メディアグランプリ

国際比較文化論 《こんにちは赤ちゃん編》


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記事:Mizuho Yamamoto(ライティング・ゼミ)

 

生まれて初めて沖縄に行った昨年11月。
九州に住んでいて、沖縄に行ったことがないなんて! と不思議がられるが、暑いところが苦手な私は、あえてその地を避けてきた。
ハワイは好きなんだけど……。沖縄は湿度が高いからと。

しかし、今回だけは出産祝いで極東一大きな米軍病院の長期滞在者住宅を訪ねることに。
友人は夫婦ともに外国人。高齢でリスクの大きな出産で、出産予定日2か月前から入院。
夫も仕事を佐世保基地から短期間異動させてくれるところはさすがアメリカ。
入院しても食事は産前産後の5日間しか出ないというのは、びっくりだったが。
それ以外は、病院のキッチンで作るか、買って来るかで済ますという。
病院で食事が出ないことがあるなんて。

産後三日で退院して、長期滞在者住宅へ戻りその後1か月は通院で赤ちゃんと母親の管理。
異常がなければ佐世保へ戻ることになる。
できたら生まれる前が自由に動けるし退屈しているから遊びに来てねといわれたが、結局行けたのは生後9日目。

ホテルから電話をするとすぐに、同僚が貸してくれたというミニバンで、出産休暇中の新米パパが迎えに来てくれた。
当然、母親と赤ちゃんは住宅にいると思っていたら、何と、

“Hi Mizuho! Thank you for comming “

満面の笑みをたたえて後部座席で赤ちゃんに授乳をしていた新米ママ。
ポーランド人とドイツ系アメリカ人のハーフの赤ちゃんの可愛いことと言ったら。
(以下会話は日本語訳)

「沖縄へようこそ! さぁ、どこに行く?」

「えっ? 赤ちゃんも?」

「この子ったら、お外が大好きなの!」

というわけで、2150gの新生児とまずはビーチへ。
11月というのに泳いでいる人もいる波打ち際を4人で歩く。
さすがに赤ちゃんは歩かないが。
風がちょっと強いとすっぽり赤ちゃんを布で覆って父親が抱いている。
始終話しかけながら。

「ビーチに来たのは3回目だね! ほら、波の音がいいだろう」

(えっ、生後9日目で?)

「この子ったらね、歌が好きなんだよ」

エーデルワイスを歌いだす父親。
母親がハミングして、私もそれに加わり。

散歩しながらだんだんと日が暮れていく。

「ほら、お日様が海に沈むよ」

赤ちゃんはむずかることなくご機嫌に散歩を楽しんでいる様子。
イルミネーションが点灯し始めたクリスマス前のアメリカンビレッジを散策してレストランに入る。
大人の食事前に授乳、おむつ替え。三人で楽しく食事。

「日本人は出産後赤ちゃんも母親も1か月くらいは家から出ないと聞いてびっくりした!」

「いや、生後9日目でこうして普通に外出するのにびっくりなんだけど」

「でも、赤ちゃんはいろんな空気や音に触れるのが好きなんだよ。家の中だけでは、可哀相だなぁ」

そういわれると、そんな気がする。
生後1か月、ベビーベッドの中で天井見上げて暮らす日本人の赤ちゃんと、こうしていろんな場所に両親に連れて行ってもらう西洋の赤ちゃんと。
最初の1か月から、社交性を養う環境に置かれているから積極性を持った子に育つのか。

母親にしても「産後の肥立ち」が悪くなるから、1か月は布団に横になる時間を多くとるように言われたっけ。
夜中の2時ごろ長男を生んで、お昼過ぎに洗濯に行った私は、総合病院の看護師から授乳以外でうろうろしないで、寝ているようにと叱られた。
公衆電話をかけに行くと、耳が悪くなると言われ、週刊誌を読んでいると目が悪くなると言われ。

「産後の肥立ち」という呪文によって全ては禁止事項となった。今から30年前のこと。
たぶん昔の女性たちにとっては、出産のときくらいしか休めなかったという理由もあるのだろうが。
結構縛られて大変だったことを覚
えている。

それに引き換え、彼女はもういつものミニスカートにかかとの高いサンダルを履いて、散歩を楽しんでいる。赤ちゃんと一緒に。

文化の違いとひと言で片づけられないものを感じた。

ホテルのプールで泳ぎたいけど、水着を持ってこなかったという私に、2着持って来たから明日貸してあげると彼女。

リスクの大きな出産で、大事を取って早めの入院をするのに水着を準備して行くなんて、やっぱりすごい。
どんな状況でも、楽しむことを忘れず、過剰に用心しないところが私たち日本人との大きな違いだとつくづく思った。

夜道を歩きながら、ぐずりだした赤ちゃんがイルミネーションのキラキラしたところでは泣き止む。

「ね、この子は明かりが好きなんだよ。ぼくのプリンセス」

話しかけて、歌を歌って、

生まれたときから1人の人間として扱われることで、子どもの自立心が育つのは間違いないだろう。

赤ちゃんがいるから、あれができない、これができないと禁止事項に縛られる私たち日本人。
かと思うと、赤ちゃんや小さな子どもを盛り場へ夜遅くに連れて行く若い世代の親たちもいて。それは単なる親の都合。

赤ちゃんを親の所有物と考えず、その人格を大切に扱うことは日本人が学ぶべき点だと思う。

ホテルまで送ってもらって、ロビーでおしゃべりをしていると、カナダから来たという老夫婦が声をかけてきた。

「まぁ、かわいい赤ちゃん! 生後3日くらい?」

西洋的感覚の人々に驚く私は、日本人だとつくづく感じるできごとだった。

 

***
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2016-01-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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