メディアグランプリ

手帳に挟むのは、しおりではなく1枚の葉書


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岡本友理(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
まだお店の引き戸は閉まっていて、焦げ茶色のカーテンが掛かった店内は薄暗かった。ほんのり暖かく灯る電球の光が木の柱に反射して光っている。
ここは京都天狼院書店。町家であるこのお店は、一歩中に入ればゆるりと風が通り抜け、外で照りつける太陽が嘘のように涼しかった。
10時のオープンに向けて、開店準備を進める手がふと止まった。
他の書類に混じって、カウンターの上に一枚の葉書が置かれている。
「天狼院書店スタッフ 岡本さんへ」
私は何かの見間違いだろうか、とまじまじとその文字を見つめた。
何度読み返しても、同じことが書いてある。私はようやく、この葉書が自分宛に届いているのだと分かった。
「いったいどなたからだろう……?」
思い当たる人がいなさすぎて、首をかしげた。私はそっと葉書を手にとった。
お店の住所が書かれた下の余白に、メッセージが添えられている。
内容を読んで、先日開催させてもらったファナティック読書会に参加して下さったお客様からだと分かった。
御礼の気持ちをお伝えしたいのは、こちらの方なのに……! 私は思わず声を上げそうになって、ぐっとこらえると、葉書の表裏を返して相手の住所を探した。しかしそこに書かれているのは名前だけだった。

先週の土曜日、私は天狼院スタッフとして初めて、ファナティック読書会を開催させてもらった。テーマは“あなたの憧れのライフスタイルを伝えてくれる本”。このテーマでOKをいただいて、社員の山中さんに教えてもらいながら、早速Facebook、天狼院ホームページ、イベントアプリのピーティックスに投稿する準備をしていった。何度も重ねた確認が済んで、いよいよ記事を投稿する! となった瞬間、マウスをクリックする手が微かに震えた。初めて自分で作ったものを発表する嬉しさと、この内容で本当に良いのだろうかという怖さが同時にこみ上げてきた。「大丈夫です! 投稿しちゃいましょう!」
山中さんの言葉に背中を押されるようにして私はクリックを押した。
投稿が完了して、サイトを確認すると、本当に記事が掲載されていた。
「お客様、来てくださるといいですね!」山中さんと顔を見合わせて、頷きあった。

いよいよイベント開催の当日。1名のお申し込みをいただいていた。初めてのお客様だった。どんな方がいらっしゃるのだろう……。そわそわする気持ちを抱えて、私はお店で待っていた。すると、店内に入って来られた男性が、
「あの、今日の読者会に参加したくてきました」とカウンターにいた私に声をかけて下さった。「ありがとうございます!! 事前にお申し込みいただいた方ですか? お待ちしておりました!」私はワンオーダーをお願いすると、お店の奥にあるこたつ席へと案内した。急いでドリンクを用意して、席に向かうと男性はキョロキョロと店内を見渡していた。「僕、このお店に初めて来させてもらったんです」Aさんと名乗った男性は、もともと読書会を探していて、インターネットで「関西 読書会」と検索したらこのイベントが見つかったと話してくれた。以前にも違う読者会に参加していて、多くの出会いがあり楽しい時間を過ごしたが、そこの読書会は年に数回しか開催されないらしく、他にもないか探していたそうだ。私はそれを聞いて、天狼院書店の魅力を少しでもお伝えできればと、お店が掲載されている雑誌や、たくさんのイベントやゼミがあることを紹介させてもらった。
気が付けばあと少しで読書会が始まるという時間になっていた。
その時、私がライティングスキルを学ぶ為のゼミ受講生として天狼院書店に通っていた際によくお話させていただいていた、Bさんがお店に来て下さった。私はもう顔を見た瞬間、「ぜひ読書会に参加していかれませんかっ」と言っていた。Bさんはびっくりしながらも、飛び入りで参加して下さることになった。
初めての読書会は、私を含めて3名でスタートした。Bさんから順番に、書籍から学んだり、実体験を通して見えてきた自分なりのスタイルについて語り合う場になった。テーマだけに、普段はあまり話さない色々なジャンルの話題が飛び交い、新しい発見が多かった。時々、大きな笑いもおきて、私は参加して下さった方の笑顔が何よりも嬉しく、ほっとした気持ちになっていた。
あっという間に時間は過ぎて、読書会はお開きとなった。
Aさんは帰り際に、「以前参加した他の読書会メンバーにも、ここのお店のこと紹介しておきますね」と言って下さった。
私は感謝の気持ちでいっぱいになって、その背中を見送った。

この葉書の差出し人は、あの時のAさんからだった。
私は言葉にならない想いを込めて、そっと葉書を自分の手帳に挟み込んだ。
いつか、またAさんに来ていただけるような、喜んでいただけるような、そんなイベントを企画できるようになりたいと思った。その時、顔を見て直接お礼が言えたなら……。

もうすぐ開店時間だ。箒とチリトリを手にして、お店の戸を開けると、朝の眩しい光がまっすぐ差し込んできた。

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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