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ワンオペ育児に泡の力を


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:相澤綾子(ライティングゼミ・特講)
 
 退庁時間のチャイムが鳴り終わると同時にバッグをつかみ、立ち上がる。「お先に失礼します」のあいさつもそこそこに、職場を飛び出す。廊下を抜け、入り口の自動ドアにぶつかりそうになり、駐車場まで走る。渋滞しがちな道を避けて保育所に着くと、子どものクラスに急ぐ。ふざけて走り回る子どもをせかして、荷物をまとめ、車に乗せる。チャイルドシートを嫌がってひと悶着ある。ようやく全員が座り、小さなおやつで間を持たせながら、マンションの車庫に車を入れる。ハンドブレーキを引いた瞬間、緊張が解けて一気に眠気が襲ってくる。決まって「もうこのまま何もしないで、寝ちゃってもいいかな?」と思う。昼間、定時で帰るために必死になっていた疲れがどっと出るのだ。けれどそんなわけにはいかない。実はこれからがもう一仕事なのだ。
 家に入ると靴を脱がせ、手を洗わせる。自分も洗うと、解凍しておいた細切れ肉を炒め始める。同時に焼きそば用中華めん3袋の端を切り、電子レンジで1分ずつ加熱する。朝炒めておいた野菜を加え、粉末ソースを一袋絡ませる。今度はアツアツになってほぐれためんを取り出し、残りの粉末ソースを和えれば、大人1人前、子ども3人前の焼きそばが出来上がる。昨日のスープの残りがあればなお良い。こんな感じで、ほとんどの平日夜はチャーハンか麺類だ。もっと時間がなかったり疲れていたり、朝準備できなかった時には、コンビニのお世話になる。いや、正直に言おう。忙しい時期にはコンビニ率が高くなる。しかも手作りの方がいいかと頑張った時よりも、コンビニのごはんの方が子どもたちに人気だ。
食事に限ったことだけではない。いろいろ理想はあったけれど、うまくいっていない。 お風呂に入る前には遊んだおもちゃのお片づけをして、明日の服の準備をして、歯磨きをして、やることはたくさんある。本当は自分で翌日の準備をすることを覚えさせたいけれど、なかなか続かないでいる。つい私が代わりにやってしまう。おもちゃは朝までそのまま片付けられない日がほとんどだ。
 食事の片付けと明日の準備が終わったら、子どもたちをお風呂に入れる。遊びに夢中になっている子どもたちをお風呂に誘い出すのは一苦労だ。こんな時のための最近の秘密兵器は、お風呂での「シュワシュワパーティ」だ。
 必要なのは、冷蔵庫で冷やしたサイダーと子どもたちのコップだ。ペットボトルを背中に隠して近づく。
「そろそろお風呂の時間なんだけれど……」
子どもたちは興味を示さないか、「まだ入らない」と言うかのどちらかだ。
「じゃあ、これをお風呂で飲むのはどう?」
と言いながら、サイダーを高く掲げる。一斉に振り向いて、みんな大喜びだ。
「特別だよ、パパには絶対に秘密だよ」というと、よりいっそうはしゃぐ。
  
 サイダーは、できれば使いたくない。でも使わないと、「お風呂に入ろう」、「まだ入りたくない」の繰り返しで時間が過ぎる。お互いのストレスがたまって睡眠時間が減ってしまうのと、楽しくサイダーを飲むのと、どっちが子どもの身体のためにいいだろうか。歯磨きを忘れなければ虫歯のリスクは下げられる。
 育児におけるサイダーは、ビジネスマンのタバコみたいなものなのだ。仕事中、頭が煮詰まった時、スモーカー仲間と誘い合い、リラックスして会話を楽しむ。そういう時の会話からいいアイデアが生まれるんだよ、などと、正当化する人もいる。タバコを吸わない人からすれば、いやいや、許されないでしょ、とも思う。でも、そうすることで、リフレッシュできて、仕事がはかどるのなら、ということで、みんな目をつぶっている。
 シュワシュワパーティなんてかわいいものだ。こんなことで楽しくお風呂に入れるならいいじゃないか。
 
 全員が身体を洗い終わり、湯船につかると、私はそれぞれのコップにサイダーを注ぎ、渡していく。全員が持ったら、乾杯のあいさつだ。自分のコップにはこっそりビールを入れている。
「さあ、かんぱいするよー、みんなコップを持って……せーの」
「かんぱーい!」
一番下の娘はまだ「かんぱい」といえず「ぱんかーい」と言う。それをみんなで笑い、楽しくサイダーを飲む。飲み終わったら、今度は一人ずつシャンプーだ。
「シャンプーをしない人は、明日からシュワシュワパーティできないよ。誰が一番にするかな?」
 
 ようやく全員が布団に入るのが午後9時半、これでどうにか9時間の睡眠が確保できる。一番下の娘も保育所でのお昼寝を合わせれば十分な睡眠時間だ。
 シュワシュワパーティ作戦も、サイダーを飲むことが当たり前になってしまえば、効果が薄れてしまう。私の作戦を知ってか知らずか、買い物のついでに夫はいつもサイダーとミニサイズの缶ビールを補充してくれている。でもそろそろ子どもたちも飽きてくる頃かもしれない。
また何か新しい、ちょっと特別感のある作戦を考えなければいけない。
 
 
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2017-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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