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シンデレラが王子様を探してはならない理由


シンデレラ

記事:大石 香さま(ライティング・ゼミ)

婚活ブームの今、世間では婚活に励む男女が増えている。

婚活をテーマにしたドラマもよく見るし、
本屋に行けばステキ女子やキラキラ女子に向けた恋愛指南本が棚をピンク色に染めている。

シンデレラのように清く、美しい女性になれば、
いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれると信じて
頑張っている女性がたくさんいるからなのだろう。

***

周りの友達もどんどん結婚し始め、焦り始めていたある日、
奇跡的な出来事をきっかけに、白馬の王子様が現れる。

2人はすぐに惹かれ合い、時間を忘れて燃え上がるような恋に夢中になる。

愛し、愛され、幸せな毎日。
仕事にも精が出る。

そんなある日、素敵なレストランで食事を楽しんでいると
突然王子様がひざまづき、小さな箱を差し出す。

その箱の中には、
それはそれはきれいに輝く婚約指輪。

「僕と結婚してください。僕が君を幸せにします!」
「はい、よろこんで」

2人は王子様の立派なお城で
幸せな結婚生活を始める。

王子様は
家事を手伝ってくれて、子育てに積極的で、
特別な日にはサプライズプレゼントを用意してくれる。

仕事もできてどんどん出世して、
それでも休みの日にはたくさん家族サービスをしてくれて。

「あなたの王子様は素敵ね。
私もそんな幸せな暮らしがしてみたいわ」
と誰もがうらやむ幸せな毎日を送る。

***

婚活をがんばる女性は
こんな夢を描きながらお相手を探しているのだろう。

女性なら一度はシンデレラに憧れ、
白馬に乗った王子様との夢を見るものだ。

もちろん、私も小さい頃はお姫様やガラスの靴やかぼちゃの馬車に憧れた。

私の地元では馬にちなんだお祭りがあり、
パレードに白い馬が登場すると、王子様が来た!
と期待に胸を膨らませながら馬上を見上げたものだ。
(馬はポニーだったし、乗っていたのはおじさんだったのだけれど)

 

しかし、
男性はどうなのだろう?

 

私の記憶の中では
「ぼく、王子様になってお姫様を幸せにしてあげたい!」
なんて言っていた男の子はいない。

どちらかというと、
お殿様に憧れていた男の子が大多数だったように思う。

私のイメージでしかないけれど
男性にとっては毎日が戦である。

 

***

 

上司や同僚、取引先などとの戦に勝ち、
どんどん出世して成功という名の天下取りを目指す。

「ワシは天下を取る男じゃ。ついて来い!」
そういうふうに女性を口説こうとするとちょっと古くさいかも……。

世間の風潮もあることだしここはひとつ。

「僕と一緒に幸せになろう!」
時には王子様の着ぐるみを着てこんな言葉を口にする。

そうやって手に入れた妻。

妻はお殿様の帰りを健気に待ち、おいしいごちそうを用意する。
お酌しながらお殿様の戦話に耳を傾け、
「それはお疲れ様でございました」と労う。

3歩後からついてきて、ここぞという時には大きな力になる。
疲れた時には癒やしてくれ、気が落ちた時は上げてくれる。

お殿様はそんな妻に支えられながら、今日も出陣する。

 

***

 

日本が一夫多妻制だったら、
お殿様はきっと側室探しにも忙しくなるだろう。

王子様との出会いを夢見る女性と
お殿様として天下取りを夢見る男性。

残念なことに世の中では
シンデレラは必死になって王子様を探しているが
当の王子様は実は王子様ではなく、お殿様が嫁を探しているのだ……!

だとしたら、
よほど強運なシンデレラでなければ王子様に出会えないことになる。

自分の目の前に現れた男性が「王子様」だと勘違いして
「お殿様」と結婚したシンデレラは

「うちの旦那ったらね、
休みの日はぐーたら寝てばっかりだし何も家事を手伝ってくれないのよ。

家に帰ってきたと思ったら靴下も服も脱ぎっぱなし、話があっても『オレ、疲れてるから』とか言って全然聞いてくれないの。

もう、私は召使いかって話よね」

という愚痴をこぼすことになるのだろう。

恥ずかしながら、実家の「太めの元シンデレラ」からかかってくる電話はほとんどがこの類である。
もうそれ3回目だよ、な近況報告の後には必ずこれだ。

こうなってしまった時こそシンデレラの魅力を発揮する時である。

「あ、この人お殿様なのね」と早々にあきらめて
シンデレラになろうと頑張っていた頃に身につけた
丁寧な家事と料理、ステキ女子マインドをフル活用すれば
お殿様は関心して靴下ぐらいは洗濯機に入れてくれるかもしれない。

もしくは

お殿様よりも強くなって
シンデレラからかかあ天下にレベルアップするのが良いだろう。

場合によっては洗濯機が新しくなるかもしれない。
お殿様にとってはたまったもんじゃないだろうけれど。

反対に、うまくいっているところはどうなのだろう。

シンデレラの涙ぐましい努力もあるかもしれないが
きっとお殿様がシンデレラの欲しいものをわかっているのだと思う。

お殿様はついついほうびや地位を与えたがるけれど

シンデレラは
自分が愛されているという実感が欲しいのではないだろうか。

自分のために時間を作ってくれたり、自分の悩みを一緒に解決してくれたり、
たくさんの思い出を作りに行ったり、甘えさせてくれたり。

だからそれを全部叶えてくれる、おとぎ話の中の王子様に惹かれるのだと思う。

愛したい王子様と、愛されたいシンデレラが一緒になるからこそ幸せなのだ。

自分を支えてほしいお殿様と愛されたいシンデレラでは
お互いが寂しい想いをするかもしれない。

おまけに、
結婚して子どもが産まれて一緒にいる時間が当たり前になってくると、
大事なものをどこかに置き忘れてしまうものだ。

そうすると余計に、自分の望みしか見えなくなる。

幸せな結婚をしたいなら
お殿様から王子様の着ぐるみを剥がすことも、
意固地になって王子様を探すことも、
お殿様を王子様に変える努力も、
シンデレラひとりが我慢することもしなくていい。

自分が幸せだと感じることをちゃんと伝えて、共有していけば
どんなお殿様とでも幸せになれると私は思っている。

 

***
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2016-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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