていた私も、今ではマウスピース愛好家です。そして健さんと同じように、マウスピースするといいよ、と知人友人に勧めています。
 
子供の頃、父によくこう言われました。
 
「口を閉じなさい。馬鹿に見えるから」
 
私はいつも口をポカンと開けて暮らしていました。そうしないと息ができないからです。父に叱れても、治せません。馬鹿に見られることよりも窒息しないことの方が大切だからです。耳鼻科に行くと慢性鼻炎と診断されました。
 
息がつまって死にそうになる夢を何度もみました。
 
大人になって、知らず知らずのうちに、口を閉めて暮らしても苦しくなくなりました。慢性鼻炎が自然に治ったのです。息ができず死にそうになる悪夢からも解放されました。
 
その一方で、「口を閉じて寝なさい」と言われるようになりました。今度は歯科の主治医からです。口閉じに縁のある人生です。口を開いて寝ると虫歯になりやすいというのが理由です。口を開いて寝ると口の中が乾く。その環境が虫歯菌の繁殖には最適だというのです。寝ている間に無意識に口が開いてしまっているんだと思いますよ、と指摘されました。
 
口を開かないようにするために、絆創膏で唇を閉じて寝るといい、とアドバイスを受けました。ドラッグストアで一番安い紙絆創膏を買って来て、使い始めました。酔っぱらって忘れることもありましたが、がんばって実践しました。朝まで絆創膏が残っていれば成功ですが、時々絆創膏は疾走します。外泊すると忘れてしまうことがしばしばありました。
 
絆創膏作戦を実践している時に、左上の奥歯が痛くなって歯医者に駆け込みました。進行した虫歯が原因でした。ショックでした。歯の裏から攻められていたので長い間気づきませんでした。神経まで達していたので、神経を抜くという大がかりな治療になりました。空いた穴をプラスチックで埋めました。入れ歯のような自歯になりました。ショックでした。
 
この時に、虫歯の治療と並行して、マウスピースを創ることを勧められたのです。
 
虫歯菌から歯を守るためにマウスピースは最適、だと主治医に勧められたのです。絆創膏で唇を止めるよりも大きな「口閉じ効果」があるというのです。主治医はこう続けました。
 
「マウスピースは口閉じ効果に加えて、唾液の分泌を促進する効果があるのです。唾液こそ、最高で最適な万能薬であり予防薬です。唾液で歯を包み込んでおけば、虫歯にならないし、初期の虫歯であれば進行を止められます。唾液様様です。特に就寝中が重要です。就寝中は毎晩マウスピースをしてください」
 
私は入れ歯が一本もありません。死ぬまで全て自分の歯で暮らせるよう願っています。マウスピースで唾液を充満させれば虫歯にならないし虫歯の進行をストップできる、という主治医の提案はとても腑に落ちました。
 
目的によっていろいろなマウスピースがあると説明を受けました。いびき防止、歯ぎしり防止、無呼吸症治療などです。今回の主目的は就寝中に口を閉じ口腔内を唾液で満たすことなので、その目的で開発されたオーダーメイドのマウスピースを注文することにしました。歯型をとって、歯にすっぽりはめるタイプのマウスピースです。上下一体のものです。保険がきかず高価なのですが、信頼する主治医の提案なので納得しました。
 
使ってみて、大きな効果を実感しています。もっと早く創ればよかったと思います。マウスピースの端が上下の唾液腺を刺激して唾液が多く分泌されます。口の中で唾液があふれてくることを実感します。
 
酔っぱらって寝ても付け忘れることがありません。それだけ体が効果を覚えているということです。外泊する際も忘れません。
 
私の口の中には、現在、初期の虫歯が三本あります。普通なら治療した方がいいそうですが、マウスピースと唾液でどこまで抑えられるかを実験するために、治療するのを止めました。唾液が歯の再石灰化を促進するそうです。自然由来の詰め物が虫食い部分を埋めてくれると期待しています。主治医も成果が得られることを楽しみにしています。
 
寡黙な高倉健さんが、マウスピースを勧めていた理由が、今はよく理解できます。健さんもマウスピースの効果を強く実感していたのだと思います。
 
健さんは起きている時もマウスピースをしていたのかもしれません。寡黙なのはマウスピースをしていたせいかもしれません。マウスピースをすると全く話せないのです。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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