メディアグランプリ

449人のためのコンビニエンス・ストア


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記事:橋本真美(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
飛び地の村にコンビニができた!と聞いた時に、どんなに胸が高鳴ったろうか。
え、どうでもいい情報?
いやいや、これがすごいんですって。
奈良と三重に挟まれた、全国で唯一の飛び地村、それが和歌山県北山村である。そこに行くにはいったん県外に出ないとたどり着けない、ちょっとした秘境。国だったならば相当パスポートが面倒くさそうだ。
人口だってほんの449人(2018年1月時点)という小さな山村だが、ジャバラという独自の果実の栽培と温泉、夏場の観光筏下り(これまた全国で唯一!)やラフティングといった川遊びコンテンツを備えた、人口に対して充実した産業を持つ村なのである。
ついでなのでジャバラについて説明すると、花粉症対策になると脚光を浴びた果実で、今では村外でも栽培されているかもしれないが、もともとはこの村にしかなかったという柑橘。漢字は「蛇腹」ではなく「邪払」。邪を払うという文字通りの由来は、花粉症はおろか様々な不調に効きそうだ。
 
話がそれたが、その村にコンビニである。
周辺の町村にも道の駅以外に買い物スポットはあまりなく、道中はほぼ山の中。そして、何より人口が400人ちょっと。普通に考えると、暑い日にホットココアを売るくらい珍事件だ。余計なお世話だろうが、どうにも採算が取れるとは考えにくい。
それでもコンビニができるのだから、相当な観光客が年中通して訪れているのかと思えば、年中通して国内外からやってくるのは、どちらかというとすぐ近くにある熊野古道。そのルートからもやや外れた飛び地村は、夏場の筏シーズンの休日がメインとなる。いったいどこを狙っての出店なのだろう。ヤマザキさんも大それたことをするもんだ、と思っていたが、どうやら村営らしい。実際かなり珍しいニュースだったらしく、ヤフーニュースにも取り上げられた。
 
これは一度行ってみなければ。そう思いながら、実際に見に行く機会がなかったのだが、先日仕事で北山村を訪れることになり、ついに噂のコンビニに行くことができたのだ!
道の駅や温泉施設、筏の受付をしている観光センターなどが一堂に会した敷地の、以前はたしか飲食店のあった部分にそのコンビニはあった。飲食店の記憶のせいもあるが、木造の三角屋根はコンビニのイメージからかけ離れすぎていて、目の前に行くまで気づかなかった。
 
扉をくぐって気づいたのは、店内の半分以上を占めるジャバラ製品。ジャバラを使ったポン酢に飲料水にお菓子。季節がら果実そのものも1個100円で販売中。よくよく見ると「ヤマザキショップ じゃばら屋」というネーミングだったので、どうやら看板に偽りはなさそうだ。
営業時間は朝7時から夜8時まで。休みだってある。とはいえ、ちゃんとコンビニらしい日用品や食品の棚もあり、間違いなくコンビニだった。せっかくなのでジャポン(ジャバラポン酢)とジャバラウォーター、そして人気商品らしい豆大福(ジャバラ関係なし)を購入することにした。
 
先ほども書いたように、隣接した町も山深いため、近隣の住民が買い物に出ようにも車でかなりの時間を要する立地。それを鑑みての村の決断に思わず拍手を送りたくなった。そう、これは観光客のためではなく、純粋に449人の村民のためのコンビニだったのだ。土産物は別の場所にあったものを集約しただけのこと。実際に利用している人を見て、ちょっと胸が温かくなった。
村の人が便利になり、元気にジャバラを作ったり、筏師として活躍したりすれば、村はそれだけ潤う可能性も高い。北山村は65歳以上の高齢人口が約半分を占める県内トップクラスの高齢村。長時間の外出で無理をしないで済むようになるというのもある。会社に例えると、いわば福利厚生ということか。
 
あたしの住む街には、「こんな近くにポンポン作らなくても」というくらいコンビニはあふれている。なので、この1軒とは有り難みがまったく違うし、目的だってやはりちょっと違うんだろう。元々は観光施設と道の駅だけだった敷地。そこにコンビニができることで、地元の人も楽しめる場所に変わったのだ。
 
村の行政が村の人に目を向けるのは至極当然なのだけれど、身近にいる大切な人やものに目を向けることは時としてないがしろになるものだ。親の有り難みは失くしてからじゃないとわからない、なんて言葉は昔から使い古されているくらいに。もちろん、親や家族だけでなく、友人や恋人もあれば、人でない場合だってある。仲良くしてくれていた人からケーキを送ってもらったお礼を、今度帰る時でいいかと伝えそびれたまま訃報を聞くこととなったことは未だに後悔が残っているし、壊してしまって泣きをみたものだってたくさんある。
見えなくなるほど近すぎるものにも定期的に意識を向けて、大切なものだと再確認すること。難しいけれど、飛び地の村にコンビニができたことで生まれた笑顔のように、そこで生まれることもあるはずだ。
ジャバラは加工すると美味しいが、生では顔がギュウッと中心に寄ってしまうくらいすっぱ苦い。きっと北山村は邪を払い幸せを呼び込む上手な「村」の加工調理もわかっているのだろう。
 
 
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2018-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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