「あなたの炎の色を取り戻すには」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:青木文子(ライティング・ゼミ平日コース)
「これから、どうしようか」
今から13年前の3月。二人目を出産して数ヶ月目。配偶者はうつ病でいつ無職になるかもしれない。自分自身は二人目を出産したばかりの専業主婦。壁に四方を囲まれて身動きが取れない。そんな思いでの毎日を過ごしていた日の心のつぶやきだ。
人生を変えたい。でもなにをどう変えたらいいかもわからない。そもそも自分はどこに向かおうとしているのかもよくわからない。子どもが昼寝をした本の束の間、本棚の前に立つと一冊の本が目に入った。その本を手に取った。その本は私の本棚にずっと置かれている本だった。読むともなくパラパラとめくってみた。そしてある部分で手がとまった。
そのページに書いてあったこと。それは毎朝大学ノート3ページに文章を書け、という提案だった。その書き方には名前がついていた。その名前は、モーニングページ。
毎朝起きたらすぐに毎朝大学ノート3ページに文章を書きなさい。ただただ自分の頭に思い浮かんだことを書き連ねなさい。「そんなの無理」や「どうせ私なんか」そんな言葉が浮かんで来たらそれもそのまま書きなさい。そんな提案だった。
何かを感じた。手元にあった大学ノートのページを開いた。翌日から毎朝私は毎朝このモーニングページを書きはじめた。
わらにもすがる、とはこういうことを言うのだろうか。それから大学ノート3ページに文字を書くのが朝の日課になった。思いついたこと、感じていることをただただ書き続ける大学ノート3ページ。例えばある日の朝のモーニングページはこんな具合だ。
「今日も暑い。どんな一日になるんだろうか。子どものあせもがなかなかなおらないね。どうしようか。あぁ、私沢山のことを今日もかんがえなくちゃいけないのか。一体これからの人生どうなるんだろうか。私は何を手に入れたいんだろう。そんなことがすぐ分かったらこんなノート書いていないかもしれない。このノートに書いていることにはどんな意味があるのだろう。意味もないかもしれないしあるのかもしれない。今日の夕飯には何にしよう」
モーニングページを書き続けていくうちに何かが変わり始めた。耳を澄ますようになった。そして自分の中にある声を聞き分けられるようになってきた。自分の気持ち、自分の迷い、自分に対して自分が評価している声、自分の中から聞こえて来る自分をジャッジする声。どの声も区別せずただただ文字にする。
モーニングページは煙突に似ている。
そう、あの工場などにある煙突だ。子どもが保育園に通っていた頃、保育園に薪ストーブがあった。私は毎年その薪ストーブの煙突掃除をしていた。
煙突は大切だ。煙突がなかったり、煙突が詰まってきたりして空気の通りが悪くなるとどうなるか? まず、ストーブの中にある空気が外に出ていかない。すると新しい空気が入っていかない。薪は火はついているものの、ぶすぶすと不完全燃焼を起こして、煙がたまってくる。煙突から煙は出ていかないので、ストーブの中に充満した煙はそのうちに部屋の中にも立ち込めてくる。
煙突から気持ちよく煙が出ていく時は、自然に新しい空気が入ってくる。新しい空気があれば薪は気持ちよく炎を上げて燃えはじめる。
モーニングページは煙突なのだ。文字にすることで自分の中にある様々な思いや気持ち、自分をジャッジする声は自分の身体の外に出ていく。それらは煙だ。あなたが生きていく上で燃やしたあとに出た煙。文字にすることはその煙を体の外にだすための煙突を立てることだ。その煙突を立てることであなたの中にはまた必要な新しい空気が入ってくる。そして新しい炎を燃やすことができる。
私はそれから4か月、モーニングノートを書き続けた。自分の中の否定する声も肯定する声も、希望も絶望も矛盾も書き続けた。ただただ思いつくままに、意識の流れるままにすべてを毎朝3ページのノートに書き続けた。
モーニングノートを書き始めて半年後、私は司法書士受験生になった。モーニングノートを書きつづけて、自分が欲しいのは「自由」だということが見えた。そしてそのために「経済的な自立」を手に入れようと思った。
法学部出身でもない、0歳の乳飲み子を抱えた専業主婦。学校に通うこともできないので、インターネットの通信講座での受験生。条件は何一つ良くなかった。でももう迷うことはなかった。自分の中の煙は全部外に出したから。それから4年後、司法書士試験に受かった。
モーニングページを私に手渡してくれた本は今も本棚にある。『ずっとやりたかったことを、やりなさい』という本だ。
時折、あのモーニングページを書き続けた日々を思い出す。自分の行く先が見えなかったのは、自分の中にある煙にまかれていたからだ。煙は外に出せばいい。その煙を身体の外に出すためには文字にすることが必要なのだ。
今でもモーニングページを書くことがある。自分の中の煙を外に出すために。煙を外に出せば、私の中の炎は、あなたの中の炎は、また新しい綺麗な色で燃え始めるはずだから。
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