メディアグランプリ

妻はライティング講座で体幹トレーニングをしている


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【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:相澤綾子(ライティング・ゼミ日曜コース)
※この話は一部フィクションです。

 
 
「私、ライティング講座を受けることにしたんだよね」
妻は僕が2歳の娘の寝かしつけを完了し、ソファに座るのを待ち構えていたように話しかけてきた。
「聞いてるの?」
「ああ」
敢えて確認しているということは、僕に何らかの影響があるのか?
「本当は池袋まで行きたいけれど、通信で我慢する。でも課題を出す時間は確保しないといけないけれどね。あとパソコンも使わせてね」
とりあえず、僕が長時間3人の子どもを一人で面倒をみなくてはいけないということは無いようだ。
 
妻は子どもの頃から書くことが好きだったという。仕事でも書く機会が楽しそうだけれど、今の担当はルーチンが多く、ストレスがたまっている。「ルーチンなのに判断すべきことは多い、でも生み出すことはないから脳が腐りそう」などと不満を言っていた。
精神的なストレスが身体にも出ているのか、機嫌が悪いことが多いだけでなく、月に1度くらいのペースで「今日は体調が悪いから出かけるのは嫌」と言ったり、ごろごろしたりしている。そのくせ、仕事は無理しても行っているのだ。
こんな状況だから、何か楽しみを見つけて気が晴れるのなら良いことだと考えた。
 
8月の第2日曜日、いよいよ講座が始まった。妻は夜7時半からスマホにイヤホンをつなぎ、動画を見始めた。子どもたちが話しかけると「ママは勉強しているから、パパと遊んでね」と言っている。次男は食い下がって「僕も聞かせて」と頼み、イヤホンの片方を耳に入れて満足げにしている。さすがに毎週楽しみにしている「直虎」は見始めるだろうと思ったら、イヤホンを外さなかった。
 
翌日珍しく8時半に帰宅すると、妻がパソコン部屋に入り、原稿を書いていた。子どもたちは隣の部屋でテレビを見ていた。
「最初の締め切りは講義の翌日だから今回だけは仕方ないの」
と妻は言った。僕が訊く前に説明したのは、少し罪悪感があるのか?  でもキーボード上の指は止まらない。
「せめて子供たちのいる部屋でパソコンすればいいのに」
僕がそういうと、妻は手を止め、
「そうね、でも自分だって……」
と言いかけて口をつぐんだ。
「悪いけれど、子どもたちをお風呂に入れてくれる?」
普段なら子どもたちの身体を洗い終えたら、身体を拭いて服を着せるために妻を呼ぶところだけれど、今日は無理そうだ。なんとか子どもたちを風呂から出すと、パジャマが用意してあった。それを着せ、歯磨きをさせ、寝かしつけ、ようやく眠りに落ちた辺りで妻が出てきた。
「おかげさまで完了できたよ、ありがとう」
 
その後も早く帰れた日に、妻がパソコンの前に座っているところに遭遇することがあった。土日には朝早く起きて作業し、子どもたちが起きてから、慌てて朝食を作り始めている。講座のある日曜の夜は、夕食を食べ終わるとすぐに片づけ始め、翌日の準備をする。講座開始の7時半前にはコーヒーカップ片手に手帳を広げ、テーブルに座っている。
家族で遊びに出かけても、ちょっとした隙にスマホに目を向けている。しかも眺めているのではなく、常に打ち込んでいる。ちらっと見ると、メールの送信画面で長文を修正している。パソコンで打ち込んだ原稿をスマホのメルアドに送り、修正しているようだ。
 
これはもう本気だ。何かの試合に向けて、ストイックにトレーニングをしている雰囲気である。生活のあらゆる場面で、練習時間を捻出し、その時にできることをやっているのだ。実際妻は強くなっている。軸がしっかりしてきたというか……仕事の愚痴もあまり聞かなくなった。
 
ある晩、仕事中に妻からメッセージが届いた。
 
一応報告しておくね。
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僕は終電に乗り込むと、メッセージのリンクを開いた。妻が受けているライティング講座は天狼院というところがやっているのか。画面をスクロールしていくと、見慣れた名前が飛び込んできた。
 
5 位 フラリーマンできないストレスママは……。記事:相澤綾子さま(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
朝のテレビ番組で、仕事が終わってもまっすぐ家に帰らない「フラリーマン」と呼ばれる人々のことを特集していたのを思い出した。タイトル名をクリックすると、久しぶりに読む妻の文章が現れた。僕がいない間に家で起きていることが書かれていた。子どもとのやりとりで生じるイライラを、SNSでガス抜きしながらやり過ごしているという話だった。僕も「フラリーマン疑惑の夫」として登場していた。「家族全員が『やっぱり家が一番くつろげる』と感じるような、温かい家庭を目指したい。」と締めくくられていた。僕はもう既に眠っているはずの妻に返事を送った。
 
フラリーマン帰ります
 
そして翌日は、6時半からの会議終了後、仕事には戻らずにそのまま家に向かった。
 
毎回の課題の締め切りは月曜だと言っていた。時間の融通のきく日曜の夜までに出すためには、土日に仕上げなければいけない。でも土日は家族でちゃんと向き合って過ごしたい。僕が集中トレーニングの時間を確保してあげられれば、満足した課題提出できて、その後みんなで楽しく過ごせるのかもしれない。とはいえ、正直自分がのんびりしたい。だから朝パソコン部屋から出てきた妻に、僕はまだ言えないでいる。
「出してからおいで」
 
 
***

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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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