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「iPhoneを探す」に翻弄された一日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小倉 秀子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あれ? ない!」
 
ずっと楽しみにしていたお料理教室へ初めて参加する日。開催場所である友人宅へ向かう電車の中でのことだった。
スマホで駅から先の道順を調べようとバッグの中を探ったが、スマホが見当たらないことに気づいた。
 
「どこ? どこだっけ?」
 
バッグの中をくまなく探す。小物をよけて奥まで覗くが見当たらない。
初めて伺う友人宅の住所を聞いていて、地図を頼りに行くつもりだった。いざわからなくなったときの為に、彼女の電話番号も控えておいた。
全部スマホの中だ。
一緒に初参加の友達にも伝えていない。
 
「どうしよう。スマホが無いと住所も行き方も分からないし、連絡したくても番号もスマホの中だよ」
 
言っているうちにどんどんパニックに陥っていく。
どうやって教室に向かおう? どうやって友人にこの状況を伝えよう?
このまま連絡できずに帰らなければならないのか?
っていうか、私のスマホはどこだ?
 
「ひでちゃん、落ち着いて」
 
友達の一言で少し我に返った。
そう、あわてていても仕方ない。
少し冷静になろう。
 
まずスマホ。
約束の時間まではまだ少し余裕がある。連絡よりも先にスマホの在りかを突き止めよう。見つかれば事なきを得て、お料理教室に向かえる。
 
友達にも手伝ってもらい、全てのものをバッグから取り出してみた。ポケットなども確認した。
しかし、やはり見つからなかった。
ということは、今、私の手元にスマホはないのだ。
 
でも、こうして電車に乗れているということは、スマホのポケットに入れているPASMOで改札を通ったということだ。だから家に置き忘れた訳じゃない。電車に乗っている間のどこかで落としたのだ。
 
そこまで分かると、友達がいい手を思いついてくれた。
 
「『iPhoneを探す』で探せばいいんじゃない? 私のiPhoneを使って」
 
あ、その手があったか! 友達かしこい!
 
「うちの息子がしょっちゅうiPhoneを失くして、『iPhoneを探す』のヘビーユーザーだから」
 
なるほど、日頃の骨折りが役立っているのね。ありがとう。
 
さっそく彼女のiPhoneを拝借し、私のIDで「iPhoneを探す」にサインインした。すると……
 
地図が明確にある一点を指した。
 
渋谷駅付近だ!
あれ? なんだか、点が線路を移動しているぞ……。
 
そうか! 乗り換える前の電車に置いて来て、そのままスマホだけ渋谷へ行ってしまったんだ!
 
目の前の画面で、点が線路に沿って移動している。これが私のiPhoneの今の居場所か。やたらとリアルだ。なんだかぞくぞくする。
 
居場所が分かって、少しホッとした。そうなると、すぐにでも取り戻しに行きたいところだが、もうすぐお料理教室の時間。もう最寄り駅についてしまったし、渋谷に向かう時間は無い。後ろ髪をひかれるが、一旦この問題は置いておく事にしよう。
次の問題は、お料理教室主催の友人宅へどうやって向かうか、またはどうやって彼女と連絡をとるかだ。
 
これの解決策は、私が思いついた。
友人とはFacebookで繋がっている。私のIDでサインインすれば、メッセンジャーで彼女と連絡が取れる。
 
再度iPhoneを拝借し、メッセンジャーアプリをダウンロードした。設定、サインインして無事お料理教室の友人と連絡が取れた。
 
スマホを取り戻せるかとても気になっていたが、初めてのお料理教室、楽しみにしていた事もあるし、他の参加者の方や主催者である友人に迷惑がかかってはいけない。
一旦忘れて頭を切り替え、スマホを置き忘れたので住所を教えて欲しい事、探すのは後にしてそちらへ向かう事などを友人に伝えて電話を切った。
 
再度住所を聞き、教わった道順通りに早歩きで向かった。
トラブルで大分時間をロスしたものの、もともと時間に余裕を持って出かけていたため、開始時間にはなんとか間に合って友人宅に到着することができた。
 
とりあえず、ひとつ問題解決。
これで、初めてのお料理教室を楽しめる。スマホのことが気にはかかるけど……。
お料理教室開始直前に、再度位置を確認してみる。
すると、なんと、点はいつの間にか渋谷駅を離れて、渋谷109近くの「ますだや」という飲食店らしきところを指しているではないか!
 
私のスマホ、駅を降りたんだ。
ますだや? なんで「ますだや」に?
誰かが電車から持ち出したとしか考えられない!
 
お料理教室が始まるというのに、私のスマホの状況はいよいよ劇的な展開を迎えている。
焦りも頂点に達したが、ここは耐えないと。
持ち前の切り替え力で、スマホを後追いしたい思いを全力で振り払い、これから教室で繰り広げられるであろう楽しいおしゃべりと美味しいお料理作りに専念する事にした。
 
その後私たちは、簡単に作れてお味も絶品、しかもフォトジェニックなお料理を完成させた。存分に写真を取り、9品ものお料理を堪能しながらおしゃべりに花を咲かせ、楽しいひと時を過ごした。頭の片隅にスマホのことがよぎり続けていたけど……。
 
 
お料理教室が無事に終わった。
もう遠慮はいらない。私の頭の中は再び、手元にない私のスマホのことでいっぱいになった。
 
「iPhoneを探す」で私のiPhoneの位置を確認すると……またもや驚かされた。
「ますだや」を離れ、再度渋谷駅に向かって移動しているではないか!
 
これから取り戻しにそっちに行こうとしてるんだから、じっとしててよ!
まさか、また電車に乗ってどこかへ行こうっていうんじゃないでしょうね?
電車で追いかけっこだけは勘弁してほしー!
 
とにかく今できることは、渋谷方面へ向かう事だった。
ありがたい事に友達も付き合ってくれたので、「iPhoneを探す」の点を確認しながら渋谷へ向かえた。その間にも、点は移動を続けていた。
電車に乗っている間も何度も点の位置を確認した。その後しばらくは、点は渋谷駅で止まっていた。
 
お願い、そのままそこで止まっていて……。
祈るような気持ちで画面を見続けた。祈りは通じ、私たちが渋谷駅に到着した時、まだ点は渋谷駅で止まったままだった。
 
追いついた! さあ、渋谷駅のどこにいる?
 
「iPhoneを探す」の画面をずっと見ていて、気づいたことがあった。
 
彼女のIDでサインインすると、彼女の所持している、つまり今私が借りている手元のiPhoneの位置を点で確認できる。この手元のiPhoneと、私のiPhoneの点が重なったところ、そこがまさに私のiPhoneの在りかだ、ということだ。
 
渋谷駅構内を指している点を目指して、「iPhoneを探す」を頼りに歩いていくと……点の指している場所に到着した。手元のiPhoneと、私のiPhoneを示す点が、完全に一致したのだ。
 
そこは、東急線渋谷駅の遺失物取扱所だった。
 
「すみません、今朝iPhoneを電車に置き忘れたのですが、『iPhoneを探す』が、ここを指しています」
 
「少々お待ちください」
 
駅員さんが奥へ一旦下がり、程なくして戻ってきた。
見覚えのある、茶色のカバーのスマホを携えながら。
カバーに私のイニシャル「H」のマークがあった。
 
あった! 
間違いなく私のiPhoneだ!
 
ポケットのPASMOも無事だ。
一気に安堵の気持ちが込み上げてきた。
 
渋谷駅を降りて持ち出した誰かは、最終的にはここに届けてくれたのだ。
持ち出したのではなく、預かってくれていたのかな。
ちょっとでも犯罪を想像したことを反省した。
ありがとう。
 
 
気づくと、もう17時を過ぎている。
「初めてのお料理教室を楽しんだ一日」は、「『iPhoneを探す』に翻弄された一日」にもなってしまった。

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2018-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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