メディアグランプリ

『五日後、本番です』


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:國島知美(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あのー、他の方は? メンバーは今5人ぐらいって書いてあったんですけど……」
 
「ああー、3人は卒業してね。あと1人は幽霊部員」
 
「え、じゃあ」
 
「うん、キミ合わせて2人だけ」
 
「えぇ……」
 
4月。それは出会いの季節。
サークル新歓のビラを片手に、私は新たな世界に足を踏み入れようとしていた。
 
会員数2名。
そのサークル、名を「鴨川タップアルディ」という。
名前のとおり、鴨川にあるウッドデッキでタップダンスするのを主な活動としている。
 
そう、鴨川。その川は京都市を流れる川で、京都有数の散歩スポットである。
広い空、川のせせらぎ、心地よい空気、ウッドデッキを這う虫、刺さる通行人の目線、もちろん雨風は凌げず、冬場は極寒である。
 
そしてメンバーは私以外にこの先輩ただ一人。
一瞬ひるんだ。このサークル、大丈夫なのか。
 
しかしタップをやりたい気持ちが強かったのと、なんとなくその先輩はスゴイ人だと感じたので(実際スゴイ人だった)入会をすることにした。
 
「ジーン・ケリーが踊っている曲をやってみたいです」
奢ってもらったハンバーガーを頬張りながらそんなことを言ったように思う。
 
こうしてアルディでの活動が始まった。
 
いや、なかなか始まらなかった。
 
すでに三回生だった忙しい先輩をつかまえて練習をしてもらうのは難しかったため、活動は平均して二ヶ月に一回ぐらいだった。
 
ただ、そんなゆるい活動もそれはそれで楽しかった。タップの練習以外にも先輩にはいろんなことを教えてもらった。それに、私も兼サーをしていて忙しかったのだ。
 
しかし練習していないという絶対的な事実は、私のタップに関する自信が育つことを許さなかった。「へっぽこタップ」というフレーズがいつも頭の中にあった。
 
それは一年経って私に後輩が1人できた後も変わらなかった。
そうこうしているうちに先輩は引退を宣言、自動的に私が会長になってしまった。
 
そう、なってしまったのだ。
そこからは焦りと不安と空回りの日々だった。今もそうといえばそうである。
 
そんなある日、私と同じ大学に通いながら隣の大学のタップサークルに入っている人から連絡が来た。
 
「文化祭で、一緒にパフォーマンスしよ」
 
実は隣の大学にもタップダンスサークルがある。アルディよりも良い設備で(まず屋根がある)、講師も付いていて、メンバーも大人数という歴史あるサークルである。そして諸事情によりアルディとは犬猿の仲だった(らしい)。
 
そんなライバル団体のメンバーからの誘い。しかし対抗意識もプライドもないへっぽこ会長だった私はもちろんOKした。それどころか振りやら進行やらをほぼ彼に任せて、出演というオイシイとこだけいただいた。
 
結果としてパフォーマンスは無事に終わり、充実した文化祭となった。
 
しかし同時にすごく悔しい気持ちが生まれていた。それは、同じ大学の同級生でありながら隣のサークルでタップを磨いてきた彼との実力差を見せつけられたことによるものであった。
 
達成感とモヤモヤを抱えてなんだか泣きたいような気持ちになりながらその日は帰路についた。
 
それから一年。
私は相変わらず屋根のない鴨川ウッドデッキでタップをやっている。
 
今やっているのは今年の文化祭パフォーマンスの練習だ。もう五日後に迫っている。正直間に合わないと思っていたが、最近ちょっといいかも? と思えるようになってきた。
 
踊りながら考える。初めてここに来た時から私は成長できているだろうか。先輩に、同級生の彼にちょっとでも近づけているか。
 
今までいろんなことを後悔した。
今年も文化祭に出ようと決めてしまったこと。会長になってしまったこと。アルディを私の代で終わらせなかったこと。ちゃんと練習してこなかったこと。そもそもアルディに入ったことタップを始めたこと。
実力と自信の無さからくるそんな葛藤で何度も落ち込んだ。
 
しかし私はまだこのウッドデッキにいる。それが答えなのだと思う。
 
今では一緒に踊る仲間が6人いる。他にも支えてくれる人がいる。私たちの踊りを観に来てくれる人がいる。
 
11月の寒い風に吹かれながらも、この場所に我が家のような暖かさを感じて我々は今日も踊るのであった。
 
***

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2017-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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