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メディアグランプリ

ふんどしと宮沢りえの乳首にeroticismを思う。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:上門佑香(ライティング・ゼミ)

「俺、今すごく勉強欲が高まってるんだよね。文化的なデートがしたい」
「文化的なデートって何!」
彼が生意気なことを言うから、いつものカラオケ経由ジョイフルデートから少しお利口さんになって、文化的なデートとやらをすることになった。
ちょうど、福岡アジア美術館で篠山紀信「写真力」の写真展があったから、私達はチケットを買うことにしたのである。一人1100円だ。カラオケに行く値段とあまり変わらない。
篠山紀信とは、説明などいらないほどの偉人なのだが、芸術に疎い私は、名前を言われただけでは気づかなかった。
誰もが一度は目にしたことがある、小野ヨーコとジョンレノンがキスをしている写真でお馴染みの超有名な写真家である。
「ほら、この前一緒に行った快楽の館展を撮った人だよ」と言われ、やっと顔と作品と名前が合致した。
恐るべし紀信。22歳女子大生にとっても、身近な存在だったとは。
去年の夏、たまたま「快楽の館」という怪し気な名前に惹かれて原美術館に足を運んだばかりであった。
「快楽の館」と言うぐらいであるから、それはもう快楽の嵐だった。
美女達が、紀信に言われるがまま大胆にポーズを取り、それらがセンス良く展示されてあったのだ。
右を見て裸体。左を見て裸体。覗いて裸体であった。

そんな篠山紀信が、50余年におよぶ仕事の中から選りすぐった写真の展覧会であるから、どれだけ素晴らしい作品を観ることができるのだろうと、すごく楽しみにしていた。
どんな快楽が待っているのだろう。

黒いカーテンをくぐると、壁いっぱに写真が展示されていた。
メートル単位の巨大なものから、小窓ほどのサイズのものもある。
それは素晴らしいものだった。
写真1枚1枚が強いエネルギーを放っていて、またそれに心が動かされた観覧者たちのエネルギーもある。
ギャラリーには、そんなエネルギーが満ちていた。
おのおのが自由に、対峙する1枚に感想をぶつけている。
「今にも動き出しそう」なんてありふれた言葉だが、まさにその表現がぴったりだった。

感動しながら部屋を進んでいくうちに、セクションが変わっていく。間もなくして辿り着いたのは、BODY(裸の肉体ー美とエロスの闘い) というセクションだった。

衝撃だったことは、宮沢りえとお相撲さんの写真が同じ空間にあったことだった。
宮沢りえは、全裸で芝生に座ってこちらを見つめ、はにかんでいる。おそらく18歳の頃だろう。
胸はしっかりと膨らみ、先には桃色をした乳首がツンと上を向いている。
向かいの壁では、国立体技場で当時のお相撲さん達が全員集合している。卒業式の時に撮るような、かしこまった写真だ。おそらく、ペリーが日本に来たときもこのような迫力を持って緊急態勢をとったのだろう。怖い。
確かにお互いセミヌードだが、放つオーラがあまりにも異質すぎた。
宮沢りえの、欲情する桃色の乳首を見た後、お相撲さんのたれパンダのようなおっぱいを見る。
なんどもその2枚を行き来していると、だんだん脳が混乱してくるのだ。
これはエロなのか?
私の知っているヌードからどんどんかけ離れていく。
お相撲さんの存在で、そのセクションにあるヌードの写真から、いやらしさが抜けてしまうのだ。
これはエロでいいのか?
お相撲さん効果で、このセクションの写真をいやらしい目で見ることができなくなっていた。
炭酸の抜けてしまったコーラのように、なんだかパンチがないが、なめらかな甘さはある。
写真に写っている裸は、生命力にあふれていて、フレッシュで、美しかった。
バレエダンサーの写真をみて、筋肉はこんなに隆起できるのかと、感動した。
女性特有の優しい曲線美に惚れ惚れとした。
そして、宮沢りえの桃色の乳首を見て、「可憐だ」とはっきり形容できる色があるのかと驚いた。

コンビニの雑誌コーナーには、ヤングジャンプなどの少年雑誌が並んでいて、表紙には水着を着て上目遣いをする若い女の子が載っていたりする。汚れた作業着を着た薄らハゲのおじさん達が、缶コーヒーを買うついでによく立ち読みをしている。
小さい頃は、コンビニの雑誌コーナーを通るたびに「ゆかちゃん見ちゃだめよ」と言われ、エロとは破廉恥なもの、ダメなもの、という認識を持っていた。
また、大学1年生の頃にミニスカートを履いて出かけたとき、男性とすれ違うたびにちらっと脚に目を落とされるのも居心地が悪く、露出とは気持ち悪いもの、という感覚を持っていた。
しかし、篠山紀信の提示するエロとは、肉体としての「美しさ」なのである。
その訴えが、このBODY「裸の肉体ー美とエロスの闘い」に表現されていた。
写っている身体は、みな堂々と佇んでいた。
こんなにも「エロ」について考える休日はなかったと思う。
ふんどしと宮沢りえの乳首が、悪のエロを美のエロへと変えてくれた。
彼と私は、ふんどしと桃色の乳首に名残惜しさを感じつつこの篠山紀信「写真力」展を出た。
いつもとはちょっと違う、文化的なデートとなった。

***

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2017-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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