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”Cool Japan”の源流に出会う


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記事:梅とら (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
大阪・難波から日本橋を抜け、谷町筋との間にその劇場はある。「国立文楽劇場」、1984年に日本で4番目の国立劇場として建てられたその劇場では、大阪発祥の重要無形文化財・文楽が上演されている。
 
皆さまは「文楽」をご存知だろうか。
 
多くの方が文楽が何かと問われたら、「文楽=人形劇」と答えるのではないだろうか。答えとしては「惜しい!」と私は答えたい!!! 私も文楽を実際に見るまでは同じように思っていたのだが、一度見てみるとその印象はガラッと変わる。太夫、三味線、そして人形の三位一体のエンターテイメント。それが文楽である。
 
文楽が人形を使った芝居であることをご存知の方は多いと思うが、実際に文楽を見たことがあるとなるとかなり人数は限られるのではないかと思う。同じ日本の伝統芸能であっても歌舞伎や落語に比べるとマイナー感は否めない。しかし、私は今ここで文楽こそ”Cool Japan!”の土台であると主張させてもらいたい。
 
私が文楽に初めて出会ったのは昨年の1月。『初春文楽公演 七福神宝の入船』と呼ばれる公演を知人から誘われたのがきっかけであった。実はそれまでも何度か誘われていた。しかし「なんか難しそう」という漠然とした理由でお断りしていたのだ。しかしこの時は「この演目はわかりやすいよ」との知人の言葉で行くことを決めた。
 
初めての国立文楽劇場。入ってみるととても大きく、綺麗で、洗練されていることに驚いた。会場中が新年の飾りで彩られ、入り口には大きな鏡餅、柱という柱には餅花、舞台の上には干支の大きな凧とにらみ鯛。これぞニッポンのお正月! な豪華な雰囲気である。
 
始まった演目も豪華なものであった。舞台の上には七福神の人形、向かって右側にある小さな舞台には太夫と三味線。同じ裃を着た男性がそれぞれの役割に合わせた14人がずらーっと並んでいるのである。これだけでも圧巻である。演目も喜劇で面白く、また舞台の上にセリフがそのまま字幕で出るので慣れない自分でもわかりやすく楽しむことができた。
 
私の小難しい古典を題材にした人形劇という文楽のイメージは崩れ去った。裃を着た男性が人形を操り、セリフまわしをし、三味線を弾く。この独特の三位一体のエンターテイメント。それが文楽である。
 
そう、文楽とはただの人形劇ではない。人形を操る人がセリフを言うのではなく人形は人形役が操り、セリフは太夫が担当、音響は三味線。三役が阿吽の呼吸で作る作品なのだ。
 
文楽の舞台は独特だ。手前から奥へと何層にもなっており、人形使いの足を隠すように作られている。つまり人形使いは上半身しか見えない状態である。彼らは腰の高さで人形を操り、履いている下駄を鳴らすことで効果音を入れることもある。その違和感が出ないように、現実に戻されないように手前の層にもセットが組まれているのだ。
 
この舞台の層(レイヤー)が文楽の舞台により奥行きをもたせている。時には手前の層と奥の層で芝居をすることで「人形劇」とは思ええない臨場感のある演出ができるのだ。これは今のアニメーションのセル画と同じ仕組みだ。
 
続いて人形が演じる芝居に声をアテレコするのが「太夫」の仕事だ。メインの大きな舞台の右端に「出語り床」と呼ばれる太夫と三味線用の小さな舞台がある。太夫はそこから舞台を見、芝居をする。時には一人で何役もこなしながら、芝居をする。声優の仕事、まさにそれである。
 
最後は三味線、音響担当である。人形の動き、太夫のセリフに合わせて三味線だけで効果音、BGMとシーンに合わせて音を入れていく。どんなに素晴らしい動きであっても、どんなに感動させる芝居であっても、この三味線があるのとないのではやはり臨場感にかけてしまう。三味線があることで登場人物の心情など細かな部分まで表現され、臨場感が生まれるのだ。
 
人形、太夫、三味線の一体感を楽しむのが文楽の醍醐味ではあるが、もちろん演目の内容も魅力的だ。江戸時代の話なので、古典にはなるのだが、セリフは字幕が出るので、独特の台詞回しをされても字幕を見れば意味はわかる。そしてどの公演も2−3本立ててまるで昼ドラのようなドロドロとしたもの、悲しいものと喜劇といった明るい作品との組み合わせだ。江戸時代の話であるのに関わらずすぅっと心に入ってきて、楽しみ、共感のできる内容だ。人の世はいつになっても求めるものが同じなのかもしれない。
 
文楽は今のアニメーションと同じ役割分担でできている。人形という画と声優役の太夫、音響の三味線、ストーリーは喜怒哀楽にうったえる共感性の高い内容。日本が誇る”Cool Japan”の源流がそこにはある。アニメが好きで、以前の私のように文楽を「難しい古典」と思っている人にこそ体験してほしい。アニメが好きであれば絶対に楽しめるはずだ。一人でも多くの方に日本の生んだ素晴らしいエンターテイメント・文楽を是非とも楽しんでほしいと願うばかりだ。
 
 
 
 
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2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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