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メディアグランプリ

「すみません」って、ていねい?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:縞隈 千代子(ライティング・ゼミ平日コース)

「あのさぁ、『すみません』って何度もいうの、ほんとにやめてくれる?」
プロジェクト打ち合わせ時に、上司は怒りを噛み殺して言った。
わたしがいえることは「すみません」とだけ。
あるプロジェクト立ち上げのために採用されたわたしは、
今までの職場と違う仕事と上司にとまどっていた。

最初にゴールを決めてください。
それまでのマイルストーンを決めてください。
マイルストーンごとに声をかけてください。
わからないことがあったら即座に声をかけてください。

今から考えてみれば、プロジェクト進行のためにはあたりまえの指示だった。
でも、今まであったことのない年下の上司、やったことのない仕事に面食らったわたしは
上司に「わからない」ということすらできないほど小さくなっていた。
仕事のじゃまをしたらどうしよう。
怒られたらどうしよう。
それより、こんなばかな質問をしていいのだろうか。

そんなことを考えた末に発せられるのは「すみません」の連発。
「すみません。今質問していいですか?」
「すみません。さっき教わったところわからないのですが」
「すみません。いつも迷惑かけていて」
すみません。すみません。

あまりにも「すみません」が多かった私は、後日改めて個人面談の時に言われた。
「『すみません』ってよく言っているけれど、ほんとにそう思ってる?」
憮然と「おもってます。まだわからないこと多いし」と答えた。
「僕にはそう思えません」と一瞬の隙も与えずに上司は続けた。

「この仕事の責任から逃げたい、としか聞こえないんですよ」
そんなことないです! と強く反発しても、続ける上司の言葉はドシンと胸に響いた。

「でもさ、『使うべき価値がない人』って、自分でクライアントに言っているようなものですよ」

今まで思ってもみなかった。
「すみません」は、わたしにとってはていねいな言葉だった。
人には敵意を感じさせず、すこしへりくだって気を許させる。
そのことで安心感をもってクライアントに仕事を投げてもらう。
それこそが、わたしの理想とするサービスと思っていた。それがまっこうから否定されたのだ。

その面談の時は「むかつくー。あれだから傲慢な人って言われるんだよ。わたしは絶対そんな風にはならない」と思ったし、上司のいう言葉は流そうと思っていた。

それでもわたしの中にどこかずっとひっかかっていた。
「すみません」ってわたしそんなに言いすぎているのかな? 

しばらくもんもんといたわたしは、どのくらい言っているのか実際に数えてみようとノートにメモをしはじめた。すいませんと言った相手とシチュエーションだ。2週間ほどためてから振り返ってみた。

同僚に仕事をお願いするとき。
お店で店員さんに声をかけるとき。
電車を降りるとき。
うんうん、この辺はふつうに使うよな。

でも、自分であれ? と思った相手がいた。
それは住んでいるマンションに住む主婦の方たち。

先にエレベーター降りてすいません。
一斉清掃参加できなくてすいません。
日中の奥様会に出席できなくてすいません。

エレベーターでは自分の降りる階が単に先にきただけ。
一斉清掃日には参加ができないときは、事前に掃除はしている。
奥様会も強制参加ではない。
それなのに、わたしは「すみません」を必ず言っていた。
……あれ? わたし言わなくていいところで言ってる? 
もしかして、自分を卑下している? 

慌てて最初のページをもう一度めくってみた。
よく見ると、職場でわたしがすいませんを連発するのは、自分よりも高いポジションの人たちだけでなく、「自分より職場のキャリアが長い人」だった。特に自分の提案にコメントが付いたときだ。
まるで犬がお腹をみせるかのように、その人たちに「わたしを責めないでください、怖がりだから」「わたしに怒らないでください、仕事に自信がないから」と言ってるかのようだった。
これに気付いたときはショックだった。仕事でみとめられたい、と思っていたにもかかわらず
「仕事ができない自分」「怖がりな自分」と表明して逃げていたのだから。

ああ、わたしは「すみません」の魔力にやられていたんだな、と思った。
「すみません」の魔力、それは砂糖と同じ。
砂糖のあまみはクセになる。
疲れたときには無性に食べたくなる。
でも、食べすぎるとじわりじわりと身体に影響を与え、体重が増え、糖尿病などの成人病を引き起こす危険性がある。

「すみません」も同じだ。
その言葉を使っていれば、丁寧なひとだと印象づけられる。
敵意もかわせるかもしれない。でも同時に、「すみません」を無意識に連発するたびに、
自分を甘やかし、卑下し、自信を持つチャンスを逃してきたのだ。

そうか、これが上司が言いたいことなのか。
時間が経って自分の行動を振り返ってわかった瞬間だった。

それ以降「すみません」を言う回数を減らした。
いや、正確にいうと、その言葉を発する前に一度言葉をとめ、
「ここはすみませんが妥当? ……かわりのことばはある?」と考えるようになった。
同時になぜ「すみません」を使うのか? ということも考えるようになった。

この言葉の回数が減ったからと言って自信が大きくかわったわけではない。
砂糖断ちだってそうだろう。すぐに体重に変化は現れない。
それでも私は続けるだろう。よりポジシティブな言葉、具体的な言葉を相手に投げるようになり、
前より「ていねいな説明をする人」に近づいてきたみたいだから。

***

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2018-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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