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メディアグランプリ

ひとり飲み1年生~2時間目~


ひとり飲み
PN:39さま(ライティング・ゼミ)

 

 

「おひとり様ですか?」

 

「はい」

 

「こちらのカウンターへどうぞ」

 

 

 

会社帰りに寄ったのは、前々から気になっていたワインバル。

 

ランチ時には通りに面したガラス戸を開け放ってオープンテラスにしているような、開放的な雰囲気。

その通りに面したカウンターに座ると、行き交う街の人が見れる。

 

通りに面した、といっても大通りではなく1本中に入った少し落ち着いた通りだから、

都会の気取ったビジネスマンや、フレンチのコースを食べに行くカップル、ではなく、

目に入ってくるのは、仕事帰りのサラリーマンや子供を連れて自転車に乗ったお母さん。

仲良く買い物から帰ってくる若い夫婦や、連れ立って飲み会に繰り出していく人たち。

 

そんな、ちょっと生活に近い人たちの様子をぼんやりとながめながら、私はメニューをひらく。

 

 

 

もちろん。

 

1杯目は生ビール。

これは、譲れない。

キュッと喉を通るビールが、今日の私の疲れも押し流してくれる気がする。

 

 

でも、せっかくワインバルに来たのだから、グラスワインも気になる。

ビールの次の飲み物は決まりだ。

 

では、食べ物の注文はどうしようか。

 

野菜のピクルス 480円

……うん、悪くない。

 

シーザーサラダ 780円

……少し高い気がする。というよりも、少し量が多いかもしれない。

 

前菜5種 1280円

……お!いいなぁ。値段は高く感じるが、少しずついろんなものを食べられる盛り合わせは何かと助かる。

 

えびとブロッコリーのアヒージョ 680円

……アヒージョ好きとしては欠かせない。それに、アヒージョと一緒にバゲットを頼めば、あとでパスタとかピザとか頼まないでも済むかもしれない。一通り食べた後のパスタは、結構苦しいこともある。

 

 

よし。

 

 

「すいません、生一つと、ピクルス、前菜5種とアヒージョお願いします」

 

 

 

言い忘れてしまったが、これは一人のみ1年生の2時間目。

『注文をする』である。

 

少し前の記事で『気になるお店に行ってみる』という1時間目があった。

 

勇気をだして気になるお店に行ってみた、ところまでの話だったが、

実は大変なのはお店に入るところではない。

入ったあとが大変なのだ。

 

何を注文する?

どう過ごす?

店員さんに話しかけられたらどうしよう。

 

そんな、お店に入ってからのいくつかの“関門”のうち、

『注文をする』という第一関門を突破した時の話をしてみようと思う。

 

 

 

 

そのお店に入ったとき、常連さんと思われる人がすでにカウンターに何人かいた。

店主も常連さんと楽しそうに話していて、新参者の私が入るにはちょっと居心地が悪そうだった。

でも、お店に足を踏み入れてしまっている。戻れない。

 

えいやっと腹をくくって声をかける。

『こんばんは』

 

すると、店主も常連さんも一瞬会話を止めてこちらを見た。

 

『あ、いらっしゃい。ごめん、○○さんちょっと詰めてあげて、そこ入れる?』

 

店主が常連さんに声をかけると、常連さんは自分のグラスとおしぼりとお皿をずるずると移動させてくれた。

ぴったり一人分空いたカウンターに落ち着き、メニューをみる。

 

クラフトビールが2種類、とワインや地元の日本酒が並ぶ。

食べ物は肉じゃががあったり、土手煮があったりと和食メイン化と思えば、キッシュがあったり、ピザがあったりイタリアン要素も含まれている。

どれもおいしそうで、でもちょっと普通の居酒屋では見かけないメニューもあり、決められない。

 

そうこうしているうちに、声をかけられた。

 

『飲み物、どうしますか?』

『あ、じゃあこっちのビールで』

 

選んだのは、すっきり目と紹介されているビール。

初めましてのお店と店主さんだから、まずはライトに。

 

ビールはすぐに決まるのに、食べ物が決まらないんだよな。お腹すいているのに。

 

なんて、ポツポツ思っていたら、ビールが手渡される。

そして、あの一言を投下された。

 

『食べ物、どうしますか?』

 

やばいぞ、決まってないんだ。

でも、ここで注文しなかったら、店主はまた常連さんとの会話に盛り上がって私が注文するタイミングを失ってしまうかもしれない……

困った。

 

『困ってます』

 

 

え!

私、今、困ってますって言った!?

 

そんなこと言われたって、店主だって困るだろうに、なんて恥ずかしいことを言ってしまったのだろうか。

なんで、目についた無難なメニューの一つや二つ言えなかったのか。

 

と恥ずかしいような申し訳ないような、そんな気持ちでメニューから顔をあげたら、店主がにっこり笑って言ってくれた

 

『それなら、お任せ3点盛りつくってあげるよ。お腹は結構すいてる?』

 

『あ、はい。仕事終わってそのまま来たから結構お腹すいてます』

 

『わかった、じゃあ任せて』

 

 

そういって店主はカウンターに背を向け、トントンとかジュワっと音をさせながら何かを用意してくれている。

 

 

変なこと言ってしまったと思ったけれど、大丈夫だったのか。

なんだか、調子抜けしたような気持ちになりつつ、何が出てくるかわからないお任せ3点盛りを待った。

 

 

出された3点盛りにはポテトサラダとから揚げと野菜の浅漬け。

 

から揚げのガッツリと、浅漬けのサッパリが同じプレートに乗ってでてくるなんて。

恐るべしお任せ3点盛り。

 

 

 

そして、ポテトサラダとビールを交互に味わいながら、ぼんやりと考えた。

 

お店にご飯やお酒を楽しみに行くとき、きちんと下調べをしてそのお店の看板メニューとか欠かせないオススメメニューを頼むのも楽しみのひとつだ。

 

たいめいけんに行ったら、たんぽぽオムライスを食べたいし、

万世に行ったら、カツサンドが食べたい。

千疋屋にいったらフルーツパフェが食べたい。

 

でも、食べ物も飲み物も何を注文したらいいかわからなかったときは、聞いてしまえばいいのかもしれない。

今日のワインはどんなのですか、とか

そんなにお腹はすいてないけど何かちょうどいいおつまみないですか、とか

メニューに知らないものがあれば、これはなんですか、とか

 

お店の人はだいたい教えてくれるし、わからなければわかる人に聞いてくれるだろう。

 

今日のワインは少し重ための赤とすっきりめの白ですよ、とか

ミックスナッツをガーリックで炒めたの食べてみる? とか。

 

そして、そこから生まれるコミュニケーションも結構心地いいものだと思う。

 

好きなワインの話でお店の人と他のお客さんと盛り上がれたり、

お腹の空き具合の話から、仕事が忙しい話になったり、

これなんですか? と聞いたメニューが、どこかの名物だったり。

 

 

わからないから教えてください、とか

こうしたいんだけどどうしたらいいですか、とか

 

オトナになるとなかなか聞きにくいこと、言い出しにくいことを、せっかくだから恥ずかしがらずに聞いてみたら、

知らなかったことを知れたりして、ほんの少しそのご飯とお酒の時間が楽しくなった気がする。

 

その楽しさにたどり着けたとき、私は『注文をする』という第一関門を突破できたのかもしれない。

 

 

 

 

そうこうしている間に、冒頭のワインバル注文していたピクルスと前菜が運ばれてくる。

 

ピクルスはキュウリとニンジンとパプリカ。セロリも入っている。

セロリはあまり好きじゃないが……胃袋は一つだ。私が食べるしかない。

 

前菜盛り合わせにはポテトサラダにカプレーゼ、クラッカーとレーズンバター、タコのマリネと生ハム。いい感じだ。

 

ちょっとつまみながら、ビールを飲んで、窓の外を眺めたり、他のお客さんの会話をこっそり聞いたり。

 

おっと、いつの間にかビールがなくなりかけている。

気になっていたグラスワインを頼もうか。赤がいいか、白がいいか。

まぁ、決めなくてもいいか。聞いちゃえば。

 

『グラスワインが気になるんですけど、赤ワインと白ワインどっちがいいか悩んでいて』

 

 

そうしたら、店員さんはきっとこう答えてくれるはず。

 

『赤ワインならこのお料理が合いますよ、白ワインならこちらのお料理。でも、今、注文しているお料理なら、スパークリングもいいかもしれませんね』

なんてね。

 

***
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2016-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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