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メディアグランプリ

場所を聞かれたら、携帯アプリを見せるのではなく、手書きの地図を渡す


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高林忠正(ライティング・ゼミ 特講)

 
 
「ギンギンギラギラ夕日が沈む」
金色の人形が回りながらメロディーをかなでていました。
東京有楽町マリオンのからくり時計、マリオンクロックが午後3時の時報を告げてます。
商談を終えた私は、一緒に外出した先輩とともにオフィスに向かって歩いていました。
 
「あのう、すみません」私の左斜め前から声がかかりました。
見ると、7〜80代のご婦人でした。
「慶応病院に行くにはどう行ったらいいんでしょうか?」
 
有楽町マリオンの前で、なんで信濃町の慶應病院?
最初は、「えっ?」と思いました。
百貨店の店頭で販売をしている習慣から、反射的にカバンから一枚の紙を取り出しました。
 
「有楽町から、山手線か京浜東北線に乗って秋葉原に行って、総武線に乗り換えて……」と気がつくと、ノートを下敷きがわりにして、JRの路線を紙に書きながら説明を始めていました。
 
「信濃町の改札を出たら、この通りの向こう側が、慶応病院ですよ」
と言いながら書き終わり、その紙を手渡しました。
自分としてはいつも行なっているルーティーンの一つ。
 
相手のご婦人の表情はパッと明るくなったのがわかりました。
私が書いた紙を胸に当てて、「ありがとうございます。このとおりにいってみますね」と言ったのです。
午後3時に慶応病院ってことは、お見舞いだったのかな?と何気なくつぶやきながら、カバンを手にオフィスに戻る準備をしました。
「あっ」そうです。一緒にいた先輩のことはすっかり忘れていたのです。
 
「おまえさ、親切心もほどほどにしろよ」
「(会社にもどるのに)遅れちゃうじゃないか」
「課長から、『なんで遅れた?』って聞かれたら、なんて言うんだよ」
会社に戻る間、先輩は一言も口を聞いてくれませんでした。
 
いつの日からでしょうか。私は人から道を尋ねられると、必ず紙に書いて説明するようにしていました。
一つには、私の説明が伝わりにくいと言われたことからだったかもしれません。
 
百貨店の店頭で販売の仕事をしていたときのことです。
今のようにネットで検索することはできませんでした。あるのは自分や仲間たちで共有している情報のみ。
私たちは、店で扱っていない品物を聞かれたときは、知っている範囲でその品物が買える場所をお知らせするようにしていました。
いつの間にか、行き先の地図を紙に書くようになったのです。
 
そこまでする必要はないと思われる方も多いかもしれません。
ただ、せっかく期待してご来店されたお客さまに対して、「今できることはなんだろう?」という、気持ちから発したものでした。
 
案内とはシンプルなものです。
ここからどう行けば良いか?
紙に道とともに、途中の風景、目印になるものなどを説明しながら書くだけ。
自分の歩いているシーンを頭に描きながら、話すのです。
 
秋の日のことでした。
私たちが扱っていないスポーツ用品を探している方がご来店されました。
 
神田小川町のミズノスポーツだったらあるんじゃないかな?と判断しました。
ミズノに問い合わせたところ、取り扱っていることを確認した私は、いつもと同じように紙を取り出しました。
 
「銀座から地下鉄丸の内線に乗って、3つ目の淡路町で降りて、改札を出た左側の階段をのぼると目の前に三菱東京銀行があります」
「道なりに行くと三井住友銀行があります」
「さらにそこから5分ほど行くと、ミズノのお店があります」
 
実はその姿をある人が見ていたのです。
伝説の営業マンと言われていた松村(仮名)さんでした。
 
お客さまへの案内が終わったあと、松村さんから声をかけられたのです。
松村さんのことは知ってはいても、お話したことは初めてでした。
 
「いいことだね」
最初わたしには何のことかわかりませんでした
 
「紙に地図を書きながら説明するって、何がいいかわかる?」
 
「手で道順を書きながら説明をするってことは、ひとことで言うと、その人と同じ空間を共有するようなものなんだよ」
 
「そのひとにとって、ここまでくる光景や場所にしたって、私たちとは決して同じではないんだ」
 
「それを、君が紙に書きながら説明することによって、同じ道、同じ風景、同じ目印を共有することになるんだ」
「君の説明の間中、まだ訪れたことのない場所であっても、その方は無意識のなかで、君の説明する想像のシーンを描いているんだ」
 
「手渡された紙に沿って実際に歩く。つまり君の話した空間が目の前に展開されることになるんだ」
 
「何も場所だけじゃないよ。いつ、どんなときでも手書きの案内。大事にしてみたらどうかな」
それだけ言って、松村さんは立ち去りました。
 
現在は、スマホアプリが一般的になりつつあります。
道をたずねられれば、スマホアプリを見せながら説明だけでことが足りるかもしれません。
 
果たしてそれだけでいいでしょうか?
一手間です。地図を書きながら案内することで、おたがいに道と光景を頭に描くことになります。
 
道をたずねられたら手書きの地図を手渡す。
どんなに科学が発達しても、手書きの地図で相手の方と自分がつながる瞬間があるのではないでしょうか。
 
 
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2018-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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