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友達が行方不明になりました、多分あたしのせいです


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記事:コバヤシミズキ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
友達が行方不明になった。
彼女の名前は、えびちゃん。物心ついたときからずっと一緒にいた。最近は一緒にいることも少なくなったが、仲はよかった。小さいときは彼女が遊びに来る予感がすると、すぐ玄関に走って行ったものだ。押し入れにこもって秘密の話をしたり、彼女の似顔絵を描いてみたり、よくある幼少期の友達だった。それでも、私は彼女が名前を呼ばれたとき、どんな顔をしていたのか知らない。彼女の好きなものも、癖も、髪型も、瞳の色も何も知らないのだ。父も母も彼女のことを知っていたけど、その姿を見たことはない。でも、私は断言できる。彼女は確かに側にいた。
この矛盾だらけの友達の名前は、えびちゃん。私の大切なイマジナリーフレンドである。
 
そもそもイマジナリーフレンドとはなにか。
イマジナリーフレンドとは、直訳で空想の友人のことである。多くは一人っ子や子供に見られる症状だが、大人になってもイマジナリーフレンドがいる場合もある。ウィキ先生が教えてくれた。
イマジナリーフレンドが共通認識ではないことに気がついたのは、本当に最近のことだ。今まで気づかなかったのもどうかと思うかもしれないが、正直みんなイマジナリーフレンドがいるものだと思ってた。それくらいえびちゃんは居て当たり前の存在になっていたのだ。なんとなく興味がわいて、周りの友達に聞いてまわってみたりもした。
「小さい時さ、イマジナリーフレンドと遊んだりしなかった?」
「イマジナリーフレンド? なにそれ」
「仮に遊んだとしても覚えてないんじゃないかな。家帰ったら聞いてみるわ」
この通りである。これはもしかして、もしかしなくても私は相手にされていないのか。「またあいつなんか言ってるよ」と思われていてもおかしくない。悲しい限りである。もう私の味方はえびちゃんしかいないのだ。私の優しいイマジナリーフレンド、美しき友。これからも大切にするね! そう決意したのだ。そんな矢先、とんでもないことが起こった。
えびちゃんが行方不明になった。
 
行方不明というと大げさかもしれない。
生身の人間と空想の人間じゃ土俵が違う。生身の人間が行方不明になったとき、最初はみんな興奮したかのように「あの子が居なくなった!」とあの子のことで持ちきりになる。でもそれは最初だけで、時間がたつにつれ熱は冷めてきて、その代わりだんだん不安が伝染していくのだ。
じゃあ、イマジナリーフレンドは?
私だけである。彼女のことを知っているのは私だけなのだ。私がどんなに泣きわめこうが、訴えかけようが、誰も相手にしない。ただただ一人でこの不安を抱え込まなければいけないのだ。私という狭いコミュニティの中で私が一人で「やばいよやばいよ!」と言って終わり。だって、彼女がいないから。えびちゃんというアウトプット先がないと、私の中は慌てふためく私で氾濫を起こしてしまうのに。それなのに、えびちゃんは私のことをおいていったのだ。
裏切りだ! 裏切りだ! 彼女を探さなくちゃ!
 
さて、彼女は本当に行方不明になったのか。
えびちゃんの行方を追おうとしたが、いかんせん手段がない。探そうにも手がかりもない。煙のように消えてしまった。いなくなるちょっと前までは、たまに一緒に枕を並べて私の話を聞いてもらっていたのだ。そういえば、昔ほど会う頻度はさほど多くなくなったな。今考えたら綺麗なフェードアウトである。完璧な演出。私の好みなど分かっているとでも言いたいのか。まったくその通りである。
「しかし、さほど焦ってない自分もいる」
そうなのだ。実はそれほど焦っていない。考え込むたちである私は、考えすぎると慌ててしまう傾向があるらしい。迷惑なやつである。そんな私に、もう一度かみ砕いて、私の考えを教えてくれるのがえびちゃんだった。篩(ふるい)のように、支離滅裂な言葉の中から大事なものだけ拾い上げてくれるのだ。でも、えびちゃんはいないのに、案外私は普通なのだ。慌ててないし、焦ってない。彼女はいないのに。
姿の見えない彼女が、恨めしげにこちらを見ている。そんな気がした。
 
“文章を書く”というのは彼女とのお喋りに少し似ている。
考えて、考えて、吐き出して、大切なものを拾い上げる。ああ、そっくりじゃないか。気がついたのは、後200字でこの文章が終わるときだった。ついさっきである。
「裏切り者は私か」
彼女に問いかけても声は返ってこない。そりゃそうだ、彼女は今、物言わねども目の前に居るのだから!
彼女は行方不明になんかなっていなかった。ずっと側にいたのだ。文章という体を手に入れて、私の前にもう一度姿を現してくれたのだ。
「浮気してごめんね」
そう言うと、ほんの少し彼女が微笑んだ気がした。
「ほら、いい女になったでしょ」
確かに、彼女はそう言ったのだ。
 
行方不明になった友達が帰ってきました。
あたしの勘違いだったみたいです。
彼女の名前はえびちゃん。
今、あなたと私の前にいます。

***

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2018-03-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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