洗濯しない時の選択
記事:重冨 剛(ライティング・ゼミ)
人生は選択の連続です。
その中で結婚というのは、かなり大きな人生の選択ですよね。
だって、今まで他人だった男女が家族になるのだから。
結婚して間もない頃のことを書きますね。
「もー、脱いだパジャマぐらいちゃんと畳んでよ!」
えっっーーー?
新婚夫婦の朝の会話でした。
私はさいしょ、妻の言っている意味が分かりませんでした。
脱いだパジャマはベットの上に脱ぎ捨てるもの。
洗濯するのであれば、洗濯かごに投げ入れるもの。
その2択しかないものだと思っていました。
あなたは、朝起きて脱いだパジャマを畳みますか?
私の辞書に「脱いだパジャマを畳む」という文字はなかったのです。
突然のカルチャーショックで動揺した私は、少し早口になりながら言い返しました。
「オレは今まで生きてきて、脱いだパジャマを畳んだことはないし、親から畳めと言われたこともない。どうせまた着るパジャマを畳む意味が分からない」
それから妻は、私にパジャマを畳めと言わなくなりました。
ダブルベットの上には、私の脱ぎ捨てたパジャマと妻の畳まれたパジャマがある、
と思うでしょ。
しかし、我が家のダブルベットの上には私の畳まれたパジャマと妻の畳まれたパジャマが並んでいました。
そうです。
私の脱ぎ捨てたパジャマは、妻が畳むようになったのです。
妻は私の脱ぎ捨てたパジャマを黙って畳むという選択をしたのです。
自分のパジャマだけを畳み、私の脱ぎ捨てたパジャマをそのままにするという選択をしなかた。
もし妻がそうしてくれたなら、それはそれで問題なく過ぎていったでしょう。
しかし、妻はそうはしなかった。
私が脱ぎ捨てたパジャマを畳む妻の心理を考えました。
妻は、自分が使うベットの上に脱ぎ捨てられたパジャマがあるのが嫌なのです。
きれいに畳まれたパジャマがある部屋が好きなのです。
妻は私に、快適な生活とはどういうものなのか、黙って教えてくれたのです。
この場合、脱いだパジャマを畳まない私を非難するという選択もあったでしょう。
私の育ちの悪さや、だらしなさ、親のしつけの不備、などを攻撃することもできた。
でも、それはお互いにとって快適ではないと思ったのでしょう。
あの時、私を非難するという選択をしなかった妻には感謝しています。
それから数日後、私は自分の脱いだパジャマを畳むようになりました。
妻が畳んだときみたいにキレイな四角形には畳めませんが、一応畳むようにしました。
なぜ畳むようになったかといえば、妻が畳んだパジャマを着る時に心がチクリと痛むからです。
妻は私のパジャマを畳むことをそれほど苦にしていないかもしれない、なんとも思っていないのかもしれませんが、私の心はちょっとは痛みます。
それなら脱ぎ捨てる気ままさより、自分で畳む方を選んだ方が気が楽だ。
そう考えて、自分で畳むという選択をしたのです。
私の辞書に、脱いだ服は洗うのであれば洗濯カゴに、洗わないのであれば畳んで所定の場所に置く。
という文字が書き加えられました。
男と女が結婚して夫婦になるということは、こうやってお互いの価値観をすり合わせていくことなのでしょう。
すり合わせる過程で、いろんな摩擦が生じます。
最初は、お互いにデコボコですからね。
一方がデコったら、相手がボコる。
だけど、デコり過ぎたら相手を傷つけてしまう。
その後、私の辞書にはいろんなことが書き加えられました。
小便は便座に座って行う。
そして、トイレを出る時には便座のフタを閉じる。
洗濯物を干す時は、シワを伸ばしてから干す。
などなどです。
妻が私を夫に選んだという選択が、間違いではなかったと思ってもらえるように。
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