メディアグランプリ

【恋のレシピ】準備するもの:カルピスとりんご酢とカンパリ


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記事:弥恵さま(ライティング・ゼミ)

レコードの流れる店内。オーナーの拘りで、とてつもなく高価なスピーカーが置かれている。CDの音とは全く違うレコードの音は、耳で聞くというよりも、全身の皮膚から入り込んでくるように、私の体を包む。その音に任せて、カウンターの椅子に座る私の体も、ふんわりと椅子に沈み込んでいく。

この夏一番のプロジェクトを終えた私は、なぜか一人になりたくなかった。プロジェクトは成功し、お偉いさん達との打ち上げも楽しく終えたのに。いざ一人になると、急に寂しさを感じてしまった。疲れ果てているし、シャワーを浴びてもう布団に入りたかったのに、博多駅に着いたところで、酔っぱらった人々の波に飲まれた。そうか、金曜の夜だ。なんだか、私がここで一人で居ることに耐えられなくなったのだ。私は行きつけのバーに一人で向かった。

「新作のカクテル飲んでみて欲しいんです!」
「えー、何々? 夏っぽいやつ?」
「そう! 夏バテ防止とかも考えたやつ!」
「名前は?」
「私の初恋……」
「何それ、ベタだなー。甘いカクテル?」
「甘い、酸っぱい、ほろ苦い……なんか、全部が主張してくるんですよー」
「あは! それ、こじらしてるヤツじゃん!」

同世代の女性店長。お互い独身だし、話が合う。ケタケタと二人で笑い合いながら出てきたカクテル。綺麗なオレンジ色。カンパリの色。夏らしい。口に運ぶ前に、鼻を付く酢の匂い。

一口飲んでみる。

「にが! にっがー! 最後カンパリにが! 何これ、何入れたの?!」
「カルピスと、リンゴ酢とカンパリ!」
「どわ! こいつら全部来るわ! 主張してくるね!」
と言いながら、不思議な味になんだが、次の一口が飲みたくなる。そしてまた、その複雑な味に、悶絶する私。いや、美味しいのだ。カクテル自体は美味しいのだ。しかし、そのなんとも表現し辛いのだが、言ってしまえば「甘い、酸っぱい、ほろ苦い」の3拍子に、捨てきれない愛着と、逃げ切れない執着を思い出すのだ。拒絶しているはずなのに、なぜか次の一口が飲みたくなる私。

そういえば、恋ってなんで甘いところから始まるんだろう。まぁ、そうか。甘くないと、そもそもときめいたりしないか。
ザ・ピーナッツだって歌ってたじゃないか。ため息の出るようなあなたのくちづけに、甘い恋を夢見る乙女心を。そして、熱い砂の上で裸で恋をするんだ。人魚のように。

「んでさ。だいたいそういう恋ってさ、最後苦いよね」
「そうそう、なんかさ、一瞬で甘い、すっぱい、苦いが通り過ぎるよね!」
全くザ・ピーナッツの世代じゃないのに、名曲はこうして私たちにも共感を与える。いつの時代も恋なんてそんなものなんだ。

【恋のレシピ】
準備するもの:カルピス、りんご酢、カンパリ
① まず、だいたい男というものはカルピスの様に甘い言葉で誘ってきますの。分量? それはあなたのお好みの甘さに整えてくださいまし。そうしますと、殿方は最近流行りの「今声をかけないと、俺一生後悔すると思って……」と声をかけていらっしゃいますわ。もちろん口下手の日本人なので、こういう言葉を口にする殿方は、大体疑ったほうがいいのですよ。しかし、なぜでしょう。女というのは、分かっていながらこういった甘さには弱いのです。だって、普段言われ慣れてないのですから。突然このようにカルピスを投入されると心地よいわけです。
② さて、しばらく甘さに浸ったところで、リンゴ酢を加えましょう。これは、恋にアクセントを加えますのよ。例えば、甘い恋を夢見ていたあの頃なのに、少しずつ会えなくなったりします。毎日会えていたのが、週末しか会えなくなり、それでも男性に仕事が忙しいと言われれば、素直に「お仕事頑張って」と応援するのです。あっ、分量? もちろんこれも、お好みでお入れくださいまし。だって、ハードルが高い方が恋が燃え上がるタイプもいらっしゃるでしょう? わたくしは、ハードルが高すぎると萎えるタイプなので、「少々」レベルが好みですわ。
③ さて、甘さも酸っぱさも経験したところで、最後にカンパリを投入します。皆さんご存知? カンパリってレシピは非公開なんですのよ。カンパリを作れるのは、世界にたった3名しかいらっしゃらないらしいの。そこで、この3名。飛行機に乗るということになれば、皆さん別々の便に乗られますの。もしもの事が起きた時、3名全員が居なくなればカンパリはこの世からなくなってしまう訳です。それぐらい、貴重なカンパリをここで投入しますの。そう、想像できますでしょ、何が起こるか? あっ、分量ですか? これももちろん、お好みで投入してくださいまし。だって、そうでしょう? 良薬口に苦しとは言いますけれども、苦すぎるとあれでしょう? オブラートに包まないと口にできないでしょう? 皆に話したいぐらいのネタにしたければ、「少々」レベルがよろしいでしょう。しかし、わたくしは、いつもここで分量を間違いますの。それにしても、このカンパリ。やはり素晴らしいので、後を引きますわ。次の一口が飲みたくなるのは、このカンパリのおかげですのよ。

まったく……。
私が、どうしようもなくダメ女に思えてくる……。カクテルを記事のネタにしようと思ったところで、こんなレシピが頭に浮かぶなんて……。しかも、マダム口調なのが、自分でも良く分からない。

三十路越えの女二人で盛り上がっていると、他のスタッフも気になって寄ってくる。私は、そのスタッフにも、そのカルピスの甘ったるさで始まり、リンゴ酢がアクセントを効かせて、カンパリが爽やかに苦みを残して通りすぎるカクテルを飲ませた。

「おぉ! なんだこれは!」と言いながら、また次の一口を飲む。
「あはは! ダメだこれ。癖になるやつ。なんだ皆やっぱそんなもんじゃん」
そう言って、女3人でお互いの過去の恋愛を思い出す。なんだ、皆そんな恋を経験しているじゃないか。女慣れした男の甘い誘惑につかまり、恋の喜びを感じて、そして最後は変な愛着を男に感じながら、そして女のプライドをかなぐり捨てて執着する。女としての喜びなんて、結局のところ男に愛されることなのかもしれない。愛して欲しいの一心で、もう愛されないと分かっていながら執着する。

「でさ、この前デートした男なんだけど……」
「つーか、それダメなやつじゃん! 絶対周りに反対されるけど、はまるパターンじゃん!」

こうして、三十路を超えた女たちは、また恋に落ちようとする。

【注釈】
恋のレシピとは言いましたけれども、「危ない恋」ですの。なので、分量はお任せしておりますの。だってわたくし、皆さまの人生に責任は持てませんから。でも、わたくしから言わせますと、それも一つの経験ですわ。ひと夏、危ない殿方に引っかかるのも風流ってもんですわ。

あぁ、こうしてまた私の週末が始まろうとしている……。
くそっ、マダムめ。
「おほほほっ」って幻聴が聞こえてきたじゃないか……。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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