メディアグランプリ

恋する気持ち


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:見海陽子(ライティング・ゼミ 平日コース)

 
 
もう、ずっとあなたのことばかり考えて眠れないの。
こんな気持ちになったのは、本当に久しぶりで、もう、どうすればいいのか、わかんない。
 
多分、ずっと前から気になってたけど、見てみぬふりしてた。
だって、私には、旦那がいて、4人の子供がいて、日々の家事の繰回しがあって、仕事があって、夜寝る時でさえも一人になんてなれなくて。
透き通るような美しい顔も、ほとばしる才気も、燃えるような情熱も、光り輝く肉体も、人に語れる実績も、何にももっていない私が、今さらあなたに恋をして、あなたに振り向いてもらいたいなんて願ったって、どうにかなるなんて妄想してみたって、いやぁ、めっちゃ笑えるでしょ。
 
でも、と、もう一回わたしの中にあなたが気に入ってくれる何かがないか、鏡をのぞく。
すっぴんの私は、しみだらけで、眉間のしわが化粧しても隠せない。三段バラのお肉がユニクロジーンズの上で揺れていて、母乳を与え続けた胸は貧相にぶら下がってる。
 
こんな、なんのとりえもない、廃れた使い古しみたいな、三段バラ肉のアラフォー女が、恋の主人公に躍り出るなんてこと、ある?
 
なのに、あなたは突然わたしの近くにやってきて、ささやいたの。
俺を振り向かせたいんだろ?やれるもんなら、やってみれば?って。
 
これって、私にもチャンスがあるってこと?
 
まだ、間に合うのかもしれない。向こう見ずにそう思うと、いてもたってもいられなくなって、日々にまつわる様々のことを早々に投げ出して、山手線に駆け込んだ。
 
降り立ったら、夜。その街の誰もが、私の日常とはかけ離れた世界の住人に見える。スティングの大好きな曲に「Englishman in NY」ってのがあるけど、これまさに「東急沿線の主婦 in 池袋(夜)」だ。水色のマル眼鏡をかけた金髪の東洋人だとか、紫のハイヒールに紫×黒のスーツを着た同年代の女だとか、完全に私のテリトリー外。アウェー感半端ない。
 
こんな遠くに来てしまって、私は何をしようというのだろう。今すぐ家に帰って、子供たちの今日のあれこれをききながら夕食を食べて、ピアノの練習につきあって、勉強やってる?と声をかけて、ほんの少し読み聞かせをして、小さなこどものやわらかい匂いをクンクンしながら眠るあの場所に帰るべきじゃないかと自問する。
でも、ここまで来たんだ。私は一歩、踏み出してしまった。
 
とにかくあなたに会って、もう一回自分の気持ちを確かめてみよう。そう思いなおして、なんとか、あなたに会わせてくれるというその場所にたどり着く。待ち合わせ時間よりかなり早くに着いてしまったので、しばらくその指定場所を眺めて回った。ここが、あなたの住む世界。あぁ、私が好きなものが沢山ある。とりわけ、私が今最も夢中になって読んでいる古い本が立てかけてあるのを見つけて、少なくとも、この場所はアウェーじゃないと安堵する。あなたを好きになりはじめた自分が、わかる気がする。
 
勇気を少し取り戻して、待ち合わせまでのしばらく、スタバに待機することにした。
大好きな豆乳ラテで心を整え、戦略を練り、化粧を直す。時間を計り、ちょうどいいタイミングと思われる頃、再び待ち合わせ場所のドアを押した。
 
そこには、私とおんなじように、いや、私以上にあなたをものにしたいと思っている人が沢山待っていた。
 
そう、どんなに願ったって、あなたはわたしだけのものにはなりはしない。そんなことは覚悟の上。でも、振り向いてほしい、笑いかけてほしい、私のことも好きになってほしい。私にはそれを願う理由も必然もあるのだ。そう気持ちを奮い立たせて、コーラを頼む。待つ。
そしてとうとう、あなたと初めて対峙する時間がやってきた。
 
約15分。
私は、自分のありったけを晒すのも厭わない、その気概であなたに向かう。でも、自分をアピールしようとすればするほど、醜態をさらしている自分に気が付いた。まわりの人はやたら魅力的で、私なんかの入るスキはなさそうだった。まさに既読スルー。どうにもこうにも、恥ずかしくていたたまれなくなる。やっぱり、私にはあなたは高根の花。何にも持っていない、いや、三段バラのしみったれ40女は、いくら脱いでみたって何にも出てこないどころか、むしろ犯罪。せいぜい人様の恋愛小説でも読んで、イケメンが美女とめくるめく過ごすさまを楽しむ観客でいたほうがいい。
 
でも、私をあなたと引き合わせてくれたミウラさんが、教えてくれたの。あなたは、フルのが仕事なんだ、って。すんごいSキャラなんだって。思いっきり自虐を味わった私は、まんまとあなたの手の上。すごい引力であなたに引き寄せられていく。
ミウラさんは続けて、どうすればあなたが振り向いてくれるのか、その秘密を教えてくれる。簡単そうに見えるけど、やっぱりなかなか難しいその秘儀で、でももっとあなたに挑戦してみたいと思った。
これって、一歩前進、って思っていいの?こんな私でも、まだ夢見てていいの?
 
そうか。ふられたっていいじゃない。とにかく私は私の世界を抜け出し、あなたに近づき、あなたに向き合い始めた。
 
ちょっとしたスキがあればあなたを想い、夜も眠れないほどあなたを想い、どうすればあなたが私に笑いかけてくれるのか考え続ける時間。恋する気持ち。生きてる実感。
 
とりあえず、4か月おつきあいしてみよう。
書くということ。私が恋したあなた。
 
 
***

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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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