メディアグランプリ

髪は女の命だが、抗がん剤で抜けてもまた生える


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記事:安光伸江(ライティングゼミ平日コース)
 

2016年11月1日。ついに髪が抜け始めた。抗がん剤の副作用だ。

 

この年の夏に乳がんが発覚し、全摘手術をして傷口が落ち着くのを待ち、術後補助療法である抗がん剤の点滴が始まったのは10月なかばのことだ。

その後半月で抜け始めた。ネットの情報通りだった。

 

術前検査では HER2(ハーツー)陽性と診断された。がんの進行は速いが、がん細胞にだけ働きかけて副作用の少ないハーセプチンという分子標的薬が効くタイプだ。

あとホルモン剤も効くということで、手術後の治療予定は

 

抗がん剤 △ 3~6ヶ月

ハーセプチン ◎ 1年

ホルモン剤 ○ 5年

 

という話を聞いていた。抗がん剤、いやだなぁ。

 

「髪、抜けますよね」「抜けます。でもまた生えます」

 

当時の私は何年も美容院に行かず伸ばしっぱなしのストレートヘアを束ね、長い黒髪がひそかな自慢だった。

それが抗がん剤で抜けるという。

 

いや、それ以前に、手術をするなら長い髪はじゃまだ。

 

私の病状では手術できるだけラッキーで、手術をしないという選択肢はなかった。あと半年も放っておいたら遠隔転移して命が危なかったらしい。

 

悩んでいる暇はなかった。すぐ手術を決意し、母の行きつけの美容院で入院前にばっさり切ってもらった。

長い髪の束は、生前「切れ! 切れ!」とうるさかった父の仏壇に供えた。

 

そして入院する時もまだ抗がん剤をするのは渋っていた。

 

先生は△って言ったじゃないか、ハーセプチン単体というわけにはいかないのか? とネットやら本やら調べまくったが、がんの初発でハーセプチン単体を推奨するところはどこもなかった。

 

手術した後の検査の結果でも、抗がん剤をしないという選択肢はないことがわかった。先生も是非やった方がいいとおっしゃった。

 

抗がん剤をすると決めてからは、髪が抜けた時にかぶる帽子の準備をしたり、免疫が下がることがあるからマスクを大量に買ったり、いろいろ準備をした。点滴初回の翌日にはまた美容院に行って、髪が抜けても始末にあまり困らないようさらに短く切ってもらった。剃ろうかとも思ったのだがそれはかえってよくないらしい。

 

そして抜けた髪を受け止められるよう、ネットで不織布の使い捨てキャップを注文。食品工場の見学時に使うようなやつだ。それが配達されたちょうどその日から抜け始めた! わが髪の毛ながら、空気を読む子だ。

 

それからの1週間か10日ほどは、だらだらと抜ける髪の毛を始末するのが大変だった。キャップをかぶっていても、寝ている間に抜けた毛が突き抜けて枕につく。ネットで勧められた通りに縦型のコロコロを使って、一生懸命掃除をする日が続いた。

 

ほぼ抜けてしまえばあとはそんなに気にならない。いや、もちろん人目にはさらせないので帽子は手放せないが、これまた抗がん剤をしている人のためのいろんな帽子がネットで買えた。インナーキャップもかぶっておでかけは万全だ。家では病院でもらったタオル帽子をかぶった。これはボランティアの人が作ってくれたそうで、ずいぶん重宝した。

 

近所のおばさまたちに「はげたんですよ~」と言うと気の毒そうな顔をされてしまうのだが、「でも意外にかわいいんですよ、頭の形が」と笑いをとったら安心してくれた。気持ちだけは前向きな、明るいがん患者だ。

 

亡き父のはげを嫌っていた私がはげてみて思ったこと。

 

はげは、冬の夜寝る時に、寒い。

はげは、頭に汗をかく。

 

うちの父もそうだったのかなぁ、と父を偲んだ。

 

やがて時は過ぎ、2つめの抗がん剤の副作用があまりにひどくて4回のうち2回で撃沈し、予定より早くハーセプチンに切り替えることになった。これで副作用は軽減される。 助かった!

 

そうこうするうちに、ある日洗面所の鏡を見ると、なにやら短い黒いものが生えていた。

髪の毛だ! ほんとに生えてきた! 先生の言葉は嘘じゃなかった。

 

それからは少しずつ伸びる髪の毛を見るのが楽しみになった。

夏になる頃には感染予防のマスクをはずしてよくなり、それと前後するように帽子を脱いで外を歩いてもいいことになった。

 

近所のショッピングセンターでは、お店の人が「夏向けにさっぱり切られましたね! すてきですね!」と褒めてくれた。切ったのではなくて、はげたのが生えてきただけなのだけど。

 

冬の寒い時期は帽子とマスクで完全武装

夏になってきたら帽子が脱げてベリーショート

 

ほんと、私の髪の毛は、なかなか空気を読む子である。

 

生えてきた髪は黒く、髪質は以前より柔らかくなった。

まだ生えっぱなし、伸ばしっぱなしにしているが、そのうちまた母の行きつけの美容院で切ってもらわなくちゃ。

 

今度はどんな髪型にしようかな?

がんばってまたロングヘアにするかな?

それともショートでかっこよく決めるかな?

 

今はそんなことが楽しみでしょうがない。

 

どんな髪型にしようかな?

あと3分の1ほどになったハーセプチン、最後までちゃんとやりたいな。

そして無病生存5年、いや10年、いやもっと長く生きて元気になろう!

 

そんなことを思う、明るいがん患者である。

これからも治療をがんばるぞ!

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2017-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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