メディアグランプリ

山本海鈴さん、何者かになっちゃヤだ!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:うらん(ライティング・ゼミ)

 
 
山本海鈴さん、出し抜けに名指しして、申し訳ありません。
山本さんの書かれたスタッフ募集の記事(「何にもなれないことが分かっているから、私は天狼院書店にいるのだ。」5/14)を読んで、いてもたってもいられなくなってしまったのです。
スタッフに応募しようというのではありません。山本さんに、私の思いをお伝えしたいと思いました。
 
このライティング・ゼミも、今月で終了します。毎週毎週締め切りのあったこのメディアグランプリへの投稿も、今回が最後のチャンスです。
最後なので、一発キメて締めくくろう。そんな魂胆から、“感動的な和菓子職人の話”という、とっておきのネタを用意していました。
でも、もう和菓子職人はどうでもいい。
山本さん、あなたに是非ともお伝えしたいことがあるのです。
 
天狼院書店は今、現在進行形で成長し続けています。いえ、そんな生半可な表現では言い表せていません。駆け上がっている感じです。しかも加速しながら。
その間に、スタッフさんたち自身も次々と頭角を現してきました。今やライターとして活躍している方がいます。本の出版が決まった方も現れました。天狼院書店に入って間もない方たちも、競うように良い記事を書き、懸命に自身の能力を発揮しています。そしてお互いに切磋琢磨している。
お客さんも然りです。外の公募で賞を取る、ライターの仕事が決まる、本の出版の話がくる……と、次々と成果をあげています。
成長の勢いは、とどまるところを知りません。風をきって駆ける乗り物にしっかりしがみついていないと、振り落とされてしまいそうです。手を離したら最後、置いてきぼりにされそうで、私はいつも必死でした。
スタッフの誰もが「天狼院書店はこんなにすごいんだ、面白いんだ、のってこないなんて損だよ、損、損」と主張しているようで、只者の私はおどおどし通しです。
 
そんな中、山本さん、あなたには「まいどありがとうございます」の精神がありました。
たとえて言うなら、多くのスタッフさんの主語がその方ご自身であるのに対し、山本さんの主語はいつも天狼院書店だったとでもいいましょうか。
 
あれは2014年の、天狼院フォト部ができて間もない頃だったと思います。私は雑司ヶ谷鬼子母神の敷地を歩いていました。すると、たまたまそこで、フォト部の方々が撮影会をしていたのです。私はその頃から天狼院書店のHPを見るようになっていましたから、すぐに分かりました。
思わず、見覚えのある顔の女性に駆け寄りました。
「もしかしたら天狼院書店の方ですよね? 最近HPを見るようになったので知っています。山中菜摘さんとか、山本海鈴さんとか、川代紗生さんとか……、知っています。あなたの顔も見たことがありますよ」
その女性こそ、山本海鈴さんご自身だとも知らずに。
そんな間抜けな問いかけに、あなたは「なに寝ぼけたこと言ってんの。私がその山本よ」などという素振りはみじんも見せず、あなたの第一声は「いつもHPを見てくださって、ありがとうございます」でした。
そして、私が去るとき、あなたの挨拶は「これからも、どうぞよろしくお願いします」です。
 
その謙虚な心根は、ずっと続いています。
私は、このライティング・ゼミに参加するために初めてFacebookを始めたという、Facebookど素人です。それなので○○ができない、という情けない状況を申し上げたことがあります。
今どき恥ずかしい。相手はイケイケの天狼院書店です。「しょうがないなぁ」と思われるのだろうな、「じゃ、いいよ」とくるかな、などと、こちらは気が引ける思いでした。
このとき、山本さんのレスポンスは意外なものでした。
「ライティング・ゼミのためにFacebookを始められたとのこと、ライティング・ゼミのためにご不便をおかけしております」から始まるものだったのです。
私は、この言葉に救われる思いがしました。客として大事にされている。そう感じることができたのです。
それまでは、天狼院書店に参加させてもらっている、関わらせてもらっている、という、気後れした気持ちでおりました。
でも、山本さんは、客を尊重してくれている。私でもここにいていいんだ。堂々としていていいんだ。そう思わせてくれました。
 
だから、山本さん、あなたのおかげでここまで続けてこられたような気がします。
 
ところで、芍薬(しゃくやく)という花をご存知でしょうか。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」のあの芍薬です。今時分がちょうど開花時なので、花屋さんの店先で見かけることがあるかもしれません。
芍薬を「シャクヤク」とカタカナで書くと、「クシャクシャ」と読み間違えてしまいそうですが、ちょうどそんな感じに、柔らかいティッシュをクシャクシャとまとめたような形状の花です。
 
芍薬は、花を愛でるだけでなく、その根も漢方薬に多く使われます。
山本さんはまだお若いので、漢方薬には縁がないかもしれません。でもまぁ菓子パンの無茶食いはほどほどにして、ちょっと聞いてください。
 
漢方薬というのは、いくつかの生薬を組み合わせて処方します。
生薬には、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、桂枝(けいし)―いわゆるシナモンです―、芍薬(しゃくやく)といったものがあるのですが、もしかしたら名前だけは聞いたことがあるかもしれません。
これらの生薬には、それぞれ効能があります。ただし、一種類だけで使うことはありません。複数の生薬を組み合わせて処方します。組み合わせることで相乗効果が生まれ、1+1が2ではなく、3にも4にも5にもなるのです。つまり、組み合わせ方によっては、ある作用が倍増したり、またある作用が減衰したりする、という寸法です。
こうして、いい塩梅に配合され、優れた効果をみせるものに対して、「葛根湯」だの、「当婦芍薬酸」だのといった名前がつけられるのです。
 
芍薬は、それ自身、血行をよくしたり、痙攣を抑えたり、筋肉の痛みを和らげたりといった働きをしますが、漢方処方全体からみても、なくてはならない薬草でもあります。
この芍薬、わが身を引いて相手を立てる、という性質も持ち合わせているんです。また同時に、他の生薬の調整役としても活躍します。
例えば、覚えなくてもいいですが、「婦宝当帰膠」という漢方薬の場合、当帰という生薬の補血作用をさらに高めるために、その補佐役として芍薬が配合されています。
でも、それだけではないんです。そこが芍薬のすごいところ。当帰には温める力がありますが、芍薬を配合することで、温まり過ぎるのを抑えてくれる効果が加わるのです。
こうして他のいくつかの漢方薬においても、芍薬は自身の力を出したり引っ込めたりしながら、他の生薬の効能が最大限に発揮されるよう、調整しています。
 
老子がこんなことを言っています。小難しいようでしたら「」部分をとばして、意味だけ読んでくださっても構いません。
「天は長く、地は久し。天地の能く長く且つ久しき所以のものは、その自ら生きざるを以ってなり。ゆえに能く長生す。ここを以って聖人はその身を退けて身先んじ、その私なきを以ってにあらずや。故に能くその私を成す。」
何を言っているかといいますと、
「天と地の寿命は永遠である。その理由は、自分自身のために生きようとしないからである。自分を中心にしないで、まず相手を立てると、かえって人から立てられ重きを置かれる。私ごとを捨てるとかえって自分が生かされることになる。」
ということです。
 
自分の身を引いて相手を立てるということが、漢方の世界にもありました。
 
山本さん、あなたは「○○になりたい」の「○○」に当てはまるものがないと言います。
その代わり、天狼院書店という場において、「なりたい自分になる機会を(お客さんに)提供できること」に魅力を感じ、「なりたいものがある人が、それに近づいて、達成すること」に喜びを覚え、「フラットに多くの分野を知ることで、新しい価値を生み出す」ことに希望を見出しています。
だからあえて、「何か“だけ”にならない」立場に徹していきたいと言う。
 
山本さん、そんなあなたは、芍薬のような人です。
 
天狼院書店という漢方のなかで、あなたは芍薬のような役割を担っています。
 
何か“だけ”にならない。また何者とも特定できない。
山本さん、それはまさに天狼院書店のアイデンティティでもあり、ビジョンでもありませんか。
山本さん、あなたは天狼院書店そのものです。
 
三浦綾子の小説『続氷点』に、こんな一節があります。
「一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである」
天狼院書店が私たちに「なりたい自分になる機会」を与えてくれることで、私たちに得るものがあります。
同時に、スタッフである山本さんにも、大きな大きな実りが待っているはずです。
 
 
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2017-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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