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合コン必勝法、あるいは「わたしパクチー好きなんです」と自己紹介する女子がつまらない問題

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横手さん 合コン

 

記事:横手モレル(ライティング・ゼミ)

 

合コンやナンパに行かないまでも、異性に興味をお持ちの皆さん。
また、お仕事や学業などで他者と触れ合うことのある皆さん。

初対面の集まるグループの中で、特定の彼ないし彼女にグッときてもらいたい、と焦るあまり、ひねった自己紹介でスベった経験はないだろうか。

わたしはある。

ダメ例その1「スキーを幼い頃からやってて……蓼科に山小屋があったので」

→ NG。スポーツという万人受けする題材を選んだのは良しとしても、雪国育ちではないくせに(わたしは田舎レスな東京もんである)スキーを選んだところなどおハイソ感が出る。今日び金持ち自慢はドン引かれるうえ、誰しも聞けば「別荘ね」とわかるところをあえて山小屋と言い換えるあたり、面倒な女オーラぷんぷんである。

ダメ例その2「映画が好きで……トリアー監督の《鬱三部作》には生の深淵を見ましたね」

→ 最悪。インテリな自分をアピールしたい欲が全面に出て、高飛車なことこのうえない。なんだよ「生の深淵」って。音で聴いてスッとなじまないレトリックは消化してもらうのにコストがかかるうえ、間違いなく初対面で《鬱》の一文字は厳禁である。

ダメ例その3「クラブで朝まで呑んだくれる青春でしたね」

→ 努力は見えるが不可。本当はこの言葉のあとに「中学のころからアナログ盤を収集してて、音楽むっちゃ好きなんですよ」と続けたいのだが、しょっぱなで万人の心をいただくべくチャラい言い方をしたせいで、「チャラいんだ……」とその後を聞いてもらえなくなる。

と、このように、本当は「その20」ぐらいまで列挙できるほど失敗例には事欠かないのだが、それこそわたしが《鬱20部作》になるため止めておく。

ここまで書いて、「イケメンやかわい子ちゃんなら顔が名刺なんだし話は早いんだろうなァ」と我がのっぺりフェイスを呪うわけであるが……このあたりで竹内一郎さんのベストセラー『人は見た目が9割』のタイトルを思い出して、早合点する方もいるかもしれない。

人は見た目が9割。

絶望しないでほしい。ご存知の方も多いだろうが、竹内さんは何も「生まれ持った顔の出来だけで9割」と、最後通牒をくだしたわけではない。人は表情や話し方などといったノンバーバル(非言語)コミュニケーションを含む総合力で、お相手への印象を決めるのだと説得してくださるのである。相手に訴えかけるコミュニケーションをこそ大切にしようぜ、と、こうおっしゃるわけである。

優しい……! ブスに優しい説法である。ちなみに完全に余談であるが竹内一郎さんは最高峰イケメンの中のおひとりである。

だがしかし。
イケメンは強い。
かわい子ちゃんは強い。

彼ら「(強いカードを)持つ者」と我ら「持たざる者」が張り合い、むしろ出し抜けるような戦い方が今、即時的に急務的に、必要である。そうでなければわたしの今夜の合コンに間に合わない。切実である。

と、そこで本棚の歴史本がわたしに囁きかける。戦い方を選ぶのならば、強き名将に学ぶべきだと。そうだ、エゴは捨てよう。わたしがかつて出会った「もっと話を聞きたくなった自己紹介」から学んでいこう。

名将その1「離婚された元ヨメが◯◯(某毒舌コメンテーター)なんです」

名将その2「親の新興宗教をなんとかやめさせたばかりなんです」

名将その3「数学オリンピック目指してたけど今はニートです」

これら名将の自己紹介には共通点がある。

「身の回りの人をずけずけ自己紹介に利用する」ということ。

「他人に評価された経験を、できれば数字とともに自己紹介に使う」ということ。

この2点である。「わたし」の魅力というのは、自分が言い張っても説得力がない。だから、たとえば「わたし超おしゃれ好きなんです」とモノサシのないことを言うよりも、「表参道でストリートスナップ7回は撮影されましたね、全部載りませんでしたけど(笑)」と説明するべきなんである。

小ネタにはなるが、この場合に重要なのが(笑)の部分である。ストリートスナップを複数撮られる評価を持ちつつも、掲載にはいたらない「ちょっとダメ」な自分を自覚している感を出すことで、自慢で終わらず、お相手からのツッコミどころ、余韻を残せるわけである。

つまり、わたしの心をつかむ自己紹介をまとめると、こうだ。

・自慢に陥らないこと。共感力をなめてはいけない。

・マニアックに走らないこと。しょっぱなから対象をせばめてしまうと、「引き出しの少ない感」をもたらす。

・他者の評価軸をしっかり利用すること。数字や実績で裏打ちを作る。

・おもしろい身の回りの人をずけずけ紹介すること。「おもしろい人にこそ、おもしろい人が寄る」の法則に従って、期待感を持っていただく。

・ツッコミどころを残すこと。パーフェクトな紋切りだけでは会話のキャッチボールができなくなる。名刺の強い人ほど、(笑)要素を取り入れるとステキである。

こんなところだろうか。

だからもう、「わたしパクチーが好きなんです」と自己紹介するのは止めようと思う。
ちょっと食文化に詳しくて、冒険心旺盛で、不思議ちゃんで、ひねったことを言う個性派なわたし、を演出するのは合コン一本勝負において悪手である。

あとはイケメン竹内一郎さんのおっしゃる通り、表情や身振りや呼吸にこそ気をつかおう。わたしは壁に向かってつぶやくのではなく誰かの心をつかみたいのだ。そして初めて、わたしは次の言葉を待てるのである。

「ええっ、なんでなんで」と。

そんなわたしの新しい自己紹介に興味を持たれた方がおられるのであれば、ぜひとも合コンにお呼びいただきたい。なんで唐突にそんなことを言うのかって、そんなの、モテたいからライティングゼミでこれを書いているのに決まっているじゃあないですか。

 

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2016-01-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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