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婚活や恋活に励んでいる本好きの方々へ、あなたは相手を探すところを間違っているのです問題について


西部さん 婚活

記事:西部直樹(ライティング・ゼミ)

 

「そんなので、本が好きとか、読んでいる、なんていうんじゃないよ」
妙齢で佳麗な女性は、高知の銘酒「酔鯨」をクイと呷り、泣き出すように語るのだった。
彼女は願っていた、大台に乗るまでには、何とか、と。
子どもを持つなら、タイムリミットがある。
その前に何とかなりたいと。

しかし……

 

最良の相手を見つけようとしている、若き友人たち、男性にも女性にも伝えたい。
もし、あなたが、本好きなら、本をこよなく愛する人なら
街の本屋にふらりと入って2~3時間は平気で過ごせる人なら
隙間の時間があったら、朝から布団の中で、食事をしながら、通勤の電車の中で、昼休みに、帰りの電車の中で、風呂に入っても、眠りにつく前に布団に入っても本を読むような人なら
いつの間にか本が増えて、密かに本は自己増殖しているのではないかと疑い、かつては本棚に綺麗に収まっていたはずなのにいつの間にか、床の上に積み重なり、塔を成し、それがいつしか密林のようになる、という経験をしているなら、

あなたの求める伴侶は、あるいはあなたを必要とする伴侶は、
婚活パーティにも、
出会い系サイトにも、
結婚相談所にも、
今は絶滅寸前の仲人おばさんの持ってくる釣書にも、
街を歩いていても、
出会えない。
あなたの伴侶は、そこにはいないのだ。

婚活や恋活に疲れた若者たち、え~と若者というにはいささか語弊を感じる人たちも、あなたが本好きなら、本好きは恋愛において越えなければならない三つの壁があることを自覚しなくてはならない。

 

○デート中に本屋に入れるかの壁

 

「それでさ、ちょっと本屋寄っていい、って聞いたの。そしたら、彼なんて応えたと思う?」
妙齢で華麗な女性は、徳島の銘酒「鳴門鯛」を片手に、わたしに酔眼を向けてくるのだった。
「う~ん、デートだからね、いいよ っていうよね」と、戸惑いながら応えると、彼女は憤然として言うのである。
「なんで? って聞いてきたんだよ。本屋は特には行きたくないよ、本しかないし、だって。当たり前だよ本しかないのは、本屋だから。本があるから本屋じゃない。本があるから楽しいんじゃないの、ねえ、違う?」
彼女の美麗なまでの剣幕を前に、わたしは細かく首を縦に振るしかなかった。

本が好きだと、本屋とか古本屋が目に入ったら、つい入りたくなる。
これは、鉄道好きな人が電車を見ると乗りたくなったり、写真を撮らずにはいられなかったり、時刻表を見ると至福を感じたり、あるいはマンホールハンター(マンホールの蓋を見るのが好きという人たち)は、歩いているとマンホールの蓋が気になって仕方ないのと同じである。と思う。
これは止められないのだ。
わたしも地方に行くと古書店とか新古書店(ブック○○のことだ)を見つけ、入ってしまう。掘り出し物があるかもしれないじゃないか、と誰にともなくいい訳をしながら。店によって品揃えは違うので、いろいろと確認しなくてはならない。
そういう者なのだ、本好きは。
だから、デート中であろうとも、本屋には行きたくなる。
これは止められないのだ。
つい、ふらりと本のあるところに吸い込まれてしまう、この行動を理解し、あるいは一緒に入って楽しめる人でないと、それは、それで辛いことである。

 

○時間があれば本を読んでしまうという壁

 

「この間、そいつは待ち合わせに遅れてきたのよ、だから、待っている間に本を読んでいたの。遅れるってLINEがあったから、暇な時間があるなら、読みたいじゃないの。待ち合わせはカフェだったし。それで、読んでいたら、泣けてきて……。高田郁のみをつくし料理帖の最終巻をデート中に読む方も悪かったと思うけど、もう、読むのが止まらないし、最後の方は、ねえ。読んだ、読んだらわかるよね。最後は、感動で、あの本はどの巻でも泣けるけど、特に最終巻だから、もう雲外蒼天だからさ。まさに、滂沱という感じで泣けちゃって。あと少し、というところでそいつが来て、びっくりするよね。待ち合わせ場所で女が泣いていたら、でも、本読んでいるのは見ればわかるのだから、本を読んで感動しているんだな、って思うでしょ。そうしたら、そいつは、読んでいる途中の本を取り上げて、なんていったと思う?」
妙齢で華麗な女性は、香川の銘酒「悦凱陣」の升を飲み干すと、わたしの襟ぐりを掴んで聞いてきた。
苦しいと思いながら、
「君が泣くなんて、素敵な本なんだね かな……」
わたしは小さな声で応えた。
彼女はわたしの襟ぐりを掴んだまま揺さぶり、怒りのこもった声で言うのだった。
「なんで? なんで本読んで泣いているの? わかんないなあ、小説なんて全部ウソじゃん。って言ったのよ。しかも、あと少しで読み終わるのに、取り上げて!」
わたしの襟から彼女の手をそっと引きはがしながら、頷くしかなかった。

 

本が好きだと隙間時間に本を読んでしまう。
釣り好きが、時間があれば釣りに出かけてしまうように。あるいは、旅行好きな人が休みになるとどこかに出かけてしまうように。
本が好きなら、本を読んでしまう。
これは止められないのだ。
わたしもご不浄の中で、布団の中で、移動の電車や飛行機の中で、風呂の中でも読んでしまう。妻と出かけても、電車で席が離ればなれになったら、これ幸いと本を読む。
本好きは、鞄の中に常に本が複数冊はいっている。複数冊なのは、読み終えた時、読むものがなくなってしまったらそれはもう大変なことだからだ。その恐怖に怯えて、数冊の本を持ち歩くのだ。
そして、隙あらば読む。
これは止められないのだ。
隙あらば読むということを理解し、あるいは一緒に本を読むということができる人でないと、それは、それで辛いことである。

 

○本の置き場所に苦悩するという壁

 

「この前、食事の帰りにあの奴(ああ、とうとう奴呼ばわりだ)が、どうしても送っていくというから、別に電車帰っても良かったのに、タクシーで送ってきて、そこで帰ればいいものを、降りて『水を飲ませて、いや、コーヒーでも』って無理矢理部屋に上がり込んで来やがってさ、こっちだって人を入れるなら、それなりの準備もしたいのに、それで、わたしの部屋を見るなり『なんだこりゃあ……』だってさ。
そりゃあさあ、片付いていないよ。忙しかったし。
奴が本棚と本棚の前に積み上げられた、ある作家が『わたしの本棚』というエッセイの中で『石筍のように』って表現したけど、その通りに積み上がった本の塔を見て、絶句しているの。
それで、図々しいことに寝室まで覗いて、『だめだこりゃあ』だってさ。
ベッドはセミダブルだけど、壁際の方には少し、まあ、少しだけだけど本を置いているから、実際に寝るスペースはセミシングルくらいしかないけど、ベッドのそばに本があったら幸せじゃない、なのに
『もっと片付けたら』だって、フン、これ以上は片付かんわい!」
妙齢で華麗な女性は、愛媛の銘酒「梅錦」を飲み干すと、「ふふ、あと一つで四国一周」と呟いて阿波尾鶏の炭火焼きを頬張るのだった。

 

本好きの悩みは、増えてくる本をどうするかだ。
ある人は、読み終えると人にあげたり、売ったり、寄付したり。
ある人は、図書館を利用したり
ある人は、電子書籍にしてみたり
それでも、本は増えてゆく。
本棚に収まるかと思っていたら、いつの間にか床に平積みをし、それが「石筍」のように丈が伸びてくる。石筍の何万倍の速さで、上へ上へと伸びてゆくのである。
これは止まらないのだ。
わたしはある時、とある本が読みたくなった。その本は確か、買い求めていたはずだ。一応注文した書店の記録を調べてみた。確かに買っている。ネットで注文し、天狼院書店で受け取る、ということをしているのだ。だから、何を買ったのかは注文履歴でわかるのである。買ったのだから、どこかにあるはずだ。
床に林立する本の石筍を一つ一つ崩しては積み直し、本棚の何層にもなったところを掘り返していった。どうにも見つからない。ないとなると、ますます読みたくなる。
しかたないので、新たに買い求めることにした。なんてことだ。やれやれ。
本にあふれる部屋、というのは本好きの宿命、宿痾なのだ。
これは止まらないのだ。
本の山が魅力的に見えるのか、ゴミの山に見えるのか。本の山を魅力的に思える人でないと、それは、それで辛いことである。

 

そして、本が好きな人が、そうでない人と出会ってしまったら、それはなかなか哀しいことだ。
ある本好きの女性が、ごく普通のオフ会(飲み会)に参加して、悲しい思いをして帰ってきた、と切々と語られたことがある。
「そのオフ会で趣味は、読書です。といったら、『本読んで何が楽しいの』と聞かれたんですよ。なんか、それ以上話ができなかったです」と。

本が好きな人は、どこで出会いを求めればいいのか。
それは、そう、本が好きな人がいるところにいくしかない。
鉄道ファンが海辺に行っても、同じ趣味の人に出会えることはない。
ダイビングが趣味なのに、料理教室に行っても、同じ趣味の人と出会える可能性は低い。
野球をやっている人が、仲間を集めるために茶道教室に行くだろうか? 行かない。
本が好きな人には、本好きの壁がある。その壁を共有できるのは、同じ本好きしかいないのだ。

しかし、趣味が読書といってもそれはそれで気をつけなければならないこともある。

 

「それでさ、そいつ、俺も本は好きだし、読むんだぜ、なんていうのよ。ちょっと見直そうかなと思ったの、でも、何を読んでいるのかってきいたら、ちょっと仕事の関係で「エクセルのスゴ技78」を読んだな、っていうのよ。ちょっと、えって顔したから、趣味の本も読んでいるよ「ゴルフのパーフェクトパット29」とか。っていうのよ。たしかに本だけど、それは会社の資料とか、練習方法とか、ネット情報とさして代わりがないじゃないの
そんなので、本が好きとか、読んでいる、なんていうんじゃないよ」
と、妙齢で佳麗な女性は酔鯨を片手にうつむきながら呟くのだった。

 

自己紹介欄に趣味は読書とあっても、何を読んでいるのかまではわからない。釣書にそれらしく「本を読むのが好きです」と書いてあっても、ただの「釣り」でしかないかもしれないのだ。

ではどこに行けばいいのか。

本好きが集まる場所は、
本屋さん、書店がある。確かに本が好きな人が集まる。もう、そこら中本好きばかりだ。しかし、そこで「結婚しませんか」と声をかけられるだろうか?
本屋で出会うのは、難しい。
図書館はどうだ。そこも本が好きな人が多い。しかし、図書館は私語禁止だ。声はかけられない。
古本屋は? う~ん、本屋さんと同じに声はかけづらいだろう。
では、どうすればいいのだ。
鉄道ファンは鉄道のあるところに行けば出会える。
城マニアは古城跡にいる。
ダイビングが好きなら海で出会える。
サッカーファンは、競技場に行けばいるのだ。

しかし、本好きは、本が好きな人が集まる書店や図書館や古本屋にいても、出会えない。
でも、心安らかに保たれよ。あるんです。
出会えるところが、
それは

読書会

本好きが集まる、会だ。
そこに行けば、本が好きな人がいる、しかも、話をしても、話しかけてもいいのだ。読書会は本のことを話す集まりだから。
もちろん、出会いが目的の会ではない。けれど、本好き同士が語り合えるのは、そこしかない。

しかし、また
読書会にもいろいろある。
特定の本を読んで、皆で語り合うタイプ
特定の作者のファンの集まり
本を読んで、実践してみて、どのように役立てたかを語り合う会もある
そして、
好きな本を紹介し合うスタイルの読書会

お薦めは、好きな本を紹介し合うスタイルの読書会だ。

なぜなのか
紹介する本で、その人がどんな本を読んでいるのかがわかる。
ミステリ好きなのか、純文学に偏しているのか、海外の小説が好きなのか、などなど。
他の本を紹介されて、どのような反応をするのかで、その人の興味の範囲もわかるというものだ。
本の趣味が合えば、話も弾む。
相手の読む本に興味が持てれば、読書も広がる。新しい世界も開ける。

しかし、確かに出会えるが、結婚に至るのか、という疑問もあろう。
驚かないでください。本当に結婚した人たちがいるのだ。。
わたしがやっている読書会、小さな会だけど、それでも10数組は結婚したのでる。

読書会は、本好きの出会いの場なのだ。

そんな読書会は、どこにあるのか、と意気込んで聞きたくなる方もいるでしょう。
注意深く目を配ればある。目の前に、そうあなたの読んでいる天狼院書店でもやっているのです、読書会を。

なお、読書会は婚活パーティではなく、あくまでも読書会ですから、お忘れなきよう。

「でさあ、最近何か面白い本ある?」
妙齢で華麗な女性は、琥珀の夢お湯割りをオーダーして、わたしに聞いてくるのであった。ほほう、焼酎に変えて、九州進出ですか、と思いつつわたしは最近読んでいる本のことを話しはじめた。
「『フランス組曲』という本が面白いな。作者はアウシュビッツの収容所の中でこの本を書いていたんだ。それが、70年たって……」

彼女は心持ち上気した顔を向けてこういうのだった。
「面白そうねえ、読もうっと、ありがとうね」
と。
そして、わたしも彼女にいうのだ。
「本好きに出会うなら、読書会に行ったらどうだ」
彼女は口角をスッキリとあげて、小首をかしげた。長い髪が緩やかに落ちる。
「それは、どこにあるの?」

 

それは、ここにあるよ。

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2016-02-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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