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300万の借金を抱えて友人の家に居候した時に、アリから教わったこと


300万円

記事:高橋和雪さま (ライティングゼミ)

7年前、個人事業をしていたのだが豪快に失敗し、300万円の借金を背負ってしまった。
残念ながら、借りていたマンションの家賃を支払えなくなったため、マンションから出ないといけなくなってしまった。
幸か不幸か迷惑をかける家族もいなかったので、自分が何とか生きていければよかった。
幸い、男の友人が居候しにこないかと、言って受け入れてくれたため、しばらく友人の家に居候をさせてもらった。

友人の部屋は築年数が古めの木造アパートの1階。
部屋の広さは1DKなので、台所と住居スペースがあった。
住居スペースは畳張りで、昭和の香りが漂う風情のある家であった。

二人で住むには十分な広さであっただろうが、同じ部屋に男が二人寝るという、人によってはストレスのかかる状況下であとう。
でも、友人は細かいことは気にしない性質らしく、むしろ誰かいた方が楽しいと言ってくれた。
一時期、路上生活を覚悟しなければいけないと思ったため、本当にありがたく感じた。

友人の家への引越しの日、電子レンジや冷蔵庫、洗濯機は友人の家へすべて持って行った。冷蔵庫や、洗濯機は自分が持って行ったものの方がよい性能だったため、友人のものを捨てることにした。
また、電子レンジが家に来たことで料理の幅が広がると友人は喜んでいた。

友人の部屋の周りに人は住んでいないようであったが、ごみなどを清潔にしておかないと、たまにG(ゴ〇〇〇)が侵入してくる、予断の許さない家であった。

友人の物事を気にしない性格のおかげで、自分の部屋がなかったとはいえ、自分の部屋に過ごしているかのような暮らしをすることができた。

個人事業をやめ、日雇いの仕事をしつつ、派遣の仕事を探す。
そんな日々を半年以上続けていた。

日雇いの仕事は、時給が東京都の定める最低ラインであり、900円ちょっとであった。
しかし、交通費は自腹だから、どう考えても最低ラインを割ってしまう。
あまつさえ、仕事が4時間位の短い時間になると時給は東京なのに700円を切ってしまうこともあった。

極貧であった。
正直なところ、希望というものが全く見えなかった。

その時はちょうど30歳。
30歳となれば、人によっては結婚して子供も生まれている人もいるだろう。
また、ある人は仕事に邁進しつつ夜は優雅なレストランで異性と楽しく過ごしている人もいるだろう。
そんな中、自分はお金もなく友人の家に居候。
世間から取り残されたかのような孤独感に包まれた日々を過ごしていた。

ただ、経済的な状況は悪くとも、夜になると友人とのんびり会話し、酒を飲んで大いに笑って過ごすことができたことは、とても楽しかった。

孤独にさいなまれつつも、働き続けなければならなかった。
日雇いの仕事だけでは収入が足りないため、ネットカフェで接客のアルバイトも始めた。
ネットカフェは24時間営業だから、夜勤に入ると時給が1300円位になり、日雇いに比べると割が良かった。

残念ながら、派遣の仕事はなかなか見つからなかったが、少しずつではあるが収入が安定し始め、借金も減り始めていた。
お金の面で負担が軽くなってくると、少しではあるが光が差すような気がした。
友人との暮らしは楽しいが、もう一度一人暮らしをする、ということがささやかながら自分の中では大きな夢であった。

一日の半分以上を仕事に費やす忙しい日々が続いていたある日のことであった。
夜遅く家に帰ると、家の中に黒い線ができていた。

何事かと思ってよく見たら、アリが部屋の中に侵入してきていた。
どうやら、友人が食べたお菓子の塊が畳の上にこぼれており、それをアリが見つけ、自分たちの巣に持ち帰ろうとしていたようであった。

黒い線が何本かできていたため、この部屋にはほかにもお菓子があるのではないか、と部屋の中を探索していたようであった。
部屋にアリが攻め込んできていたのである。

さて、これをどうしたものか。
できる限り殺生はしたくない。

気分は進撃の巨人に出てくる大型巨人である。
しかも、人間を捕食せずに綺麗に出ていってもらわなければならない。
とても悩ましい問題がおこってしまった。

まずは、アリの目的となっていたお菓子を家の外に置いて、アリを誘導させることにした。
その後、細心の注意を払いながら部屋中を掃除した。
しばらくすると、部屋の中には何もないことが分かったようでアリは徐々に部屋から出ていった。

お菓子のある場所に人が住んでいるかどうかなんて、アリには知る由もないだろう。
場合によっては、人に駆逐されて全滅の可能性だってある、巨人が人間を捕食するように。
食べ物を集めるという自分の目的のために、場所を問わずに果敢に攻めてくる様子に、たくましさを感じていた。
自分の中にはこの果敢さが足りないのであろうか。
まだまだ攻められるのではないだろうか。
そう思いながら、仕事について何かできることはないのかと思いながら眠りについた。

その日以降、仕事については以前よりも活動量を増やした。
そのせいか、しばらくすると状況はさらに良くなっていった。
期間限定だが、やっと派遣の仕事が決まったため、日雇いの仕事を完全に辞めることができた。派遣の仕事はアルバイトよりさらに割が良かったが、接客のアルバイトは楽しかったこともあって、並行して続けていた。

派遣の期間が終わるころには、次の仕事もすぐに決まり、その職場で契約社員として働くことになった。
最終的にはその会社で正社員になった。

安定して働けるようになり、収入も大幅に増えた。
友人の家に居候をしてから1年8ヶ月後には借金も完全に返すことができた。
そして、念願の一人暮らしを再開することもできた。

2階の部屋に引っ越したため、もうGやアリに部屋の中を探索される心配はないので安心して過ごすことができた。
でも、アリを見ることができないのはちょっと寂しいとも思っていた。

果敢に攻めてたくましく生きること。
友人の家の中でアリに教わった。
もう住む家をなくす事態は避けたいが、これからどんなに厳しい状況になってしまっても、果敢に攻めてたくましく生きようと今でも思っている。

そうすれば、どんな状況でも良くなるのだ。

 

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