プロフェッショナル・ゼミ

暇とは心の○○だった。《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:中野 篤史(プロフェッショナル・ゼミ)

子供の頃は、「あー、暇だー」って、思うことがよくありました。小学生の時の夏休み、遊ぶために友達の家に電話をして、誰もつかまらなかった時とか「暇だ、どうしよう……」って。そんな時は、自分だけが取り残された気分になったものです。「もしかしたら、みんな俺をおいて川原へ遊びにでかけて、すっげー楽しんでいるんじゃないか」とあせったり。もしくは、みんなでサッカーやっているのではと思い、小学校の校庭へ友達を探しに出かけたりしました。そして結局、誰もいなくて、家に帰って悶々としたものです。

でも最近は「あー、暇だー」って、思うことがなくなりました。大人になったということでしょうか? いや、あまり関係なさそうです。どちらかといえばスマホの影響が大きいのだと思います。

私のことで言うと、もうそれは中毒症状としか言いようがありません。気づいたら 、スマホを見ている自分がおります。5分ともたないでしょうか。ええ、ついいましがたも見たばかりです。でも、少し経つと気になってしまいます。そんなにメールが頻繁にくるわけありませんし、facebookの投稿だって、そんなに目まぐるしく流れてこないのです。いや、投稿が沢山流れていたとしても、情報に追いつく必要はありません。そんなことは、知っています。でも、ついついスマホに手が伸びてしまうのです。

最近私は、この自分の行動を気にしています。暇さえあれば見てしまう。手持ち無沙汰になると、スマホを見てしまう。だから通勤電車の中で、ぎゅうぎゅうに固められた押し寿司の状態の時でも、かろうじてスマホが見れるよう、電車に乗り込むときから肘をまげて、顔のまえでスマホを見れるような体制で乗り込みます。そこまでして何か大事な情報、たとえば朝の経済ニュースとか、そういうものを見る必要があるのかと聞かれれば、そんなものはありません。しいて言えば糸井さんの「今日のダーリン」を読んでいます。では、どうしても「今日のダーリン」を満員電車の中で見たいのかといえば、そういうことでもありません。それから、信号待ちや、エスカレーターで止まっている時も、時間の隙間さえできれば、さっとポケットへ手を入れます。そしてスマホを取り出し、何か見るものを探すのです。

そうなのです、先に「読む」という目的があるのではなく、むしろ時間つぶしに読めるものを「探す」という目的ために、スマホを手に取るのです。

だから、スマホを見てしまうというよりも、手持ち無沙汰に耐えられないのです。なんかこう、何もしていない時間が耐えがたいといいますか。現実は今私の前にあるのに、その現実ではなくバーチャルの世界をスマホという窓を通し探索する。そんなに現実が面白くないのでしょうか? いや、逆にバーチャルの方が面白いのでしょうか? いやいや、どちらでもありません。やっぱり、暇に耐えられないだけです。貧乏暇なしと言いますが、何もしていないともったいない気がしてしまうのです。

これは、私だけに起こっていることなのかといえば、どうやらそうでもなさそうです。周りを見渡せば、スマホを持っている多くの人が、スマホを覗き込んでいます。みなさんも、私と同じように暇に耐えられなくなっているのではないのでしょうか?

そういえばこの間、テレビで衝撃映像特集をやっていました。それを観ていたら、海外で起きたスマホによる衝撃映像が紹介されました。スマホ見ながら歩いていた人が落っこちたのです。映像には、黒人の女性がスマホを視ながら歩道を歩いている姿が映っています。彼女の歩く数メートル先には工事のため、大きく口を開けたマンホールがありました。ここまで書けば、次になにが起こるか、だいたいわかります。想像するだけで痛いです。スマホに気をとられて歩いていた彼女は、マンホールの蓋につまずき、頭から穴の中へ落っこちていったのです。とても痛い映像です。もし私がスマホを見ながら歩いている時に、マンホールの蓋が開いていても、同じように落っこちるでしょう。

さて、なぜ私はそこまで暇に耐えられないのでしょうか? 暇が嫌いなのでしょうか? いやそんなはずがありません。私は余暇や、休暇といた「暇」がつくものが大好きです。むしろ、積極的に取りたいと思っています。どうやら、私は何もしていない状態が苦手なようです。ということは、そんな私が、休暇をとって旅行へ出かけたとしても、結局あまりゆっくりとした休暇にはなりません。楽しいことを沢山体験したいがゆえに、結構タイトな旅程になりがちだからです。

そもそもこの「暇」という状態はどういう状態なのでしょう? それは、何かやりたいと思っていて、でもそれが思い浮かばなかったり、できることがないという、ややストレスを感じている状態が暇なのです。単に何もしていない状態は、暇とは言いません。むしろ、何もしていない状態で心身がマインドフルな状態なら、暇な気持ちにはならないものです。

ということは、“何もやることがない状態”が原因なのではなく、その状態で“満たされてない”というところが問題なのだとわかります。だから、暇をなくすには“満たされてない”状態をなくせばいいのです。

では、ここから「暇」を感じないための、マインドフルな心の状態の作り方について……、という話がはじまるのかと思ったら大まつがいです。マインドフルネスになることについては、『ヴィパッサナー瞑想』(著者:マハーシ・サヤドー )に、詳しく書かれているので、そちらをおすすめします。

むしろ、私は積極的に「暇」を感じることを選びたい。暇と感じない心をつくるマインドフルネスな方向ではなく、積極的に暇をつぶすことです。なぜなら、暇とは心の渇望だからです。

それは、何かをやりたいと感じていて、でもそれがなんなのかはっきりせず、具体的な行動に出ることが出来ないという渇きです。もしかしたら暇は、退屈と言い換えた方が、伝わりやすいかもしれません。そして、これは大いなる可能性を秘めた創造性の元です。「ああー、暇だー、退屈だー」と感じるからこそ、何かをしようと考えるわけです。もしくは何かを作ろうと考えるのです。

でもその矛先が、“なんとなくスマホをいじる”という行為に向かってしまうのは、とてももったいない。何かを生み出そうとする「圧」が抜けてしまいます。どうせなら圧を高めるような暇つぶしをしたい。

岡本太郎は言いました「芸術は爆発だ」と。創造性の源は、圧縮された暇の集合体と言えるかもしれません。「では、どんな暇つぶしがおすすめですか?」と聞かれれば「雑誌です」と答えます。雑誌をいう紙のメディアは、暇つぶしの為にあるメディアだと思っています。

だいたい、あの大きさは不便です。満員電車の中では開けません。読む場所といえば、カフェとか、電車で座っている時など、空間に余裕があるときです。つまり、空間を選ぶという積極性がないと読まないのです。それから、雑誌は無駄の多い媒体です。これもやはり不便です。ネットであれば「検索」できるので、欲しい情報にすぐ辿りつけますが、雑誌はできません。逆にいうと、検索できない雑多な情報の中に、意外な情報を見つける面白さがあります。とくに後ろのページへいけばいくほど、ちょっとした情報が隠れていたします。こういった不便で、無駄なメディアを暇つぶしに選ぶことで、圧が高まり後の創造性へとつながっていくのです。

そういえば、私の高校時代の同級生に、最高の暇つぶしをした男がいます。それは中川君です。彼は私が考える、まさにキング・オブ・暇つぶし野郎です。かれこれ、10年以上も前ですが、大人になってから彼と東京の居酒屋で飲んだことがあります。その時、彼はアメリカで役者を目指していて、一時的に帰国していました。その中川君が大学の時、中南米を旅した時の話をしてくれました。それは、エクアドルのビーチで起こったことです。

「そこは、誰もいない白いビーチでさあ。海も青くて、超やばいんだよ」
「おおー、いい! 旅って感じ」
「でも、実際はめちゃくちゃ暑くて、かったるいんだよ」
「たしかにね」
「もう、厚いし何もやることなくて、超暇なの」そして、かれは私に尋ねた。
「あっちゃん、人間って究極の暇になると何するかわかる?」
「え、寝るでしょ?」
「違うんだよ、人間本当にやることがないと穴を掘るんだ」と、彼は遠くを見るように語った。しかし、彼の視線の先には、壁に張られ茶色くなった居酒屋のメニューがあった。そして、日が暮れるまで、彼はひたすら堀り続け、穴は大人が一人入るほど深くなっていたと話す。
「まじで! スゲー」といって、大笑いした。

彼の暇つぶしは、それ自体がコンテンツになっていたのでした。

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