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墓地という名のマイホームを手に入れて


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記事:小野勝秋(ライティング・ゼミ)

「もう寝ちゃったの!」

僕は思わず時計を二度見した。午後7時30分、乳幼児じゃあるまいし、大人がこんな時間に寝てしまうとは。

先日、法事で帰省したときのこと。車で約3時間かけて到着した僕の耳に、信じられないお知らせが届いた。
寝てしまったのは、僕の父で、ここ最近は規則正しく早寝早起きしているらしい。朝は3時に起きるらしいのだが、3時が朝という感覚は、宵っぱりの僕にとっては全く理解不能である。

父はいま82歳だ。60歳で定年を迎えた後は、5年ほど嘱託社員としてそのまま会社に通い、完全に引退してからは、ほそぼそと年金暮らしをしている。

母の両親の介護の関係もあり、母の実家で生活することが多かったのだが、よほど居心地が良かったらしく、母の両親が亡くなったいまもそこに住み着いている。
母の弟、つまり僕の叔父が家を継いでいるのだが、お互いに一緒に暮らすことに、何のストレスも感じないらしい。むしろ当たり前のように全く違和感がなく、家族として生活しているのだ。

父は終戦のときに11歳だったので、物がなくて贅沢とは無縁な少年期を過ごしている。
その影響かどうかは不明だが、生涯マイホームは持つことはなく、40年以上ずっと市営団地で暮らしていた。マイカーを所有したことも一度もない。そもそも自動車免許を持っていない。

だから僕には、家族でドライブに行った思い出がない。
いつも父の運転する50CCのスーパーカブの荷台に乗って、近所のパチンコ店に連れて行ってもらった記憶しかない。

当時もいまと変わらず、50CCのバイクに二人乗りすることは法律違反だった。警察官に止められて注意されることも何度かあった。
しかし父は「小学生は載せてもいいんだ」という根拠のない理屈で押し通した。まるで「俺が法律だ!」とルイ14世ばりの自論を展開していた。

たしか50CCの場合、ヘルメットも義務ではなかったので、当然のごとく二人ともノーヘルで乗っていた。いま考えるととても危険な行為をしていたのだなあと、恐ろしくなる。けど父は「別に転ばなければヘルメットがなくても問題ない」というような考え方をする人だったので、安全よりもヘアスタイルが乱れることの方が大切だったのだろう。

小学生だった僕は、父のスーパーカブにタンデムで出かけることがとても好きだった。特に休みの日にパチンコに連れて行ってもらうことが、大好きだった。
もちろん、父の打つパチンコを見ているのが好きなのではなく、自分で打つことが楽しみだったのだ。

当時から18歳未満の遊戯は禁止されていたので、厳密にいえばこれもまた法律違反であるが、その頃の店員さんたちは何も言わず、むしろ僕に玉をくれていたりした。いろんなことに寛容な時代だった。

今と違ってそれほどギャンブル性が高くなかったパチンコは、庶民の楽しみのひとつだった。父はわずかな小遣いを少しでも増やすことを目的に、僕は自分のお菓子と父のタバコを取ることを目的に二人で玉を弾いていた。

だいたい結果は決まっていて、僕は最初出るのだが最後はゼロになるパターン、父は堅実に小遣いを増やし、余った玉で僕のお菓子を取ってくれるパターンだった。

父の楽しみといえば、休日にパチンコに行くことと、毎晩家で飲むウィスキーの水割りくらいだった。そもそもお金に余裕などなかったのだが、父はほんとうに物欲のない人だった。何か欲しいものがあると聞いたことは全くないし、何か無駄だと思えるようなものを買ったようなことも記憶にない。

その物欲のない父が、一年ほど前に信じられないような大きな買い物をしたのだ。僕の知っている限りでは、父の生涯で、自分のために使ったお金で最高金額だったと思う。

その史上最高額の買い物をした話を、僕は母からの電話で知った。

「おとうさんおはかかっただよ……」

どうも父は自分の生まれた町に墓地を買って、墓石も注文したらしいのだ。最初に聞いたときは全く信じられなかった。その日をただ楽しく生きることだけを考えてたような父が、そんな先のことを考えて、しかも多額のお金を払ってまで購入するなんて。

「はかいしにかくこんをかんがえてほしいだと……」

最近流行っている墓石に好きな言葉を書くのを、僕に考えて欲しいと言っているらしいのだ。
僕はだた父の行動に驚いているばかりで、そのことはすっかり忘れてしまっていた。

翌日の法事が終わってから、家族で父の購入した墓を見に行くことになった。何だか父はとても嬉しそうに見えた。

墓地に着くと父は、水桶4つに水を満タンに入れて、みんなに一つずつ持たせた。そして先頭に立って自分の墓石まで歩いて行き、いきなり墓石に桶の水を勢いよくぶっかけた。そして自分の素手で、墓石を撫でるように洗っていた。

その後ろ姿を見たときに、僕はあることに気が付いた。
「きっと父は、墓地を買ったのではなく、念願のマイホームを手にいれたんだ。いままで口にしたことはなかったけど、やはり自分の家が欲しかったんだな」

このマイホームに入るのは、まだまだ先のことであって欲しいと、僕はぼんやりとそんなことを考えていた。

曇り空の隙間から覗いた秋の陽射しに照らされて、綺麗に輝いていた墓石には
『自我没却』
の字がくっきりと刻まれていた。

 

***
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2016-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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