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メディアグランプリ

私の心がつくった景色


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高橋和子 (ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「今のあなたの状態はあなたの心が作りだしてる」
 
のたうち回るほどの激痛と太もものけいれんでその存在を明らかにした私の椎間板ヘルニア。すぐに手術が決まった。
 
「3週間で普通の暮らしができるようになり、3か月後にはスポーツもできるよ」
 
医師から説明を受け、気楽に受けた手術。でも、3か月たっても右足は動かない。100m歩くだけで太ももがけいれんして激痛が走る。動けない、歩けない。動けないことで筋肉が落ち、自分の体を支えられない。日常生活が送れない。杖がなければ歩けない。人混みが怖い。右足が動かないから運転ができない。
 
 
誰よりタフな体と精神が自慢だった。「すごいね」と言われることが当たり前だった。いろんなことに全力でぶつかってきた。挑戦が好きだった。大好きな出張、飛行機で、新幹線でレンタカーで、いろいろな人に会って話を聞いた。人と心が触れ合う瞬間が好きだった。
 
北海道にも九州にも一人で出かけた。レンタカーで何時間も一人で運転した。でも今は徒歩3分以内が私のすべて。動けない、歩けない、買い物すら自分でいけない。努力してもどうにもならない。元の体に戻りたい、どうして、何が悪かったんだろう、どうして私なの、と毎日泣いていた。
 
 
「先生、足が動かない。元の生活ができない」術後3か月の検診で医師に言った。
 
医師の答えはその時の私には冷たく聞こえた。
 
「今のあなたの状態はあなたの心が作り出している。どこも悪いところはない。手術で全部取った。なんでもできるはずだ」
 
「高橋さん、今あなたは55才。平均寿命まで生きるとしてあと30年。その30年間をあれもできない、これもできない、と思って生きるのか、足は動かないけどこれもできる、こんなこともできる、と感謝して生きるのかどちらかだよ。生きていれば理不尽なこともある。でも受け入れなきゃいけないよ」
 
 
医師の言葉には納得できない。でもほかにできることもなく、医師の勧めるストレッチと軽い筋トレを毎日続けた。続けても変わらない私の体。一番嫌いだった「目に見えない努力」をコツコツと続るよりすることがなかった。
 
 
育休中の娘が、動けない私を心配して0歳の孫を連れて毎日のように遊びに来てくれた。弟夫婦は京都の腰によく効く神社のお守りをもらってきてくれた。夫は毎日泣いている私を責めることなく、好きなようにさせてくれた。
 
車に乗って出かける。筋力がないのでドアを開けられない、コルセットをつけているのでドアを閉められない。開けてもらったドアにから車に乗り込み、ドアを閉めてもらう。「せめて自分でドアを開け閉めできるようになりたい」車に乗るたびそう思った。
 
買い物に行きたいな、歩きたい、汗をかきたい。
 
元気になるのがいつになるか分からないから約束ができない。
「今度あそこに行こうね」
そんな約束ができるのは元気だからと初めて気が付いた。
 
 
そんなうちに時間はゆっくり流れ、1歳の誕生日、保育園の夏祭り、運動会など孫の行事が続いた。かわいい孫の姿を見たくて、杖をつきながら頑張って出席した。
 
一人でバスに乗れるようになった。勉強会に行ってみた。夫と二人で新幹線に乗って出張に行った。手術から10か月たった時には、友人の結婚式に一人で東京まで行った。
 
気が付くと動かなかった右足も日常に支障がないくらいに回復していた。運転もできるようになった。発症から1年たって私は手術前の体をほぼ取り戻した。
 
 
「痛みは取れますが、痺れは取れにくい。気の毒だけどずっと取れないこともあります」
 
手術前に聞いた説明が当たってしまって右足の痺れは取れずずっと痺れたまま。右ひざの感覚もおかしい。完全な健康体ではない。
 
でも、何でもできる。ヨガも始めた。念願だったスイミングスクールにも通い始めた。あの時先生が言ったように不自由な自分を「受け入れている」。右足は変だけど何でもできるよ。
 
一人で乗る飛行機、ホームへ続く階段を駆け上って飛び乗る新幹線、仕事でする徹夜、出張先のホテルから見る見知らぬ街の景色、会って話して心を通わせる。通信教育の文章講座にも挑戦している。大好きな仕事にまた戻ってこられた。
 
娘は二人目の赤ちゃんを産み、私は里帰り出産を支えるた。片道30分かけて孫を保育園に送り、孫を抱っこして遊んだ。当たり前の毎日が戻ってきた。
 
 
朝起きて顔を洗う、歯を磨く、ご飯を作る。そんな小さなことすらできなかった日がある。誰かのためにご飯を作る、孫を抱っこする、走る、汗をかく。当たり前のように過ごす日常は当たり前じゃなくて、ありがたくて奇跡的なこと。日々に感謝して過ごしている。
 
「あなたの心が作り出している」
 
あの時医師が言ったその言葉が今ではわかる。日常のありがたさ、当たり前だと思ってることが当たり前ではないこと、それに気が付くために私の心があの状態を作り出していたんだ。
 
人生には締め切りがある。そして、その締め切りがいつやってくるのかは、誰にもわからない。いつか動けなくなる日が来る。だから、今できることに感謝して毎日を過ごしていこう。「私の心が作り出した」景色は大切なことに気づかせてくれた。
ありがとう。

 
 
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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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