メディアグランプリ

ドーピングを覚えた絶滅危惧種


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:久保明日香(ライティング・ゼミ 特講)

 
 
「コーラ、いいっすよ。おすすめです。書くと、かなり頭使うんで、糖分必要なんですよ」スピードライティングゼミの講師である三浦先生が講義の中でこのようなことを言っていた。
 
コーラ……か。
 
実は私は27年間、コーラを飲んだことがない。コーラ味のあめやグミは食べたことがあるのだが、液体のコーラを飲んだ経験が今までにないのである。それはなぜなら、私が小学校のとき、コーラについてインプットされた情報が記憶に鮮明に残っているからである。だから、どうしてもコーラに手が伸びなかったのだ。
 
私が通っている小学校では保健室の前に『健康掲示板』というものがあった。
血が固まる仕組みは? 風邪を引いたときに食べるおすすめの食べ物は? など我々の身近にあることについて、小学生でも興味を持ってよめるような、そんなトピックが取り上げられており、そのトピックは1ヶ月かに1度、保健の先生によって更新されていた。その掲示板に興味を持っていた私は毎月見に行くのを楽しみにしていたのだが、その中でも印象的だったのが『飲み物に含まれる砂糖の量』についてだった。
 
掲示板には砂糖が入ったペットボトルがいくつかかけられていた。ペットボトルそれぞれには実際の飲料水に含まれているのと同じ量の砂糖が入っている。ペットボトルのラベルははがされていないため、ひと目見ただけでどの飲み物にどれだけの砂糖が含まれているかがわかるようになっていた。
 
水、紅茶、オレンジジュース、ポカリスエット、コーラ……。
 
この中で最も砂糖を含んでいた飲み物はコーラだった。それも私が覚えている限りでは他の飲み物と比べてダントツでペットボトルが砂糖の“白”で埋め尽くされていた。
 
幼い頃は炭酸のあのシュワっとする感覚がどうも苦手で炭酸飲料をほとんど飲まなかった。父親が夏の暑い日にコーラをごくごくと飲んでいるのを見て、美味しいのかな、なんて思ったこともあった。しかし、その掲示板を見てから、『コーラは体に悪いもの』という印象がインプットされてしまった。赤黒いような赤茶色いような奇妙な色も、『悪いもの』という印象を助長させていた。だから、大人になるにつれ、炭酸が飲めるようになっても、自らコーラを選ぶということはなかった。
 
そんな「コーラのすすめ」があった講義を受けた数日後、私は友人と仕事帰りにファストフード店へ行く機会があった。2人でハンバーガーのセットを頼んだのだが、その時、友人が頼んだドリンクが“コーラ”だった。
 
「そういえばさ、この前ある人が、糖分摂取のためにはコーラがいいですよってやたらと勧めていたんだけど、実は私、コーラ飲んだことないんだよね」
「えっ、その年で? 1回も? そんな人存在するんだね。絶滅危惧種みたい!」
 
その友人はハンバーガーを食べる時によくコーラを頼んでいる。理由は、体に良いとはいえないが、たまに食べたくなるファストフードを食べるそのときに、一緒にコーラを飲むことで、「今、体に悪いものを摂取している!」という背徳感を一層味わうことができるからだそうだ。コーラはそういう使い方もあるのか、と思わず感心してしまった。
 
友人と別れて帰宅し、その日も記事を書くためにパソコンに向かっていた。だが仕事の後だと頭がしっかりと働かない。朝から晩まで働き、疲れ果てた脳に鞭打って記事を書く。それにはどうしてもエネルギーが足りないようだった。
 
その時にふと思い出した。
 
「コーラ、いいっすよ」
 
……ものは試しか。
世の中にはコーラで背徳感を味わう人や糖分摂取をする人など様々な人がいる。もしかしたら、私には合わないかもしれない。それでも楽になれるかもしれないというかすかな期待を抱いた私はコートをはおり、財布を手に持って近くのコンビニへと向かった。
 
ドリンクコーナーにはコーラが何種類か並んでいた。その中から一番シンプルなものを一本、冷蔵ケースの中から取ってレジへと向かった。
 
いよいよ、今まで避け続けてきた飲み物、コーラの初摂取の時が来た。一般の人からするとただのコーラだ。だけど、私はとても緊張していた。小さく深呼吸をし、ペットボトルのキャップをひねった。
 
プシュッ。
 
いい音が響き、泡が下の方から湧き上がってくる。それが少しおさまったところで、私は人生初めてのコーラを口に含んだ。
 
……甘い。
甘さが舌の先から口の中全体へ広がっていく。一口飲んで、なんとも言えない不思議な感覚に陥った。これは、美味しいのだろうか? だがしかし、口に残る嫌な甘さがない。だから二口目も含みたくなる。そして三口目、四口目……気づいたらどんどんコーラは減っていった。そしてそれに比例してなんだか心が、頭がほっとするような気がしてきた。これが糖分の力か……!
 
なんだか今なら記事が書けそうな気がする。そう思って私はパソコンの前に戻り、再び記事を書き始めた。糖分を摂取したからか、先程より頭が回るような気がする。これは、いい。もしかしたらクセになるかもしれない。
 
絶滅危惧種だった私は生誕27年目にしてコーラというドーピングを覚えた。生き残るため、書き続けるために得た力。今こそ本気を出すときだ!
まだ『コーラは体に悪いもの』という過去の記憶は完全には消えていないけれど、一つの道具として、どうしても必要なときに摂取するのであれば、コーラも悪くない。
今だって、家の冷蔵庫にはコーラが数本ストックされている。いつでも、ドーピングの準備はできているのだ。
 
 
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2018-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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