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プロフェッショナル・ゼミ

経営者は補助金獲得を狙わない方が良い《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:鈴木佳文(プロフェッショナル・ゼミ)

「先生、こんなFAXが来てたんですけど、どうですかね」
社長が見せてくれたのは、補助金や助成金が貰えるかをアンケートに答えることで診断するという営業チラシ。
「社長は、興味ありますか?」
「そりゃあ、返済しないでいいお金が貰えるっていうなら欲しいよ」
そんな風に考える社長は、意外と多い。

「補助金は、申請すれば貰えるというものではないですよ」
「えっ! そうなの?」
「税金から支払われるお金ですからね、審査があるんです」
「先生に頼んだら、貰えるようにできるかな?」
「申請する補助金の種類にもよりますが、80%の確率で通せると思いますよ」
「じゃあ、お願いしようかな」
「もし、チラシに書いてあるような助成金を狙うなら僕はお手伝いできませんよ」
「なんで?」
「助成金は基本的に厚生労働省の管轄なので、社会保険労務士じゃないとサポートは難しいんです。必要なら凄腕の人、紹介しますよ」
「いや、この補助金を狙ってみようと思ってる」
「あぁ、これなら事業計画書の作成入門にも使えるのでやってみる価値はありますね」
とは言いながら、あんまり気乗りはしない。
でも、社長が張り切っているので手伝うことにした。

僕は事業計画書の作成と実行の支援を中心に経営コンサルタントとして活動している。
補助金申請に事業計画書の作成が必須であることもあって、補助金申請のサポートをすることもある。クライアントを選んで代わりに作ってあげれば採択率を100%にすることも簡単だ。
でも、代行作成はしないことにしているので、80%の採択率がぎりぎり。それでも、そこそこ高い方だと思う。
日頃からしっかりと事業計画書を作っていない会社だと、申請書類を作るにも一苦労だ。

「この機会に、事業計画書の作成に慣れてくださいね」
「これ、量が多過ぎて読む気にならないよ」
「大丈夫。ポイントを押さえれば一部を読むだけで充分ですから」
100ページ近い募集要項に社長が悲鳴をあげる。
不慣れな人がいきなり取り組もうとすると、大体は募集要項の厚さに挫折する。
挫折する人は良い。
問題なのは、補助金を貰いたくて頑張ってしまう人だ。
正しく取り組まないと採択されないので、投入した時間と労力が無駄になってしまう。

「社長は、何のためにこの補助金を活用したいと思ったのですか?」
「お店のフライヤーを買い替えたいんだよね」
「それだけだと、申請しても通らないです。この補助金は、数ある補助金の中でも一番簡単ですが、競争率は高いですよ」
「え~! 何とかしてよ」
社長へのヒアリングをベースにして、補助金申請書に記載するストーリーを捻りだす。

まずい。
これ、めちゃめちゃ手間が掛かるパターンだ。
笑顔で対応しながら、内心は投げ出したい気持ちで一杯。
補助金申請サポートの場合は、成果が出てから報酬を貰う形にすることが多いので手間が掛かるほど採算が悪くなる。

補助金は、医師が処方箋を書く病気の特効薬のようなものだ。
ちゃんと診察を受け、手間暇掛けないと貰えないし、使い方を誤ると副作用もある。
だから、お金を貰うという事だけでなく、何のために補助金を活用したいのかという目的を明確にしておくことが絶対に必要だ。

補助金を申請したい経営者で、計画書の作成が苦手な人はぜひ専門家に相談してほしい。
自分一人では進まない作業も、専門家のサポートがあれば効率的に進めることができる。お金目的で苦手な計画書作成に取り組むよりも、本業に力を注いだほうが建設的だと思う。

「先生、全然できていません……」
これで、何度目だろう。
嫌な予感は当たって、社長にお願いしている作業が全く進んでいない。
最初のヒアリングで、申請書が採択されるためのストーリーはできている。
代わりに作ってしまえば、早いし、社長が喜ぶのもわかっている。

でも、代行作成だけは絶対にしない。
代わりに作ってあげて後悔した、あの日と同じ場面はみたくないから。

事業計画書を専門分野にしようと思った時、金融機関の出身でもない僕にはノウハウが全くなかった。
もちろん、中小企業診断士として基本は学んでいるし、知識もある。
でも、圧倒的に実践が不足していた。
だから、100社は無料でサポートしてノウハウを学ぶことにしたのだった。
起業相談はちょこちょこ受けていたので、無料で融資を受けるところまでサポートすることを伝えると、喜んでOKしてくれる人が多かった。

ある時、イタリアンレストランでお店をやりたい、という人のサポートをした。
専門店で修業をしたシェフで、料理の腕は冴えていたけれど、経営については全くの素人だった。もちろん、事業計画書なんて作ったことはない。
融資が受けられるノウハウを得ることが目的だった僕は、事業計画書の作成も代行してしまったし、必要と思われることは、僕が代わりにやってしまった
。金融機関への説明にも同席した。
2000万円の融資が実行され、順調に準備が進んでいた。
お店がオープンできたと喜びのメールが届いたので、お店に行くのを楽しみにしていた。
その後、彼から連絡が無いまま半年が過ぎ、お店の近くで仕事が出来たので寄ってみることにした。

お店はあった。
でも、閉まっていた。
定休日でもないらしい。
携帯電話も繋がらない。
人気のない、暗い店内。

仕方が無いので、近くのお店に入り、食事をしながら話題を振ってみた。

「あぁ、夜逃げみたいだよ。最初の2週間くらいは行列も出来ていた感じだったんだけどね、続かなかったみたいだよ。あの場所、どんなお店が出ても続かないんだよなぁ」
ショックだった。
起業をサポートしたお店があっさり潰れてしまうと、悲しいというより虚しい。
希望に溢れ、あれこれと将来を語っていた笑顔を思い出すと涙が出てくる。

こんなケースは、このお店だけではない。

大慌てでリサーチしてみると、事業計画書の作成を代行したところは大抵が上手くいっていなかった。

これが、専門家に依存することによる副作用だ。
専門家に頼んで融資が実行されても、自分事としてその計画を進めていかなければ融資されたお金は減っていくだけ。

クライアントの希望する融資が実行されていい気になっていたけれど、クライアントが自分で動けるようになっていなければ意味がない。
一瞬だけ融資で資金調達をするドーピングをしても、継続的に稼げる力がなければ続かないんだ。
そんな簡単なことにも当時は気が付かなかったけれど、今は、お金を積まれても代行作成はしていない。

「じゃあ、これから毎週1回この時間に伺いますから」
「そんな、悪いよ。それよりも先生に書いてもらった方が早いと思う」
「代わりに作るということはしません。僕が一緒に考えますから、時間をしっかり取ってください」
一緒に顧客アンケートを作ってお客様の声を調査したり、レジのデータを全部パソコンに移して売れ筋商品を分析したり、代わりにやってしまえば簡単だったけれど、基本的には社長に全てやってもらった。だからこそ、計画は自分事になって、社長が自分事として計画を進める動きをし始めた。
「先生、採択されました!」
「やりましたね。でも補助金は後払いなので、ちゃんと計画を実施して証拠を残しておかないといけませんよ」
「わかりました!」
過去の反省もあるので、時々顔を出して実施状況を確認した。
制作物は間違いなく納品されたし、販売促進のイベントも集客は思わしくなかったけれど無事に実施できた。
でも、順調なのはそこまでだった。

「先生、報告書が作れません。もう、補助金を貰うのを諦めようと思って……」
報告書の提出締切の3日前にようやく電話がつながった。
メールでの進捗確認に返事が来なくなっていたので、予想はしていた。
そのために予定を空けていたので、すぐに駆け付けてサポートした。
「えぇ、チラシ、配布していないんですか?」
状況を確認したら、イベントで配布する筈のチラシを配布していなかった。
補助金の規定では、配布した枚数が少なければ補助金の支払いは減額される。
「とにかく、あと2日で配布できる限り配布してください」
半分以上が手元に残ってしまったが、配布しないという事態は避けられた。
報告書上のことなので、配ったことにしてしまうというズルもできる。
でも、社長が経営者として成長するためにもズルをしてはいけない。だから、敢えて減額になっても正直に報告することをお勧めした。

「先生、思ったよりも減額されませんでした!」
報告書に、ちらしを配布しきれなかった要因分析と今後の展開予定を明記したのが良かったらしい。
明るい社長の声に、ちょっとだけ報われた感じがした。

社長は、補助金という処方箋でお金を受け取る権利を得たけれど、使い切ることはできなかった。
これは、補助金申請の副作用だ。
申請で採択されることに精一杯で、計画を実行する場面で力を抜いてしまったのだ。
補助金をあてにして、金融機関からも融資を受けていたので、全額が支給されなければそれはそのまま自社の負担になる。
だから、計画を実行することに力を注げないのであれば、補助金は薬から毒に変わってしまう。

経営者は補助金獲得を狙わない方が良い。
大切なのは、目的を明確にして描いた、事業が成長する物語を実現するために行動することだ。
事業計画書を社員と共有し、同じ目的地に向かってチームを導いていくことだ。
補助金申請に余計な労力を掛けている場合ではないのだ。

普段から事業計画書を作って社員と共有し、実践していく習慣をつけることだ。
たまたま目的に合う補助金が出てきたとき、ちょいと転記して申請するくらいが丁度いい。
事業計画書を作って頑張って行動しているご褒美に補助金が出る感覚だ。
これなら、補助金は毒にならないし、副作用も抑えられる。

副作用のリスクがあっても補助金獲得を狙いたい人はそれでも良い。
補助金申請がきっかけで事業計画書を作り、経営力が高まっていくことだってある。
うまく処方した薬が病気に劇的に効くように、専門家や補助金をうまく活用すれば、事業成長の起爆剤となる。
補助金獲得は、手段に過ぎないのだ。

収益的には採算も悪いし、手間暇も掛かるけれど。
本気で経営力を高めたい社長が補助金獲得を狙うなら、僕はこれからもサポートしていくだろう。

***

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