メディアグランプリ

日常の中の非日常


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西嶋祐子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
黒い世界へきたみたいだなといつも思う。
サラリーマン風の、黒いスーツを着た男性たちがいっぱい椅子に座っている。
平日朝一便の飛行機待ちの風景だ。
 
ふーっ、なんとか間に合った。
カジュアルな格好で椅子に座る私は、
場違いだなと思いながら、ほっとする。
 
いつもは朝9時以降に起きるのだが、
朝一の飛行機に乗ろうとすると
5時に起きて、6時には家を出なくてはいけない。
 
前の日は、起きられるのだろうかと、
イヤなドキドキのまま、眠りにつく。
 
心配性の私は、眠りが深くならないように、
電気をつけたまま寝る。
 
夜中に何度も目を覚ましながら
あともう少し眠れるなと、何度も携帯を確認する。
 
5時になると、
眠い目をこすりながら、
なんとか起き上がり、無理やり着替えて、家を出る。
 
朝一の道路は空いていて、スムーズに車で走れるのが救いだ。
 
空港内に入り
手荷物を預け
保安検査場をくぐりぬける。
 
何もないことは、わかっているのだが、
自分がスパイにでもなった気分で、
ちょっとどきどきする。
 
椅子に座って、朝ごはんを食べながら、
機内へ案内されるのを待つ。
 
飛行機内に入ると、気配を消して
ひたすら寝る体制に入る。
ここからしばらくは、私だけの時間だ。
 
 
もう5年以上たつのだろうか。
 
私は、飛行機の中で
いつものように前の晩の睡眠を
とりもどすかのように、ひたすら眠っていた。
 
客室乗務員さんが、機内サービスの飲み物を
持ってきてくださる頃だったろうか。
 
機内にアナウンスが流れ、
どうやら緊急着陸するらしい。
 
私は、寝ぼけていて、
これは夢なのか、現実なのか、
何が起きているのか、全然わからなかった。
 
少し焦げ臭いような匂いがしていたが
特に機内が混乱することもなく
静かな空間のままだった。
 
「ハイヒールは脱いで。荷物を置いて」
着陸すると
客室乗務員さんの指示のもと、
テレビでみたことがある
すべり台のようなもので、
非常口から地上に降りなければいけない事態になっていた。
 
やっとここで、目が覚めた私は、
思った以上に大変な事態なのかもしれないと
不安になった。
 
私は、くそまじめに、
バックをその場に置いたまま、
飛行機から避難することにした。
 
すべり台の前に立つと
スキーの上級者コースくらいの斜度に感じで、
ちょっと怖くなった。
 
下では、
先に降りた乗客の男性たちが
上手に降り立てるように、受け止める係をやってくださっていた。
 
一度目をつぶって、えいっと滑ると、思った以上のスピードだった。
 
無事降りて
滑走路に集合すると
黒いスーツのサラリーマンたちは
携帯で次々に会社に連絡をしていた。
 
あっ私も連絡しなきゃ、
でもバックの中に携帯が入ってるから、取りにいかないと。
 
のんきな私は、
ばたばたと対応されている客室乗務員さんに、
飛行機の中に携帯を取りにいってもいいか尋ねたのだが、
安全が確認できてないからダメということだった。
 
えっ、そんなにヤバい事態なわけ。
私は、ここではじめて、何が起きているのか理解した。
 
滑走路から、到着待合室まで
みんなで歩く中
私は、つい悲しくなってしまった。
 
このままバックが飛行機の中にあるままだったら、
どうしよう。
 
バックの中には、お財布も携帯も入っている。
運転免許証も入っているのに。
再発行手続きとか、面倒くさいな。
 
非常事態なのに、自分のことしか考えられない、
ちっぽけな私にも、余計にがっくりだった。
 
客室乗務員さんは、
大変なはずなのに、
破れたストキングのまま、滑走路を歩きながら
何度も何度も、私に声をかけてくださった。
 
しょんぼりした返事しかできないのに、
励ましてもらいながら、
なんとか待合室まで、たどり着いた。
 
その後も、すべての手続き終了まで、
航空会社の方が、とてもよくしてくださり、
長い長い待ち時間が最小限の不安ですんだ。
 
バックも中身も無傷のまま戻ってきて、
非日常から、日常に戻ってきた感じがした。
 
 
あれから飛行機に乗るたびに、
飲み物サービスが出てくる時間になると思い出す。
ああ、今日は、すべり台を降りなくていいんだなと。
 
日常をばたばたと過ごしていると
当たり前のことが当たり前におきているということの
ありがたさをついつい忘れてしまう。
 
朝、目が覚めることも、
予定通り、飛行機が飛ぶことも。
 
これから先も
飛行機に乗るかと尋ねられたりもしたが、
私は、迷いなく、乗ると答えていた。
 
それは、航空会社のスタッフの方々が
とても親身に対応してくださったことが大きい。
 
人生は、なんでも経験だと思っているが、
飛行機の非常口からリアルに脱出するということを
リアルに体験することは、
航空関係者であっても、まずないんじゃないかと思う。
 
そういう意味では、
非日常を体験できた、強運ということにでもなるのだろうか。
 
次、同じことが起こったら、
携帯とお財布は、
こっそり持って降りようと心に決めているのだが、
その機会がないことを願うばかりである。
 
 
***

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2018-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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