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父親になる自信がなかった僕を救ってくれたのはある催眠術師だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:上田光俊(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「赤ちゃんモデルにでもなれるんじゃない?」
僕たちにとっての待望の赤ちゃんは女の子だった。
結婚4年目にして、僕たち夫婦の元には天使がやってきたのだ。
僕は父親になった。
正直なところ、それまでは特別子供が好きだったというわけでもなく、どちらかと言えば子供に対しては苦手意識を持っていた方だと思う。
だから、赤ちゃんが産まれて僕が父親になった時に、自分の子供を本当に可愛いと思えるのだろうか?
父親として、ちゃんと愛情を持って接することができるのだろうか?
自分のことながらに、それが心配だった。
父親になる自信なんて僕には全くなかったのだ。
でも、実際に自分たちの赤ちゃんを目の当たりにしてしまうと、そんなことはもうどうでもよくなった。
僕たちの元に産まれてきてくれた天使は、そんな僕の考えを簡単に吹き飛ばしてしまうほどに、とてもとても可愛かったのだ。
 
それから、僕たちにとっての初めての子育てが始まった。
おむつ替えに寝かしつけから沐浴まで、何もかもが初めての経験だ。
おむつを替える時には途中でおしっこをされてしまったり、寝かしつけようとしてもなかなか寝てはくれなかったりと、初めてなんだから当たり前かもしれないが、ちゃんとできないことばかりだったように思う。
それに、なかなか泣き止んでくれなかったり、夜中に何度も何度も起きられたりすることが続くと、さすがに体力的にも精神的にも疲れが溜まってきて、イライラしてしまうこともたくさんあった。
それでも、静かに眠っている赤ちゃんの寝顔を見てしまうともうダメだった。
可愛くてしかたがない。
なんでこんなに可愛いんだろう?
あまりに可愛くて抱きしめたい衝動に駆られたけれど、やっと眠ってくれたのだから、ここでまた起こしてしまうわけにはいかない。
僕はその衝動を全力で抑え込むのに必死だった。
その寝顔を見てしまうと、自分がさっきまで疲れていたことやイライラしていたことは勿論、仕事の疲れまでもきれいさっぱり忘れてしまうほどに癒された。
そうして、初めての子育てを続けていくうちに、僕は自分たちの赤ちゃんに対してこう思うようになった。
 
「うちの子、もしかしたら赤ちゃんモデルになれるんじゃないだろうか?」
 
ベビー用品のパッケージになっていたり、雑誌の表紙になっていたり、おむつのCMに出てくるようなあの赤ちゃんモデルに。
目がパッチリとしていて、愛らしい表情で笑顔を振りまく、あの赤ちゃんモデルたちにも、決して引けを取らない愛くるしさを標準装備しているうちの子だったらきっと……。
僕は本気でそう思っていた。
確信めいたものを感じていた。
間違いない。
もし、うちの子が赤ちゃんモデルのオーディションなどを受けてしまったとしたら、確実に審査を通ってしまうことになるだろう。
もしかしたら、赤ちゃんモデルのトップモデルになってしまって、そのうち子役でデビューして、将来的には日本を代表する大女優にでもなってしまうのかもしれない。
ハリウッドデビュー……?
ありえる……。
普通にありえる。
いや、ダメだ。
それは絶対ダメだ。
そんなことになってしまったら、それはそれで嬉しいかもしれないが、かなり困ったことになってしまう。
何故なら、僕は自分たちの赤ちゃんの可愛さを、僕たちだけのものにしたかったからだ。
この子の可愛さと愛くるしさを、他の誰かと共有するつもりなんてさらさらなかった。
それは僕たち夫婦二人だけのものなのだから。
結局、僕たちは自分たちの赤ちゃんを、どこかの赤ちゃんモデルのオーディションに応募したりするようなことはしなかった。
 
その後、僕たちの間には、さらに二人の赤ちゃんができた。
男の子と女の子。
その二人とも、長女に負けず劣らず、とても可愛かった。
きっとこの子たちも、赤ちゃんモデルのオーディションを受けることになったら、確実に通ってしまうことだろう。
実際に、そう思わずにはいられないほど、この二人の子どもたちも本当に可愛かったのだから仕方がない。
よく周囲からは、親バカだと言われることもあったが、正直意味がよくわからなかった。
可愛いものを可愛いと言って、何故親バカなのか。
僕は当たり前のことを言っているという感覚しかなかった。
 
しかし、ある時とても不思議なことが起きた。
それは子供たちの七五三祝いを終えた時のことだった。
僕たちの子どもは三人兄弟なのだが、ちょうど二つずつ年が離れていて、今年三人全員ともが七五三祝いになるというとても珍しい、僕たちにとっては一回きりのイベントだった。
毎回、七五三祝いをはじめ、お宮参りや誕生日などの特別な日には子供たちの写真を写真館に行って撮影しているのだが、この十月に七五三祝いの撮影を終えて、その写真を受け取った時のことだった。
 
「これが今まで写真館で撮ってもらった時の写真ね」
そう言って、妻が以前に撮影していた分の写真を持ってきて僕に見せてくれたのだ。
今年撮影したものと見比べてみようと思ったのだろう。
それを見て僕は驚いた。
長女のお宮参りの時の写真を久しぶりに見てみたのだが……。
勿論、可愛いことは可愛いのだが……。
何故だろう……。
 
どう見ても、赤ちゃんモデルになれるかと言ったら、それほどでもないと感じてしまっている自分がいたのだ。
 
僕は驚いた。
心底驚いた。
長女が赤ちゃんの時は、本気で赤ちゃんモデルになれるに違いないと確信していたというのに。
イライラも疲れもすべてが吹き飛んでしまうくらいに可愛いと感じていたのに。
今、改めて冷静になって見てみると、実際なところ、赤ちゃんモデルになるのは正直難しそうだなと思った。
僕は狐につままれたような、まるで催眠術にでもかかっていて、その催眠が解けた時のような気分になっていた。
当時もこの写真を何回も見ていたはずなのに。
何故こうも感じ方が、以前と今とでは違って感じられるのだろうか?
僕は不思議だった。
やっぱり僕は、当時何らかの催眠術にでもかかっていたのかもしれない。
自分たちの赤ちゃんが世界最強に可愛いと感じてしまう催眠に。
そうとでも結論付けなければ、これほどまでに感じ方が違っているということを、僕はちゃんと理解できそうにはなかった。
しかし、僕はこの催眠術にかかって本当に良かったと思っている。
おかげで僕は、自分たちの赤ちゃんをこれほどまでに可愛いと思えるようになったのだし、心から愛情を持って接することができるようになったのだから。
そして、今、たとえその催眠が解けてしまったとしても、自分たちの子どもを可愛いと思う気持ちに変わりはない。
僕は父親として、この子たちに出会えたことを、とても嬉しく思っています。
こんな催眠だったら、もう一度かかってみてもいいかな。
ただ、赤ちゃんモデルはちょっと無理そうだったね。
 
***

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2017-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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