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成人式で暴れない二十歳はこうして育った!


Mizuhoさん 成人式

 

記事:Mizuho Yamamoto(ライティング・ゼミ)

 

前回の記事を書いてすぐ駆け付けた、5年前に中学3年生だった教え子たちの成人を祝う会。
今年も、成人式を乱す二十歳の悪行が報道されていたが、それには中学校での育ちが起因しているのではないだろうか。

あまりにほのぼのと楽しい、3年間持ち上がりでおまけに統合のため閉校した学校の55人の成人の会に出席しての一考察。

会場は校区内のホテル。55人の卒業生の7割が出席していた会で、一人、

「ん?」

と思う青年がいた。案の定彼も私たち4人の教員の座るテーブルにやって来て、

「オレのことわかりますか?」

実は会に参加する前に、教員チームは集まって卒業アルバムで予習をしていた。もちろん会場にもアルバム持参。

「〇〇くん?」

「違いますよ~?」

「△△くん?」

「え~っ、ショック!」

「まさか、1年の時転校したAくん?」

「正解です! よかった、覚えていてくれて。オレ仕事で今沖縄にいるんですよ」

佐世保までの旅費も大変だったろうに。1年生終わりの転校から7年。7年ぶりに会う元同級生に、だれもが何の違和感もなく接していた。

もう1名中2で転校した女子生徒もいたが、転出した生徒が普通に参加しているところがこの生徒たちの絆の深さを感じさせる。

同じ高校の食物調理科を卒業した3人は、1人が東京のイタリアンレストラン勤務、1人が大分の大きなホテルのビュッフェを担当しているという。しかし、東京のもう1人は、はとバスのガイドさん。

「高校の先生から、残念だけどお前は調理のセンスがないからたぶんずっと裏方仕事だぞ。いいか? できたら、その明るさと楽しい喋りを生かせないかな? って言われたんです」

生徒の特性をしっかりとつかんだ高校の進路指導。たしかに自分は料理が好きだと思っていたが、やってみるとなぜかうまく行かないことだらけで、自分も自信が持てなかった。今の仕事は本当に楽しくて、大変なことも多いけど自分が生かせていると思うという彼女。
生き生きした表情がその充実を物語る。

後の2人は、高校で鍛え身に付けた技術を更に向上させようと頑張っている。

「先生、オレは今の仕事では終わらない。海外支店に希望して、技術者として頑張るから英語の勉強の仕方教えて」

英語の教員に迫るのは、首都圏のガス会社に就職したBくん。高校でも野球部のキャプテンとして頑張ったことが、奏功したと校長に言われたと話す。

「あの私が、設計の仕事をしてるって自分でもすごいと思う」

女子の少ない工業高校建築科で頑張ったCさん。恥ずかしがり屋の中学生だった。

学校よりゲームセンターに登校? していたDくんも通信制の高校で頑張っているし、不登校で中3の時の出席日数は二桁に満たなかったEくんは、高校では通信制から全日制に移って登校して、今は大学で得意のコンピュータを学んでいる。

競輪選手を目指し、厳しいトレーニングに耐える2人は野球部の仲良しだった。

看護師を目指して実習中だったり、介護福祉士として働いていたり。管理栄養士を目指す大学生もいれば、保育士として就職が決まったと話す短大生もいて。

「おれ、先生みたいな国語の先生になる!」

嬉しいことを言ってくれる教育学部の学生。

それぞれが二十歳の今を輝いて希望ではじけそうだった。

出席できなかった生徒たちも、それぞれに精一杯に生活している様子がわかって嬉しかった。

「今、大学で情報の勉強しているけど、どうやったら保育士になれる?」

中学生のころとちっとも変っていない、不二家のポコちゃんみたいなFくんのお悩み相談。
う~ん、この質問には、ちょっと困りながらいくつかの道をアドバイス。

「老人保健施設の調理師をしてたけど、会がつぶれて、ファッション系のお店に転職。結構楽しいです」

伯母がお世話になっていたので、彼女とは施設でたまに顔を合わせていたが、転職に不安そうだった頃とは見違えるような笑顔。

現実に直面し、悩みながらも自分なりの選択をして人生を切り開いていく二十歳の力に、彼らの今後を思う。

なつかしい学校生活をまとめたDVD上映、参加者の当日アンケートのランキング発表で盛り上がる。中学校の時モテていた男子と女怖かった男子と女子ベスト3などなど。
会の進行、司会の様子、中学生の時と変わらぬ素朴さとノリの良さ。55人しかいなかったので互いの顔が見え、背景を理解していて優しかった。我々教員も、気持ちをゆったりともって一人ひとりと向き合えた。

以前参加した大規模校の生徒たちの会では、参加者同士が顔を見たことがあるという程度の関係であったことも災いして、収拾がつかず。教員に「帰れ!」とヤジを飛ばし、ただただ飲むだけの男子がいて、そのうち店外でけんかが起こり警察がやって来る始末。対応しようと立ち上がる教員たちに幹事が、「警察は僕らで対応しますから、先生方は座っていてください」

大人の対応に感心し、気を遣う幹事が気の毒でならなかった。互いを知らない同級生と、すべての生徒を知らない先生とで構成される大規模校の弱点を見る思いだった。
40人の8学級320人は、中学生には厳しい環境だったということを改めて感じた。

右肩上がりだった日本経済には、黙々と言われたことをやるだけの労働者が必要だった。
だから、狭い教室にぎゅうぎゅう詰めの生徒を一斉授業で教育した。今の時代は、欧米で行われているアクティブ・ラーニングという、生徒一人ひとりの課題解決を中心とした学習を文科省が推奨している。右肩下がりの日本経済に対応するためには、考えて動く労働者が必要になってきたのだ。1学級20人台の欧米の方式で行う学び。しかし、1学級40人の環境を変えようとはしない。教育にかける予算がないから。それでいいのだろうか?

たまたま住んでいた地域の人員構成で、欧米並み27、8人学級だった前述の学校の生徒たちはアクティブ・ラーニングを先取りしていた。そして着実に、自分の道を歩もうとしている。

「それでは最後にお世話になった先生方へ、二十歳の僕たちから感謝を込めて花束贈呈を行います」

私たち4人の教員は、びっくりするやら嬉しいやら。最後に全員で、学級ごとに、記念写真を2回撮って会は終わった。

家庭訪問、遠足と様々な行事で歩きなれた道を教員4人で歩いた。市の中心部の学校で生徒数減少のため統合され、なくなってしまった彼らの母校だけれど、ほのぼのとしたあの雰囲気は変わらずに残っていたことが嬉しかった。

中学校の3年間、生徒一人ひとりとしっかりと教員が向き合い、生徒同士が互いを理解し合うことで平和な成人式が迎えられる。
そのために必要な教育予算を増やすどころか減らすという先ごろのニュース。先進国で一番少ない教育予算のこの国の子どもたち。

国にないがしろにされながらもよく成人できました! と、すべての若者を褒めるべきかもしれないと思ったりもする。

 

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2016-01-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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