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メディアグランプリ

過去最低の月収が私にもたらしたもの


 

記事:鈴木彩子さま(ライティング・ゼミ)

 

「うわ、マジか……」

 

その月の給与明細を見たときの第一声がこれでした。

残業代ナシだとこんなに低いのか、私の基本給は。

 

今の仕事を始めてから約3年。1日2時間程度の残業は当たり前にやっていました。

仕事自体楽しいので残業もまったく苦にならず、気になることと言えば、「今日は疲れたから食べて帰ろう」と、自分を甘やかし続けて外食が多くなっていたことくらいでした。行きつけのお店に行って、お店の人や飲み屋さん仲間とおしゃべりしながらご飯を食べる。それはそれで、自分の中では大切な時間でした。

 

あるとき、まるまる1ヵ月ぱったりと暇になったときがありました。それまで残業が当たり前の状態だった私は、「帰れる時に帰っておこう」と定時きっかりにさっさと帰り、空いた時間を好きなように使っていました。映画を観に行ったり、行きつけの飲み屋さんでおしゃべりしたり、家でお菓子を食べながらダラダラしたり。時間が空いたら空いたで、せっかくだから遊ぼう、今のうちにのんびりしておこうと、やっぱり自炊はあんまりしませんでした。

 

そこへ来てのあの給与明細です。心臓がギュッと縮こまったような感じがして、背筋がスーッと寒くなっていきました。ヤバい。ヤバいぞ。いろいろ切り詰めないとマジでヤバい……。真っ先に脳裏に浮かんだのは、「自炊」の2文字でした。

 

考えてみると、私の外食はなにも夜に限ったことではありませんでした。

朝寝坊したときは途中でコンビニに寄ってパンを買い、デスクで食べていました。

昼はきちんと気分転換するために、なるべく外出するようにしていました。職場のあるエリアはあんまりお財布に優しくなくて、ちょっと落ち着いたところでのんびりしようとすると、1000円前後は平気で飛んでいきました。そして夜の外食です。これが週5日とはいわないまでも、週3~4日続いたと考えると……今さらながら、どこにそんなお金があったのか不思議でなりません。

 

ここまで考えたところで、私の生き残りをかけた作戦の最優先事項が「自炊」に決定しました。それも夜だけではありません。朝・昼・晩、すべてにおいて自炊作戦を決行しなければならないのです。これは非常に困難なことでした。なぜか?

「人は慣れないことをエンジン全開で始めると長続きしない。少なくとも、私は」という、個人的な人生哲学があったからです。今まで下手すれば1日3食全てを外食でまかなっていた私が、突然3食とも自分で作るなんて! もって3日……いまの危機的状況を鑑みても、1週間がせいぜい。それでは次の給料日まで生き延びるなんてとてもとても! そこで私は一計を案じました。そう、無理しなければいいんだ、と。

 

この自炊作戦において、最大の難関はランチです。お弁当を作って持っていかなければならないのです。お弁当に持って行っておいしいものと、作ったその場で食べておいしいものでは、同じ料理でも種類が違います。それまでも自炊はたまにやっていましたが、パスタや炒め物など、できたてアツアツを食べたほうがいい料理ばかり。お弁当に持って行っておいしい料理など、ほとんど知らないのです! ちなみに、なけなしのレパートリーの1つは、年始に実家に帰った時に母が教えてくれたアボカドのサラダです。たまに父と居酒屋デートしているようなのですが、そこのお通しがおいしかったので再現したのだとか。食べやすい大きさに切ったアボカドに、ナッツと塩こんぶを混ぜるだけ。実際に作って持って行ってみました。おいしかったですが、ちょっとお酒がほしくなるので、残念ながらお昼には不向きかもしれません。さすがは居酒屋メニューの再現です。

 

さぁ、困ったぞ……と思いながらキッチンで途方に暮れていた私の視界に、白い円筒形のものが飛び込んできました。あ、あれは、以前衝動買いしたスープジャー! あのときは買うだけ買ったものの「スープだけじゃお腹いっぱいにならないなぁ。しかもこのスープジャー、結構お手入れ面倒じゃん」ということでほとんど使うことなく放置していたのでした。しかし、今の私はあのときの私とは違います。特に切迫感と悲壮感はあのときの比ではありません。ここで私の脳裏にひとつのアイデアが浮かびました。なるべく具がたくさん入ったスープを前日の夜に作っておいて、翌朝スープジャーに入れて持っていく。でもそれだけでは満腹にならないので、慣れるまではコンビニでおにぎりやパンを追加で調達。そして、慣れてきたらスープ以外の品数もちょっとずつ増やしていって、最終的には「100%持参」に移行する。これだ!

 

かくして私は、具だくさんのスープ(またの名を、つゆだくの煮物)の創作に取りかかりました。魚の切り身・大根・人参をたっぷり入れたあら汁風の味噌汁、きのこをどっさり入れたオニオンスープ、普通にカレー。様々な試行錯誤を繰り返す中で、特にコンソメのポテンシャルの高さに驚かされました。だって、1回で3種類のスープができてしまったんですから! 1種類目は、そのままコンソメのスープ。大きい鍋で作ります。こいつを取り分けて、カレー粉を入れてカレー風味のスープ。このときは少し入れ過ぎてなかなかスパイシーな仕上がりになってしまいましたが、普通のカレーとはちょっと違った味わいが楽しめました。そして3種類目は、コンソメのスープに豆乳を入れてちょっとクリーミーな感じに。そのままお弁当で持っていってもおいしかったですが、家で晩ごはんに試した豆乳スープパスタがむちゃくちゃおいしかった! コンソメ、偉大です。

 

気がつくと、「次の給料日まで生き延びるための自炊作戦」という悲壮感はほとんどなくなっていました。最近ではロールパンを使った和風ツナサンドを添えられる日が、ぽつりぽつりと増えてきました。ほふく前進ではありますが、着実に「100%持参」への道を突き進んでいるようです。

 

うれしい副作用もありました。野菜の保存の仕方が上手になったこと。キッチンでもそれ以外のスペースでも、動線を意識したレイアウトを考えるようになったこと。生活の中の無駄について意識するようになったこと。限られたお金を、自分はどう使いたいのかきちんと見つめ直せたこと。お金だけじゃなくて、時間や空間の使い方についても考えるきっかけになりました。

 

足りないことを嘆くな。そこに知恵を絞る楽しさがある。

足りないことを嘆くな。それは創造と行動のチャンスである。

過去最低の月収は、そんなことを私に教えてくれました。

 

その後、私は相変わらず「無理をしない」をモットーに、自炊もお弁当も続けています。そこで節約したお金は、知り合いのお店に行ったり、人と会ったりするのに使うことにしました。これも過去最低の月収が確信させてくれた、私にとっての「大切なこと」です。

 

 

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2016-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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