プロフェッショナル・ゼミ

狂おしいほど愛しているあなたへ。《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松下広美(プロフェッショナル・ゼミ)

本が好き。

小さい頃から、外で遊ぶよりも、絵本を読んでいる方が好きだった。ひとりで絵本を読みたくて、ひらがなを教えてもらう前に覚えてしまうくらい夢中になった。
小学生のときは図書室や図書館で本を借りて読んだ。図書館へ行くたびに、たくさん並んでいる本にワクワクした。
クリスマスプレゼントも弟たちはゲームソフトだったりしたけど、私は本だったり図書券だったりした。おもちゃは欲しいと言ってもなかなか買ってはもらえなかったけれど、本は欲しいと言えば買ってもらえた。
文字ばかりが並ぶ本ばかりではなく漫画を読むことも多くて、大学生でバイトを始めると、漫画本を大人買いして楽しんでいた。
本屋さんへ行くと、あれもこれも欲しくなって、気づいたら持てないくらいの本を手にしていることもよくある。

本は、ここではないどこかへ連れていってくれた。
行ったことない場所は、本の中から溢れる言葉や絵から想像した。
22世紀の未来はどうなっているんだろう。便利な道具がいっぱいあって、今の悩みなんて吹っ飛ばしてくれるような世界になるんだろうか。
イギリスの田舎って、どんな場所なんだろう。おじいちゃんの家の田舎とは全然違うような気がする。素敵な男の子とかいたりするんだろうか。
本の中で恋愛もたくさんした。純粋な想いを抱く女子高生に自分の想いを重ねてみたり、好きな女の子に声を掛けられない中学男子の一直線な想いに感動もした。時には背伸びして、大人になったらあんな恋愛がしてみたい、だとか、いや、こんな恋愛は良くないなと思ってみたり。
いろいろな世界を見せてくれて、どんな場所もきっと素敵なんだろうなと想像し、いつか行ってみたいし体験したいと思わせてくれた。
大人になってから読んだビジネス書は、未来の設計図を作る手助けをしてくれたり、人間関係で悩んだときのバイブルになってくれたりした。尊敬する人に「あの本がいいよ」と勧められると、その人みたいになりたいと夢中になって読んだこともあった。

今年になってからは、行きつけの本屋もできて、本のことを話す機会も増えた。

私にとって、本はなくてもならないもの。
大好きで手放せないもの。

でも、「本が好き」ということが急に恥ずかしくなった。
好きな本に、そう思わされた。

とある本を読んでいた。
まえがき、を読みながら、そうそう私も! などと気軽な気持ちでいた。

その本は、ひたすら本を紹介している。
いや、違う。
紹介、なんて言葉では、ない。
本の中の著者の言葉を使わせてもらうのなら、本との「戦い」をみせられているようだった。

この本を紹介します。といったものは、私も多く見てきた。
次に読む本に迷うと、あらすじを教えてくれている紹介文は役に立つし、今まで読んだことのない本に出合うこともある。
でも、そんな今まで読んできた紹介文はとてもつまらないものに思えてしまう。

ここに書かれているのは、著者と本との戦いの歴史だ。
正面から本に立ち向かって、どんなふうに心を揺さぶられて動かされたか。
ただ、本のことを語っているだけなのに、とても面白い。
どんどん読み進められるし、著者が戦ってきた本を手にしたくなる。

あー面白い。
次はどんなことが書いてあるんだろう。
そう思いページをめくり、私の目は静かに止まった。

「致死量の憧れを手にしながら」

え? どういうこと?

本を読んでいて、そんな思いをしたことがあるだろうか。
「面白い」「泣いた」「笑った」というような感想を抱くことはある。「主人公に憧れます」といったことは思う。
でも「致死量の憧れ」って。
致死量の憧れを手にした先には、何があるんだろう。
そんな思いをするような本とは、なんなんだろう。
今まで私は、そういった本になぜ出合わなかったんだろう。
そんな出合いがない私に、「本が好き」なんていう資格があるんだろうか。

「どんな本が好きですか?」

咄嗟に答えられなかった。
著者の方とお会いすることができ、私に本を選んでくれるという。
選ぶ参考に、と好きな本を聞かれた。
本屋に行って、よく本は買っている。その本を読んでもいる。家には数百冊の本もある。
なのに、いざ何が面白かったか、好きなのかと聞かれると、思い浮かばなかった。
読んでいて笑いもするし、感動して涙も流すし、あー面白かった、と本を閉じる。しかし、タイトルも内容も覚えていなくて、思い出せないのだ。

私は、ほんとうに本が好きなんだろうか。
「本が好き」なんかじゃなくて「本が好きな私が好き」なんじゃないか。

そう思うと、急に恥ずかしくなった。
どんな奴が好きって言ってるんだ? 私たちのこと、何にもわかってないくせに。本を持っているだけで満足してるんじゃないの? ま、それならそれで一緒にいてやってもいいけど。

本を選んでくれている横で、本棚を眺めていると、本たちがそんなことを言ってるような気がした。

違うよ、違うんだ。そうじゃないんだ。
好きなんだよ。好きだと思っているんだよ。

いくら「違う」と否定をしても、もう聞いてもらえない気がした。

恥ずかしい。ホント恥ずかしい。
なにをもって、本が好きだって言ってきたんだろう。なにが好き、どこが好き、すぐに答えられなくて、情けなかった。
精神的に袋叩きにあい、相当なダメージを受けて帰り道を歩いていた。
でも「恥ずかしい」とは違う感情があることにも気づいた。

「嫉妬」だ。

私だって好きな気持ちには変わりないのに、なんでこんなに違うんだ!
本と相思相愛な著者を目の当たりにして「なんで私を選んでくれないの!」という気持ちを持ってしまった。
選んでくれない原因はわかっているはずなのに、私の努力が足りないのもわかっているのに、そんな自分のことは棚に上げて、嫉妬していた。
もっとガツガツ本を読んで、いろいろ話せるようにもならなくちゃ。
好きになってもらう努力をしなくちゃと、気合いを入れた。

嫉妬の感情を抱いても、やはりその本は面白い。
面白くて読み進めるうちに、ふと、「あとがきを読んでみよう」と思った。
まだ全部を読んでいないけれど、あとがきに飛んだ。

私は気づいたら、泣いていた。

本を紹介する本で感動して、泣いてしまうなんて。
しかも、あとがき。
ありえない。私、オカシイ人だ。
ありえないけど、今、私は泣いている。

著者の、本に対する一途な愛を感じさせる文章が、そこには書かれていた。
そして、読者にも愛をたくさん贈っている。

あぁ、そうか。
彼女は本を愛しているから、本にも愛されているんだ。
私が嫉妬してしまったのは、私はそこまで本のことを愛せていないから、愛が足りない自分に対しての怒りからだったのか……。

私の「好き」は愛ではなく恋だった。しかも片想い。
「あの人、好きなんだ!」
「どこが好きなの?」
「うーん、なんとなく?」
いや、好きなら好きって、理由があるじゃん。
と、おもわず突っ込みたくなるような片想い。

好きなんだけど……な。
改めて、好きが詰まっているはずの、自分の本棚を見上げてみる。

あの刑事小説のシリーズは、主人公の女性が好きだな。男社会で甘えるのが嫌で肩肘張って必死で自分を守ろうとして、それでもときどき見せる女の部分が大好き。一匹狼かと思いきや、周りに凄く愛されていて、その周りの人たちのキャラも素敵だよな。
ラストを読んでしまうのが惜しくなって、少し寝かせてしまうような素敵な小説もあったなー。どん底の引きこもっていた時に「それでも大丈夫」と勇気をくれた本もある。最後まで読んで、ラストのどんでん返しに「えぇー!?」ともう一度読み返したものもあるし、泣きすぎて先になかなか進めなかった本もある。

本を見ていると、読んでいるときの感情を思い出す。
背表紙を眺めているだけで、また泣いてしまう。
本から愛が溢れ出てきている。
あれ? ちゃんと私のことを見てくれている?
本は、誰かを選んでなんかいないんだ。
手にとってくれている全ての人に、無償の愛を捧げている。
その愛を受け取れるかどうかは、その人次第。

……そうか、愛を受け取れていなかったのは、私の方だ。

本からの愛を感じ、受け取ることが、今ならできる。

私はやっぱり、本が好き、だ。

ちゃんと堂々と胸を張って、この本たちのことを「好きなんだ」と紹介できるようにならなくちゃいけないんだ。
狂おしいほど愛している。
そう言えるように。

ただ「好き」じゃなくて、「愛している」を教えてくれた本。

「人生を狂わせる名著50」

私はもう、狂わされてしまったに違いない。

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