メディアグランプリ

ダメOLを変えたのは、あるオリンピック競技だった。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:沼あゆみ(ライティングゼミ平日コース)

 

 

「あなたって、自分のことしか考えてないよね」

同僚の言葉は、グサッと刺さった後、わたしの頭の中を駆け巡った。

 

それまで、わたしの頭の中は、いかに自分の売上を伸ばすかで、いっぱいであった。

 

わたしはマンション販売の仕事をしている。店舗ごとに目標売上が決められており、わたしが売上を上げないと、他の人がカバーしなければ達成できない。周りに迷惑をかけないために、必死だった。接客の後は、その結果に一喜一憂していた。特にうまくいかなかった接客の後は、周りが心配するほどに激しく落ち込む。そして普段オフィス内ではパソコンの画面ばかり見ていた。机の上が散らかっていても、コピー用紙やお茶っ葉が少なくなっていても、気にしない。そういうことは、「気が利く人」に任せればいい。わたしはわたしで、店舗のために、頑張っているのだから。

 

しかし、こんなに必死になっていても、接客は上手くいかない。お客様は、「検討させて頂きます。また、連絡しますね」と、にこやかな顔で言ってくださるのに、その後全く連絡がつかない。信頼されていないんだろうな、と感じる。他の同僚は、いつも電話で楽しそうにお客様と話し、メールでもいいお返事がお客様から来て、着実に売上につなげているのに……同僚が売上を上げていても、素直に喜ぶことができなかった。自分がいかにダメか、というのが、浮き彫りになるような気がしたからだ。そして、だんだんと、仕事がイヤになっていた。

 

その気持ちを、同僚に打ち明けた時に言われたのが、「自分のことしか考えていない」という先の言葉である。

 

「周りに、目を向けてなさすぎると思うよ。うまくいかなくて、一喜一憂すると周りは疲れちゃうし、そんな自分のことしか考えてない気持ちが、接客にも出てくるんだと思うよ」

 

同僚は、出口がない悩みにぶつかるわたしに、まっすぐに向き合い、もっと良くしようと指摘してくれている。今ならわかる。でも、優しい言葉を期待していたわたしは、心の中で思いっきり反発した。

 

「わたしだって、周りのことぐらい考えている。だからこそ、こんなに頑張っているのに……」

しかし、いくら頑張っていても空回りしているのが、今のわたしだ。

 

とても悔しかった。指摘されるとムキになってしまうのが、昔からのわたしの性格である。わたしにだって、できる。見せてやる、できる姿を。

 

次の朝、いつもより30分早く出勤して、誰もいないオフィスの掃除をしようとモップとウェットテイッシュをロッカーから取り出した。

 

ウエットティッシュで同僚たちの机や接客用のテーブルを拭く。

 

キュッキュッキュッキュッ……という音だけが静かなオフィスに広がった時、わたしはあるスポーツを思い出した。

 

それは、冬のオリンピック競技にもなっている「カーリング」である。

何年か前にテレビでなんとなく見ただけだが、円形の重みのありそうな物体を滑らせるために、選手たちが氷の上を磨いていたのが印象的であった。気になって後で調べてみると、あの円形の物体は「ストーン」と呼ばれるそうだ。選手たちの持っている「ブラシ」でストーンの進行方向を磨き、摩擦の力を利用してストーンを滑らせながらゴールを目指す。ストーンに直接触れて押し出すのはルール違反だ。

 

ふと思った。

「カーリング選手になったつもりで、仕事をすればいいんじゃないかな」

カーリング選手たちは、動かしたくてたまらないストーンを、直接動かすことはできない。だから、氷の上を磨いて、ストーンが動きやすいような環境を作り出す。そうすることで、重そうなストーンも狙った方向に動いてくれる。

 

わたしの仕事も同じかもしれない。仕事は自分だけで行うものではなく、オフィスの環境、人間関係の環境の中で行われている。その中で自分だけを押し出すと、何事もうまく運ばない。まず周りの環境を磨く。そうすることで、自然に仕事が、動き始めるかもしれない。

 

その日からわたしは、「カーリング的仕事術」を実践してみることにした。

わたしにとっての「ストーン」つまり仕事が上手く進むように、周りの環境を「磨き」始めたのである。

 

パソコンの画面ばかり見ていた顔を、少しだけ上げて、周りを見渡した。そして、自分の感情と同じくらい、「周りの人の感情」も考えるようにした。

 

どうされると嬉しいのか、イライラしてしまうのか。周りの同僚たちも、わたしと同じ人間である。わたしが「いいな」と思う環境を、周りの人に対して、作ってみよう。

 

意識した分だけ、自分の行動が変わってきた。

 

足りないものは気づいたときに発注する。同僚たちが面倒がって誰も手をつけないことを率先して行う。わたしのお客様だけではなくて、同僚のお客様のことも気にかけて、声をかけるようにする。

 

すると、周りの環境にも少しずつ変化が訪れた。

 

ずっと苦手だと思い込んでいた人が、「ありがとう」と言ってくれた。その笑顔が、すごく素敵だった。周りのことを考えるようになると、接客にも良い効果が表れた。お客様が本当は何を求めているのか、わかるようになってきた。たとえ売上に繋がらなくても、わたしのことを頼ってくれるようになった。同僚たちも、「最近なんだか、いい方向に変わったよね」と言ってくれるようになった。

 

カーリングのストーンが少しずつ、滑り出しているのを感じた。

 

でも、この状態で満足すべきではない。感情は無意識に顔に出てしまうし、他の人に言われないと気づかない部分も多い。接客の時も、まだまだお客様のちょっとした感情の変化を読み取れないことばかりだ。磨きどころは、まだたくさんあると思う。

 

それに、磨くのがゴールではない。

 

ゴールはもっと先、店舗で目標を達成すること、そして、わたしもしっかり達成に関わることである。目標を達成した時は、カーリングの選手たちのように、皆で喜びあえたら良いと思う。

 

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2017-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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