本当は信用なんかしちゃいないのだけれど
記事:重冨 剛さま(ライティング・ゼミ)
車を運転していて、赤信号で停車していると、時々不安になる。
バックミラーに走ってくる大きなトラックが映っていたら、ふと思うことがある。
もし、あのトラックが赤信号に気づかず、ノーブレーキで突っ込んできたら私の車は潰され、即死してしまうだろうな、と不安になる。
トラックの運転手は赤信号に気づいているのか。
ちゃんとブレーキを踏んでくれるのか。
もしかしたら、運転手はお酒を飲んで運転しているんじゃないのか。
あるいは、長時間運転で寝不足になり、スヤスヤ眠っているんじゃないだろうな。
なにか考えごとをしていて、うわの空だったらどうしよう。
たまたまラジオから、お気に入りの曲が流れてきて熱唱中で、信号なんか見ちゃいないなんてことはないだろうか。
歩道を歩くキレイな女性に気を取られ、わき見運転してたりして。
などなど考えだしたらきりがない。
そんなことを言うと、「なんて、心配性なんだ」「お前は小心者だな」という笑い声が聞こえてきそうだ。
そうなんです。私は心配性の小心者なのです。
だから、私は信用したふりをするようにしました。
だってみなさん、冷静によく考えてみて下さい。
トラックの運転手は名前も顔も知らない人ですよ。たまたま赤信号で止まった道路を後から走ってきただけで、信用なんかできるはずはない。
それでも、みんな信用したふりをするでしょう。
考えてみたら、私たちの暮らしはすべて信用したふりで成り立っているのだから。
お金は金(きん)と交換することが出来ない、ただの紙切れなのに国を信用して使い、貯金したりしている。
レストランで食べる料理は、どんな材料を使っているのか、誰がどんな調理をしているのか分からないけど、お店の人を信用して食べている。
自分が勤めてる会社だって、資金繰りが苦しくなって毎月給料を払える保証なんてどこにもないのに、毎月ちゃんと給料は貰えて、定年まで働けると会社を信用して毎日出社して働いている。
隣の家が寝タバコで、そのまま寝てしまい大火事になり、うちが燃えちゃう可能性だってあるんだけど、ちゃんとタバコの火を消してから寝てくれることを信用して、夜はぐっすり眠っている。
実際には、国が財政破綻してコツコツと貯金していたお金が紙切れに変わってしまうことはあったし、レストランで食べる料理に不適切なものが混入することはよく起こっているし、急に会社が倒産してしまい給料がもらえなかったという話は聞くし、隣の家が火事になり、自分の家が燃えちゃったというニュースはある。車の衝突事故だって珍しいことではない。
それでも私たちは信用したふりをしながら生活している。
信用したふりをしなければ、お金を使うこともできないし、レストランで食事をすることもできないし、会社に働きに行くこともできず、夜ぐっすり眠ることさえできないから。
そうやって社会は回っているのだ。
信用してるふりをしながら暮らしている私たちは、信用を裏切る現実をみせられた時、どうしようもない不安と恐怖を感じてしまう。
不安や恐怖を感じないために信用したふりをする。
本当は信用なんかしちゃいないのだけれど。
だから不安や恐怖を感じた時は、信用したふりをすればいいんです。
自分に自信が持てないことってありますよね。
辞書にはこう書いてあります。
”自信”とは自分の価値や能力を信じること。
自分なんてたいした能力はないし、価値もないと思うことはあります。
そんな時は、自分を信用したふりをするようにしています。
そうすれば不安や恐怖はなくなり、なんだってできる気がする。自分に自信が持てる。
そうやって、家族や同僚、世の中の人やモノを信用したふりをすることで、人生はもっと楽しく積極的に生きられるようになるのではないだろうか。
と、心配性で小心者の私は思う。
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