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プロフェッショナル・ゼミ

苦しい時の学びは飯の種を生む《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木佳文(プロフェッショナル・ゼミ)
 
 
何となく、今の仕事が合わないような気がして転職するか迷っている。
今の仕事が辛すぎて、生きる喜びを感じられない。
自分は、何のために生きているんだろうか。
 
経営コンサルタントとして、もしくは研修講師として、転職や創業の相談を受けるときによく出てくる悩みは、進む方向性に迷っていることが多い。
 
「いい経験をしていますね!」
 
悩みを伺った後に、このようにお伝えすると、大抵は「安心しました」と言って貰える反応なのだけれど、「いま苦しんでいるのに酷い!」と怒り出す人もいる。
 
どちらも正解。
自分が今感じている気持ちを大切にして欲しい。
 
専門家として1000人以上のお悩み解消を支援してきた。
いま、まさに苦しんでいる人、もやもやとした気持ちで悩んでいる人に、僕の経験がヒントになれば嬉しい。
 
 
「もう退職する!」
そう決めた時、表には見せていなくても僕の心と身体はボロボロだった。
当時は、自分の偏った正義感と変な責任感に囚われていて、社内がゴタゴタした時に社員会の副会長だったこともあって、「責任を取らなければ」と思い込んでいた。
 
奈良漬で酔っ払う祖父の体質を受け継いでいたのに、自分の部屋でバーボンをラッパ飲みしていたし、夜も良く眠れなかった。
会社を安易に退職するのも逃げるみたいで嫌だったけれど、些細なことでキレて怒り出してしまうような精神状態で、社内にも友好的な関係を維持できている人がどんどん減っているように感じていた。
 
殆どの人が信じられなかったので、ごくごく仲の良かった人達以外が企画しようとした送別会はお断りした。それが、当然だと思っていた。後で聞けば、送別会を断ったことで、批判的なことを言っている人もいたらしいけれど、組織の義理で集まる人の顔なんてみたくもなかった。
 
殆ど全ての業務にマニュアルを作っておいたので、引継ぎはスムーズだった。
特に、何の感慨も湧かず、あっさりと退職したけれど……
 
「次にどうしたら良いか分からない」
退職して晴れ晴れとした気持ちが落ち着いてきたころ、沸き上がってきたのは強い不安感だった。
 
在職中は、様々な部署を短い期間で渡り歩いていて、特に秀でた専門性はない。何でも屋のプロ資格を目指して中小企業診断士の試験を受けていたけれど、3回連続で不合格になっている。
 
やりたいことも、できることも見えないまま、再就職に向けた活動をすることになった。
 
在職中、会社に来ていた経営コンサルタントが頼りなかったので、これなら自分でもできると勘違いをしていた時期があった。その時期の印象が強く、そのまま軽い気持ちで経営コンサルタントを目指すことにした。でも、秀でた専門性のない僕は、ことごとく不採用になっていった。
 
成果の無いまま、1カ月が過ぎ、2カ月が過ぎ、そして3ヶ月が過ぎようとしていた。何だか意地になっていた僕は、懲りずにハローワークやネット検索などで経営コンサルタントの求人を探していた。
 
そんなある日、個人コンサルタントの事務所でスタッフを募集していた。ダメもとで応募したところ、あっという間に面接にこぎつけた。企業調査の会社で2万社以上を訪問してリサーチした経験を持つという社長に会った。にじみ出てくる迫力を感じ、魅せられた。どうしてもこの人から学びたいと弟子入り希望を伝えた。OKになった時、僕の頭の中には、経営コンサルタントとして成功したバラ色の未来が描かれていた。
 
そんなに上手くいく訳がない。
 
「アポイントを取れたら同行する」
師匠に言われた時のショックは忘れられない。
先生の鞄を持ってついて回る、いわゆる鞄持ちで学ぶつもりだった。そのための弟子入りだし、給料を貰わない約束だから指導はしてもらえると思っていた。基本も出来ていないのに酷すぎる。
 
でも、弟子入りすると決めた時、指導には従うことを決めていた。
歯を食いしばって、飛び込み営業をすることにした。
 
「資料を作るのは禁止。その場で話を聴いて、提案をすること」
飛び込み営業の覚悟を決めた僕に、師匠から更なる追い打ち。
頭が真っ白になった。
どうしよう。そもそも営業は僕の苦手分野。そのうえ、資料も無いのでは、話が出来る気がしない。
頭を抱えていたいた時、ふと思い出したのはサラリーマン時代のことだった。
 
入社当時、スタッフなのに無理を言って営業と同じメニューの研修を受けさせて貰った。その時に飛び込み営業も経験がある。
設備営業の経験もある。接待麻雀だってさせられた。
システム管理の仕事をしたこともあれば、代理店の統括をしたこともある。
新規事業の企画をしたこともあれば、契約書の管理をしたこともある。
エトセトラ、エトセトラ……
 
なんだ、できそうじゃないか。
資料が無くたって、あらゆる部門の話に土地勘がある。
いきなり話を聞いても、全く分からないことはない。
そう思ったら、前に進む勇気がでた。
 
勇気が出たからといって、うまく行く訳ではない。
100件飛び込みをして、1件あって貰えれば良い方だし、目の前で渡した名刺を破かれたことだってある。
師匠の元で修業しながら勉強して合格した中小企業診断士の資格だって、飛び込んだ先で否定された。
 
だからこそ、飛び込んだ先で鍛えられた。
僕の偏った正義感は全く通用しないし、理論だけでは聞いて貰えない。
ピンポイントでお客様のお悩みに触れることが出来た時だけ、次のアポイントが取れる。
ふと気が付いた。
 
僕の一番の課題は、コミュニケーションだった。
サラリーマン時代には感じていなかったけれど、自分の都合や気持ちばかりで、相手を配慮する姿勢が不足していたんだ。
理論や規範で正しいことは、相手にとって心地よいとは限らない。
敵が増えても気にしていなかったけれど、別に増やす必要はなかった。
 
コミュニケーションの問題に気が付いてから、僕の動きは変わっていった。
産業カウンセラーの勉強をして、聴く力を高めた。
経営コンサルティングだからアドバイスをしなければ、というべき論を捨て、一緒に選択肢を考えるスタイルに変えた。
正しいことの追及を控えた。正解を探してしまうと動けなくなる。まずは動いてみることを意識した。
そうなってみて初めて、融資サポートのコンサルティングで100社、経験を積むことができた。
 
今では、事業計画書の作成と実行の支援は、僕の専門分野だ。
研修講師としては、コミュニケーションをテーマにしている。
それで、サラリーマン時代よりは稼げているのだから、ありがたいことだ。
自分が変わってきたからこそ、僕は人が変化できることを確信している。
 
創業のサポートをしていても、自分が苦しい思いをしてきたから、自分が困難を乗り切ってきたから、同じような人を助けたいという人が多い。
自分が経験してきた苦しみが、仕事に変わっていくのだ。
 
いま、まさに苦しんでいる、悩んでいる人は、その苦しみが自分を成長させることを信じてほしい。
歯を食いしばって、苦しみを乗り越えていくことが、そのまま自分のノウハウとして蓄積されていく。
 
これは、僕の体験からだけでなく、クライアントを支援する現場でも実感していることだ。
 
1つ例を挙げると、僕がもう10年サポートしている大判焼き屋さんがいる。
 
僕に愚痴を吐き出しながらも、常に前向きに困難に取り組んできた。
作った在庫を捨てる毎日が続き、彼が工夫したのは商品を冷凍すること。
冷凍した商品を美味しく食べられる方法を研究した。
その結果、通信販売にチャレンジすることができた。
 
通販に事業を拡大したら、生産能力が落ち着かなくなってきた。
商品発送や顧客のやり取りに消耗する毎日。
歯を食いしばって対応していたが、また新たなルートに目を向けた。
デパートなどの催事に出店しての販売にチャレンジしたのだ。
 
催事で売上は伸びるものの、一旦は催事の主催者に売上金を納めないといけないので資金繰りが厳しくなった。
しかも、競合店が出来て売上が落ちた。地域密着で商売をして、地域に貢献してきたのに、お客様に裏切られた気持ちが襲ってきて落ち込んでいた。
でも、その悔しさをバネに仕事の仕組みを変えることにチャレンジした。
 
自分が大判焼きのお店で開業し、創意工夫してきたノウハウを元に、開業支援の事業をスタートさせた。
これまでのチャレンジがあったからこそ、新たな事業の種が生まれたのだ。
 
そして今、持ち帰りだけでなく店舗で飲食を提供することにチャレンジしている。
チャレンジしたことの成果は、彼に開業支援を受けて開業したお店にも継承されていく。そして、それぞれのお店が行った創意工夫から彼もまた学ぶのだ。
苦しい現場で学んだからこそ、それは自分の中に生きた知恵として根付いていく。
 
無駄な経験など一切存在しない。
苦しい時は、自分が成長するチャンスだ。
苦しんでいる感情を忘れる必要はない。
むしろ、苦しみの感情から抜け出そうとすることもまた、前に進むエネルギーとなる。
 
苦しんでいる人は、その苦しみに。
迷っている人は、その迷いに。
全力で正面から向き合うと良い。
困難を乗り切ったとき、人として大きく成長した自分に気づくはずだ。
 
これまで出会ってきた成功者達。
成功談ばかりが耳に入ってくるけれど、実はそれ以上に困難に向き合い、苦しみや迷いを乗り越えてきている。
その体験から来る迫力が、その人の魅力を輝かせているのだ。
 
苦しみや悩みが自分の内側に向かっている時、それは自分を成長させる。
自分の苦しみや悩みを他人のために活かそうとしたとき、それは新しい飯の種になる。
 
アトピーで苦しんだ人が、アトピーを治療する人になる。
大判焼きの開業で苦労した人が、大判焼き店の開業支援をする。
コミュニケーションで苦労した人が、コミュニケーションの講師になる。
うつに苦しんだ人が、カウンセラーになる。
などなど
 
例を挙げていけばきりがないほど、苦しみは飯の種になるのだ。
 
困難を楽しもう。
苦しみを喜ぼう。
 
だって、そこを抜けていけば、成長した自分と飯の種が手に入るのだから。
 
僕はこれからも、困難にチャレンジしていく経営者達に伴走していきたい。
これもまた苦しいことだけれど、もう自分が成長することが分かっているから、すぐに楽しみに変わるのだ。
 
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