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おひとりさまですが、なにか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:植松真理子 (ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
「だからお前は結婚できないんだよ!」
「それは今、関係ないでしょう!!」
 
仕事で何かぶつかり合った時、よくこんなことをいわれた。今から20数年前のことだ。
 
私は当時、結婚をしないと決めていたわけではなかった。しかし、結婚ということに漠然とした不安は感じていた。
性格が違う。趣味も違う。それぞれ別の好みがある。食べ物の好き嫌いも、常識と考えているマナーも違う。結婚をすれば、そんな者同士が1つ屋根の下に暮らすのだ。自分の価値観が出来上がる10代の頃ならまだわかるが、自我も価値観もできあがった年代の2人が一緒に暮らすのは、どちらかが全面降伏するか、あるいはお互いに我慢するしか成り立たないのではないだろうか。そんな生活を私は続けられるのだろうか? ……だが、そんな不安を感じること自体は、珍しいことではないはずだ。
しかし私は今も独身でいる。きっと生涯未婚だろう。いわゆる、おひとりさまだ。自分でも思う。なぜ結婚しなかったんだろう?
 
統計の世界では、50歳に達するまでに結婚歴のない男女を生涯未婚としてカウントするそうだ。生涯未婚率は、2015年の国勢調査では男性23%、女性14%。1990年は男性5.6%、女性4.3%だったそうだから、私の世代を先頭に、急速に結婚しない男女が増えたことになる。
私の上司世代の人たちの常識としては、性格に問題あり=結婚できない、だったのだと思う。だから、私の性格を叱る代わりに「だからお前は結婚できないんだ!」などと言ったのだろう。
 
私は怒って言い返していたが、実は「本当に一生独身だったらどうなってしまうんだろう」という不安でいっぱいだった。
 
「一生独身だったら、一生働かなくてはいけない。そんなこと私にできるんだろうか」
当時、シニアの女性で企業の中で普通に働いている人は超優秀な人ばかりだったので、私程度の中途半端さでは、いずれ会社の中に居場所がなくなるのではないかと思っていた。
しかし、だから結婚しようとするのは、自分がみじめな気がして嫌だった。どこまで役に立つかはわからなかったが貯蓄も頑張ったし、保険にも入った。色々はあったが何とか働き続けて、今に至っている。
 
「独りだと、病気やけがをした時に面倒をみてくれる人がいない」
ということも不安だった。だが、面倒を見てもらうために結婚しようと思うのも、違う気がした。もし、自分がそれを求められたら嫌な気分になる。相手だってそうだろう。
突発的な事故や原因不明の病気に対しては打つ手がないが、生活習慣病には食生活の改善が効くはずだ。せめて野菜を多くとることは、心掛けるようにした。
 
「精神的な支えがないのではないか」
この問題は切実だった。仕事でひどく落ち込んでしまった時、絶対に味方になってくれる人がいたら、本当にありがたいだろう。直接的に相談にのってくれなくても、必要とされていることが実感できれば、自分で自分を立て直すこともできるのではないだろうか。今は両親がいるが、両親が亡くなってしまったあとは、本当にひとりぼっちになってしまうと思うと、恐怖だった。
 もちろん結婚しても仲が悪くなる場合もあることは知っていたが、この人なら大丈夫、と思える人がいたら結婚を考えたい、と思っていたはずだ。
 
 しかし、なかなかそんな人との出会いがなく、今に至った。
その間、もちろん落ち込むことはあった。落ち込んだら立ち直らなければならない。そこで、できることは色々やってみた。
 
落ち込んだ時、確実に効果があると思ったことは、「よく寝ること」だ。つまり、睡眠時間をふだんより長くとるようにする。すると目覚めたとき、体が軽く感じられる。体が軽いとあまり思考も悪い方向へ向かない気がする。
落ち込むこと自体を少なくするために「運動する」ことを習慣にした。汗をかくのは理屈抜きに爽快で、気持ちのリセットができる。心と体はつながっているので、体をメンテナンスすることで、心にもいい影響があるということではないかと思う。
また、「善行を積む」ということも落ち込み回避に効果がある。電車で席を譲るでもいい。落とし物を届ける、でも乱れたままの椅子を戻してあげる、ということでもいい。自己満足というと言葉が悪いのだが、自己肯定感を感じることができる。動機として純粋ではないが、ボランティア活動に参加するのも同じような効果がある。
 
でも、こうやって落ち込みに対処してきたからといって、本当に結婚しないと決めていたわけではなかった。そこで、友人に聞いてみたことがある。
 
「ねぇ、なんで私は結婚しなかったと思う?」
「え? 結婚したかったの?! 全然そうは見えなかった。それに私はどっちでもいいよ」
 
こういわれて、なんだかギャフンとなった。
確かにその通りだ。結婚していようが、いなかろうが、私は私なのだ。単に自分が変に気にしていただけ、ということに気がついて、なんだか可笑しくなってしまった。
それに私は、未婚であることを人から聞かれたら、以前からこういっていたではないか。
「おひとりさまですが、なにか?」
次にこれをいう機会があったら、もっと微笑みながらいえるな、と思った。
 
***

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2018-11-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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