メディアグランプリ

挑戦状


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【6月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《平日コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・京都・全国通信対応】《平日コース》

記事:ごとうみのり(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「プロの教師なら、俺を教育してみろ! 」
 
上司ではない。
中学2年生でもない。
これは、サラリーマンの夫の台詞だ。
 
事の発端は家事の分担だった。
子どもがいないので、大人の2人暮らしだ。DINKSだ。
ウキウキの新婚生活。
それぞれ頑張れば、それなりに生活も上手く行くと思っていた。しかし、この「それぞれ」が大きな誤算だったのだ。
 
夫には一切の家事能力が備わっていなかった。
 
料理はもちろん一切だめ。洗い物も汚れが残っている。洗濯機のまわし方はもちろん、洗剤と柔軟剤をどう使うのかも知らなかった。ゴミの出し方もしらない。
ちょっと彼をフォローすると、お湯を沸かすことと電子レンジは使うことができた。
 
おかしい。
彼は一人暮らしをしたことがあると言っていた。
一体どうやって1人で暮らしていたんだ。
実態を調査するため、夫の母に事情聴取をしてみる。
すると、実態として彼は一人暮らしをしたことがないこと、が判明した。
 
仕事一片の生活で、家では寝るだけ。食事は外食かスーパーのお弁当。キッチンは一切使ったことがなかった。洗濯物はたまにくるお母さんがやる。
私はそれを一人暮らしとは認めない。
 
転職してからは実家から通えるようになってしまったため、実質家事やる時間はゼロ。男、台所に入るべからずの家で育ったから、何もやってきてない、と偉そうに語る夫に、ため息も出なかった。
 
子どもはいないが共働き。夫も私も仕事が大好きなので、つい遅くまで仕事をしていると家事に手が付かない。
子どもができたら、家事代行をうまく使おう。と私は心に決めていた。
が、これではすでに大きな子どもがいる状態だ。
 
「子どもじゃないんだから、自分のことくらい自分でできるようになってよ」
仕事柄、保護者から子育ての大変さはたくさん聞く。
とりあえず自分のことぐらいできるようになっておいてもらわないと、家事代行を使ってもフォローしきれない。
 
それに対する反論がこうだ。
 
「プロの教師なら、俺を教育してみろ! 」
 
世の中の女性の9割はこれ聞いて別れるんじゃないかと思った。
もしくはキレると思った。
 
でも私の心には火がついた。
なぜなら、私は仕事が好きで、自分の仕事にプライドをもっていたからだ。
やってやろうじゃないの。
私は夫を自分の生徒だと思うことにした。
 
次の日から夫をスーパー家事メンに成長させる私の仕事が始まった。
新しいことをたくさん始めると子どもはパニックを起こす。それは大人も同じかも知れない。
いきなり家事全部はやらせず、まず一つのことをやらせる。
洗剤と柔軟剤を入れて、ボタンを押すだけの洗濯機をまわすこと、からお願いした。
理由もきちんと説明した。私より夫の方が帰ってくる時間が遅い。夫の帰宅までに、私が洗濯したいものを入れておいて、最後に夫が自分の下着や靴下を入れてから回すのが効率的だ。
 
そして、きちんと回すことができていたら、これでもかというくらいほめる。これが最も重要であるとも言える。そしてこれは職業柄私の得意分野だ。
すごい!
さすが!
助かった〜
ありがとう
大好き
嬉しい
 
1週間後には、こんな台詞も付け足す。
「あなたには簡単過ぎたかな? 」
 
回すことができるようになったので、次のレベルは干すことだ。
干すことになると難易度が一気に上がる。ボタンを押すことより、時間がかかることだからだ。しかもシワなく干さなければいけない。
 
ここで使ったのは、失敗から学ぼう作戦だった。
あえて失敗を誘発するのだ。
この作戦を使うためには、洗濯機を回すことができている、という成功体験から、次のレベルに行きたい気持ちを高めておくことがとても大事だ。
 
機は熟した。私は作戦を実行した。
次の日がお休みの金曜日、私は自分で洗濯機を回した。
そしてこうメールした。
「あなたの靴下や下着は、明日枕カバーなどといっしょに洗濯しましょう。今日の分の洗濯機は回したので、干しておいてください」
そして私は眠りについた。
 
次の日の朝、予想通り洗濯物は、洗濯機の中に眠っていた。失敗を計算していたのでいつもより少なめの洗濯物だ。
 
夫に言った。
「大変! 洗濯物、干さなかったの? 」
予想通り、疲れていたんだよ〜の一言。
そして洗濯機を開けて、あの匂いを味わってもらった。
血液型はA型の夫。私より、ちょっと神経質な夫。
効果はテキメンだった。
 
しばらく、洗濯機のスイッチだけおして、「愛する妻は疲れたからそのまま寝てしまった、作戦」を実行した。すると、夫は帰ってくると、洗濯機の中身を確認して洗濯物を干すようになった。
 
これは乾燥機付き洗濯機に変えてしまえば、すぐに解決する問題だった。でも、この家事の大変さを理解してもらって一緒に電気屋さんに行く方が、買い物にも一生懸命になってくれる。
また、洗濯機で夫は家事の基礎を学んだ。それは単純な方法論だけでなく、家事の概念をも学んだのだ。それは、家事にはやるべき時があるということだ。
洗濯機を回し終ったら、後で、ではだめで、すぐ干す。のように、お皿洗いも、料理も、お風呂掃除も、家事にはやり時が存在する。
 
洗濯物をクリアしたので、いよいよ本格的に様々な家事にとりかかる。
次は掃除系の家事だ。
細かく分類すると、掃除系はキリがない。しかし、結果が見えやすいのが掃除系家事のいいところでもある。しかも、目指そうと思えば、とことん上を目指せるのも掃除系家事だ。
そして私はこう問いかけた。
 
「お風呂掃除をやるのと、トイレ掃除、部屋の掃除機掛け、シンクの掃除やるの、どっちがいい? 」
 
家事をやると分かるが、お風呂掃除だけ少し他の家事とは格が違う。
何せこの家事をやるには濡れてもいい格好をして、裸足にならなければならない。
ちょっと難易度が高いけど、その1個しかやらなくていい状態で提案すると、大抵、その1個をがんばろうと思う。
夫も順当に、お風呂掃除をやることを志願してくれた。
一通りのやり方だけを伝えて、あとは全て夫に任せることにした。
これからお風呂はあなたのテリトリー。一切口出ししません。任せます。の態度を取り続ける。
子どももそうだが、完全に任せられると、とても張り切る。
そしてもちろん、終ったら褒め言葉のシャワー作戦。とにかく具体的にほめる。
シャンプーボトルまできれいにしてくれてありがとう。
シャワーヘッドの部分までピカピカだね。
 
そして大事なのが、できていないところがあっても責めないことだ。
おしかったね〜
あぁ! 99点だよ!
とにかく、ここさえできていればよかったのに、という言葉で改善させる。
 
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、月日が経つにつれ、私の声かけがなくても、自主的にお風呂掃除をするようになった。
 
お風呂掃除ができるようになると、他の家事もやりだした。
私が疲れて洗い物ができていないと、洗い物もするようになった。油かすがGの餌になる、という話を聞かせたおかげか、お皿は油かすが残らないようピカピカに洗ってくれている。
ついでにシンク掃除もしてくれるようになった。
 
そして今朝、こんなことを言った。
「そろそろ料理もできるようになりたいな。その方がかっこいいよね」
 
ここまでくればしめたもの。
プロの教師は子どもが勝手に成長するようにしむけていく。
夫も勝手に成長する段階までついにきた。
 
夫は最近、友達や同じ職場の同僚に、
「妻に教育されまして」
と、楽しそうに言う。家事ができることによって自分の株も上がっているのかもしれない。
私は教員の現役は引退して、今は別の仕事をしているが、やはり元プロとして鼻高々だ。
 
しかし、ふと思ったのだ。
「プロの教師なら、俺を教育してみろ! 」
という言葉は、営業のプロである夫が、私をタダで使って自分を成長させようと言った、営業だったのではないかと。
 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【6月開講/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《5/28まで!10,000円分の特典付き先行受付!通信受講有》

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2017-06-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事