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「おやすみなさい」の前のお話の時間


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記事:柴垣 あゆみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「おやすみなさい」と1日の終わりを告げる前。子供たちと4人並んで天井を向いて、互いの話を聴きあうだけのお話の時間がある。
毎日の日課というほどではないが、よかったことを3つ選び出して発表しあったり、子供の疑問に答えたり、母である私が話したい、聞かせたいことをじっくり聞いてもらったりする時間。
 
ある夜、眠そうな娘がおやすみなさいの前に「私は私のことが大好き」と言った。
それを聞いた長男は「何を言ってるんだ」と大笑いしていたが、私はとても大事なことだと思い、思わず語り始めた。
「自分のことを好きているっていうのは、すごく大事なことだと思う。ママはね、大人になるまで自分のことが全部嫌いだったんだよ。」と語り始めると、子供達は茶々を入れることなく、静かに話に耳を傾けているようだった。
 
「ママには小学校・中学校の頃からの友達がいない。イジメにあっていたからね。
今あなたたちがたくさんの友達と楽しく友達と過ごせてるのは、当たり前のことじゃないんだよ。
あなたがふざけて言った「バカ」や「キライ」という言葉一つでも、全く悪意がなくても、周りが楽しそうに笑っていても、言われた本人が傷ついている可能性もあるし、いじめられていると感じているかもしれない。
イジメられている、と感じる数日前までママには友達がいたんだけど、気がついたら一人ぼっちになってた。ママ以外の周りの子たちは、笑いながらバカとかキモいとか言って楽しそうにしているけど、ママは毎日悲しくてたまらなかったんだ。」
 
そう話していると、娘は小さな声で「聞いているだけで泣きそうだよ」と悲しげに呟き、長男は友達がいないことが不思議でたまらないようだった。
 
「うざい・死ねばいい・学校にくるな、は当たり前に毎日聞いていたし、学校にいてもいなくてもイジメられ、公園の遊具やベンチの全てに名指しの悪口を書かれててさ〜中でも一番悲しかったのは、家族のことまで書かれていたこと。
家族まで悪く書かれていると知った瞬間から、家族までも標的にさせてしまう自分は、もう消えてしまう方がいい、と思うようになり、ママは自分の顔・声・仕草も全部「自分のこと」を自分が一番キライになっていたんだ。」
 
よくあるイジメの話かもしれない。でも、私が子供たちに生きていく上で教えられる大切なことの一つなのでは、と思い話をした。
しかし、即興で自作の変な歌を歌ったり、子供と一緒にアイドルのダンスを真似して踊ったり、一緒に布団で暴れたりしている日々の私を見ている子供たちにとって、ママの過去は衝撃だったようだった。
 
イジメにあったせいだ、と決めつけるのは良くないかもしれないが、私は2年ほど前までは生きてきた人生の中で「自分を好きだ」と思えた瞬間はなかった気がする。
友達を作ること以前に人との関わりを持つこと自体が怖くなり、進級・進学しても友達は増えないし、バイトや就職しても対人関係が怖くなり人との距離が縮められず、友達と呼べる人はほとんどできなかった。今の私の友達は高校生になってからできた親友が一人と、大人になってからできた友達が数人いるだけだ。
 
「ママはね、昔から自分のことが好きだったら、もっと楽しかったんじゃないかな、って思うの。大人になってから友達が増やせるようになったのはね、イジメられてた時よりも自分のことが好きだなって思えるようになったからなんだよ。だから、新しい人と会うのも楽しくなったし、おしゃべりするのも楽しくなったんだ〜!」
 
そういうと、これまで黙り込んで聞いていた子供達が、自分たちが知っている私の友達の名前をあげながら、いつできた友達なのか聞いてきたので、親友を除いて「みんな大人になってからできた友達だよ。」と笑いながら答えた。
 
それから、子供達一人一人に自分のことが好き?と聞いてみた。
暗闇の中で表情こそ見えないが、3人とも笑顔で話しているのが想像できる明るい声で「自分のことが好き」と答えてくれたから、
「これからも自分のことを好きでいて欲しいな。
ママは、3人のことが大好きだよ。でも、可愛いから、かっこいいから、優しいから、お手伝いしてくれるから大好きなんじゃない。悪いことしたら叱るし、たまに喧嘩もするけど大好きなのは変わらないよ。ママを選んでくれた瞬間からママはあなたたちのことが大好きだからね。
あとね、3人がママをママにしてくれたから、ママは自分のことが好きになれたよ。ここにいてくれて、今日の話を聞いてくれてありがとう。」
と、顔が見えたらちょっと恥ずかしいなと思うことも伝えられた。
 
世間では自己肯定感の上げ方などの書籍が山のように出ている。実際に私もそれを読む一人だ。しかし、子供達には自分を一人として認め、愛して欲しい。悩み苦しみ抜け出せない暗闇に永遠に独りぼっちだと感じるような冷たい人生を歩んでほしくはない。
 
普段はあまり真面目な話はしないふざけた私だが、自分の人生経験をもとに、少しでも子供達に伝えられる「何か」があれば、きちんと伝えてたいと思うことがたくさんある。
子供は思ったこと、感じたことを素直に口に出してくれる。子供達から投げられる何気ない会話のボールも上手くキャッチして、私なりに上手く返していきたい。
だから私はこれからも、おやすみなさいの前のお話の時間を続けていく。
 
明日の夜は、どんな事を話してくれるかな、なにを話そうかな。
いつまで一緒に寝てくれるかな……。
「おやすみなさい」
 
 
 
 
***
 
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2021-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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