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仏花をもらって喜べる、そんな女性になりたい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ヒトミ(ライティング・ゼミ)

 

「Happy Valentine’s!」

そう言って彼は満面の笑みを浮かべた。

手には花束を持っている。

 

嘘……。

一瞬硬直した後、差し出された花束を受け取った。

「Thank you……」

引きつり気味の笑顔を何とか修正しようと、顔の筋肉に集中する。

 

うん。なんとか自然な笑顔になった。

どうしよう。次に何を言えばいいんだろう。

普通なら「きれいな花束だね!」とか、「私、この花好き!」とか?

でも……。

彼に顔を向けてみる。相変わらずの満面の笑顔。

 

もう一度、花束に目をやる。

口角の角度に注意していたが、不意にため息が漏れてしまった。

 

 

2004年。私はアメリカに住み、アメリカ人とお付き合いしていた。私の英語力はそれ程高くもなく、初めて海外の人と付き合ったということもあり、お互いを理解するのに時間がかかった。それにくわえ文化の差と言われるものに翻弄されていた。

ちょっとした事が違うのだ。

 

1つ1つ見れば小さいことだが、一緒に生活すると気になることが多かった。

 

体の汚れをどうして朝までほっておくのか。夜にお風呂に入ればスッキリ寝られるのに……。おかずがあるのに、なぜ白ご飯に醤油をかけてしまうのか……。

 

今思えば単なる文化の差なのだ。

 

湿度が低い国では汗をかきにくいため、体が汚れにくい。朝、目覚めるためにお風呂に入る人が多い。米文化でない人たちには、白ご飯は「味のない食べ物」である。おかずと食べるという概念がもともとない。

 

しかし当時の私はただ理解が出来なかった。

日本人として育った私には家の中で靴を脱ぐのが当たり前。魚の頭は左向き。学校の始まりは桜の季節だし、花火は夏の風物詩。など決まり決まった習慣がたくさんあった。

 

そんな日本では「習慣」とされるものは、海外では通用せず、単なる「思い込み」に早変わりした。

 

家の中でも靴を脱がないし、魚の頭の向きなど気にする人はいない。というか魚に頭がついていない。学校の始まりは夏始まりが多い。花火はよく新年に打ち上げられるが、風物詩というよりも、イベントを華やかにする1つの手段にすぎない。

 

いちいち違う習慣に違和感を覚え、より日本の習慣に固執するようになった。

日本の文化や習慣は美しいし、素晴らしいもん! だから、日本の習慣のほうが優れているはず! っと。

 

損をしていたなと思う。

 

「習慣」は先入観になり、そのせいで一緒に楽しめないことが多々あった。

 

 

今回の「花束」もその一つだった。

 

「Happy Valentine’s!」

満面の笑みの彼。

その彼が手にしていたのは「仏花」だった。

 

そう。あの仏壇や墓参りの時にお供えする花だ。

菊やカーネーションをメインにヒサカキやシキミの葉を添えたもの。

 

1本1本見れば、それは「花」なのだ。しかし、私の先入観が邪魔する。

私にとって、その「花」はお墓参りに持っていくもので、プレゼントするための「花」ではなかった。

 

どうして「仏花」……?

これを綺麗と思ったの……?

なんか縁起が悪くない……?

私、死んでないし……。

作り笑顔の裏側で疑問が渦をまいた。

「Thank you ……」と受け取ったものの、心底喜べなかった。

 

しかし彼からすれば、この「仏花」は綺麗な「花束」だったのだ。

バレンタインの日にお花屋さんに行った彼。

わざわざアジア人が多い花屋に行ったんだろう。

黄色の菊にピンクのカーネーション。すでに花束になっている。

値段もお手頃だし、小さくもなく、大きくもない。ちょうど良いサイズだ。

 

喜ぶ顔が見たいと、買ってくれたんだろう。

きっと、よい買い物をしたとウキウキとしながら帰ってきたんだろう。

サプライズが苦手な彼が、「お花」を買うという思いやりを見せてくれたのに……。

 

あの時、「仏花」をもらって喜べる女性でありたかったな。

 

文化や習慣を大切にすることはよいことだと思う。そこからいろいろな価値観や考え方が生まれるし、アイデンティティが確立されるんだろう。

でも、自分の価値観や考え方は自分のものであって、他とは違うのだ。

それをわかっていなかった。

他を受け入れていなかった。

「違い」を楽しめなかった。

だから損をしてしまった。

 

同じ日本人であっても、育った場所や環境によって文化も考え方も違う。

男性、女性でも違う。

私たちはいつも、違う価値観を持った「他人」と関わりあって生きていくのだ。

 

自分の価値観を押し付け、先入観を持って「他人」を見ると何も学べるものがない。

視野が狭くなり、否定的な意見ばかりが出てきて、本質を見ることが出来ない。

だから、思い込みや先入観を捨てて、「他人」と関わっていくほうが楽しいのだ。

 

「他人」のためでなく、「私」のために。「私」が楽しく過ごせるように。

自分の視野を広げるために。それは周りへも影響していくんじゃないかと思う。

 

だから私は思うのだ。

もっと視野を広く、先入観をなくしたい。

先入観のせいで見えなくなってしまう本物のために。

「仏花」をもらって喜べる、そんな女性に私はなりたい。
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2017-03-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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