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僕はその時、初めてお母さんたちの気持ちがわかったような気がした


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記事:上田光俊(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「え~ん! え~ん!」
子供が泣いている。
しかも割と激しめに。
バスの中でそんなに大声で子供に泣かれたら、あのお母さんはさぞかし肩身の狭い思いをしているのだろうな。
けっこう満員だし。
席とか譲ってもらってたし。
子供2人も抱えて、隣にお父さんはいないし、自分一人でなんとかしなきゃいけないと思っているのかな。
でも、大丈夫ですよ。
どんなに大声で泣かれても、僕は全然気にしないですから。
そもそも子供は泣くものですし、泣き止ませようとはせずに、そのまま泣かせてあげてくださいね。
しばらく泣かせてあげたら、そのうち自然と泣き止みますから。
バスの乗っている間に泣き止まなくても大丈夫ですしね。
そんなに申し訳なさそうにしなくていいですよ。
泣くくらい可愛いもんですよ。
僕なんてね、いつも顔とか蹴られていますから。
顔だけじゃないですよ。
ありとあらゆる部位を殴られたり蹴られたりしていますから。
さすがに、バスの中で子供たちにそんなことされたことはないですけど。
お母さんたちのその気持ちわかりますから。
いや、お母さんたちの方がよっぽど大変だとは思いますし、その大変さは僕たち男性には計り知れないものがあるかもしれないですけど。
でも、その気持ちわかります。
少なくとも、僕は味方ですから。
同志というか、戦友くらいの気持ちでいますからね。
どんなに子供が泣いていても、あまり気にしなくていいですからね。
お母さんたちは何も悪くないですから。
勿論子供もね。
子供が泣くのって、ただの自然現象ですから。
 
僕はバスや電車の中で、ぐずっている赤ちゃんや泣いているお子さんを抱えたお母さんたちを見かけると、いつも、ついそう思ってしまう。
そして、実際にそういう状況にあるお母さんたちは、どこか申し訳なさそうに必死で子供をあやして泣き止ませようとしているかのようにも見える。
なかなか泣き止んでくれなくて、今辛い気持ちなんだろうなと。
冷たい視線を感じてしまっているんだろうなとも。
たしかに、バスや電車の中で泣き喚く赤ちゃんや子供たちをうるさいと感じる人はいるだろうとは思う。
僕は別に、そう感じる人たちを悪く言うつもりはない。
それはそれでしかたのないことだと思う。
でも、それを何とも思わない人も実際にはたくさんいると思うのだ。
少なくとも、僕はそうだ。
 
僕にも3人の子供がいる。
まだ小さいし、それぞれにバスや電車の中で泣き喚かれた経験もある。
その度に肩身の狭い思いをしたり、周囲からの冷たい視線を感じたりもしてきた。
まだ長女が3歳で長男が1歳の時のことだが、家族4人で沖縄に旅行に行ったことがある。
2泊3日というスケジュールの中で、とりあえず行けるところは全部行こうと予定を組んでいた。
残波岬に美ら海水族館、万座毛に首里城とその周辺の城下町散策。
子供たちにとっては、初めての長い旅行だったから、かなり疲れていたんだろうとは思う。
帰りの飛行機の中で、子供たちは当然のようにぐずり始めた。
「もう帰りたい~!」
離陸時から飛行中はまだよかった。
おやつをあげたり、通路を歩いたりして、なんとかなだめすかしては子供たちの機嫌を取っていた。
しかし、沖縄那覇空港から関西国際空港行の飛行機が着陸態勢に入った時のことだった。
「当機はまもなく着陸態勢に入ります、今一度安全ベルトをお確かめください」
そのアナウンスと共に、僕たちは席の移動ができなくなった。
安全ベルトを装着し、子供たちをそれぞれの膝の上に抱っこする形で、着陸するまでの時間をじっと待つしかなかった。
「もういやや~! 早く帰りたい~! わ~ん!」
もうこうなってしまうと手のつけようがない。
あやそうにも立ち上がれないし、おやつをあげようにも突き返される。
しばらくは「うんうん」と言いながら、背中をさすってあげたりもしていたが、それも気に入らないのか、今度は泣くだけでは飽き足らず膝の上で暴れ出してしまった。
針の筵とはまさにこのことだった。
それから僕たちは何の打つ手もなく肩身の狭い思いで、周囲の人たちに謝りながら着陸までの時間をなんとかやり過ごした。
 
正直に言うと、僕も子供ができるまでは、バスや電車の中で赤ちゃんや子供たちが大声で泣いたりするところに遭遇した時に、うるさいなと思ったことは何度もある。
静かにさせてくれないかなとも。
でも、子供ができてからは、今度は僕がそう思われる立場になった。
そして、実際に経験した。
バスや電車の中で子供にぐずられて、泣き喚かれることを。
それを、なんとかしようとしてもなんとかできないということも。
僕はその時、初めてお母さんたちの気持ちがわかったような気がした。
沖縄旅行からの帰りの飛行機の中で経験したあの肩身の狭い思いや、周囲の人たちからの冷たい視線を浴びて、いたたまれない気持ちになったことで。
子供たちといつも一緒にいるお母さんたちは、もしかしたら普段からそんな気持ちでいるのかもしれない。
僕たち男性にはわからないけれど、辛い気持ちで日々を過ごしているのかもしれない。
子供が泣き止んでくれなくて、どうしていいかわかなくて、無力感と寂しさでいっぱいになっているのかもしれない。
でも、これだけは頭の片隅にでも置いておいていただければと思う。
 
直接、言葉で伝えられることはないのかもしれないけれど、バスや電車の中で赤ちゃんや子供たちに泣かれてしまって、申し訳なさそうにしているお母さんたちを温かい気持ちで見守っている人たちはきっとたくさんいると思います。
少なくとも、僕はそんなお母さんたちを「戦友」だと思っていますから。
毎日、顔蹴られていますから。
 
 
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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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