メディアグランプリ

「私が今の仕事で輝ける理由」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:片山由美子(ライティング・ゼミ 平日コース)

 
 
もうすぐクリスマス。街は色とりどりのネオンで輝き始め、ショーウインドウには赤と緑のポインセチアが彩りを添える。どこからともなく聞こえてくるおなじみのメロディー、気づけば無意識に口ずさんでいる。ライトアップされた大きなツリーの前で、恋人たちが仲良く腕を組んで写真を撮ったり、子どもたちは待ち望むプレゼントに胸を膨らませる。そんな光景がもうすぐやってくる。

私が一番見たいのはツリーだ。クリスマスツリーが見たい。ツリーの上に飾られた星が見たいのだ。道行く人々は、そこに星がある事なんて気にしてはいないだろう。だが私にとっては最も大切な存在、私の一部、いや私自身がその星だと感じている。

私は、クリスマスツリーのてっぺんで輝く星だ。
そしてそれを悟ったのは、5歳のころだった。

私が通っていた保育園は、毎年クリスマスの時期になると学芸会が行われていた。
いよいよ、年長組の私たちがクリスマスの物語を演じる年になった。

ストーリーはこうだ。
ある日、東の国にいる三人の学者の元に見たこともない星が現れた。学者たちはキリストが生まれたことを知り、その星に向かって旅をした。星に導かれて無事にベツレヘムの馬小屋へとたどり着き、イエスを抱くマリア様と会うことができて、めでたしめでたしと。

さて、配役を決める日がやってきた。この劇の主役は、マリアだ。私はマリアをやりたかった。先生が「マリア様をやりたい人?」と聞くと、私は待ってましたとばかりに手を挙げた。頭の中では完全にイメージが出来上がり、もうこの役は私のものだと確信していた。ところが、もう一人手を挙げている子がいるではないか! そしてその子は頑として役を譲ろうとはしない。小柄で可愛くピンク色の衣装が似合いそうな女の子。それに引き換え私ときたら、人一倍体の大きなデカ女。どうしよう……このまま意地を張っても仕方がない。負けは目に見えていた。私はやりたい気持ちをぐっとこらえ、泣く泣く役を譲ることにした。今にして思えば、5歳の子どものわりに冷静な判断だったと思う。
そこへ先生がやって来て「よくガマンしたね。えらかったね」と褒めてくれた。これが子ども心にとても嬉しかったし、誇らしかった。
「あなたにぴったりの役があるから、こっちの方がいいと思うよ」
先生はそう言って、星の役をくれた。
「星? よりによって星?」マリア様はおろか、人間でさえない。ただ突っ立ているだけの星なのだ。私の体が大きくて目立つから星なのか? 先生を少し恨んだ。
「ああ、やっぱりガマンなんてしなきゃよかった」後悔したものの後の祭り。そしていよいよ学芸会の当日がやって来た。

私の頭の上には金色の星が輝いていた。細長く切られた画用紙にゴムを取り付けた、手作り感満載の星の冠をかぶり、私はおもむろに舞台に登場した。こちらを見ている三人の学者の前で、無言のまま方向を指し示し、てくてくと歩いて移動した。私は無事に三人をマリア様のいる馬小屋へと導き、ひとことのセリフもなく立ち去った。これが私の保育園最後の学芸会の思い出だ。
けれども、舞台の上で思った。人が私に付いて来るのって気持ちいい! 静かにほほ笑むマリア様よりも、男の子たちを引き連れて颯爽と歩く自分の方がカッコイイ。確かに私には星がお似合いだった。

あれから40数年、私は今ではフィットネスインストラクターをしている。もう30年以上続けているこの仕事が大好きだ。この仕事が天職だと思っている。
私が右を指させば、全員が右へ移動し、私が回ればみんなも回る。
私はいつの間にか、人々を健康へと導く仕事をしているのだった。あの時の保育園の先生の言葉がよみがえる。
「あなたにぴったりの役があるから、こっちの方がいいと思うよ」

別段意識して指導者になったわけではない。たまたま好きな事を仕事にできただけだ。しかし、気がつけば人々の悩みを聞き、運動を指導し、健康への道を先導している。
そして、多くの人に喜ばれ、感謝されるようにもなれた。これは偶然だろうか? それとも先生の言葉が心のどこかに残っていたのだろうか。
もしあの時、ガマンせずに自分の気持ちを押し通してマリア様を演じていたらどうなっていただろう。今の私はここにいるのだろうか? そんなことをふと考えていた。

もうすぐクリスマスだ。ツリーのてっぺんに置かれている星は、ただの飾りだと思っていたのに、それがあの時私が演じた星だと知ったのはつい最近のことだ。
私は世界中の人々を導くほどのスターではないけれど、私の光を必要としてくれている人たちがいる。こんなに幸せなことはないと思う。だからいつまでも、私らしく輝き続けようと思う。
ツリーを見るたびにこのエピソードを思い出し、今は顔も忘れてしまった先生に感謝している。もうお会いすることはないが、私が指導者を続けることが何よりの恩返しになると思っている。
ありがとう先生、ぴったりの役を見つけてくれて。

 
 
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2017-10-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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