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子供の夢は電子レンジでチンするといい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:加藤 智康(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
私の子供が学校に通わなくなってから数年が経ったある日、今までの教育方針が間違っていたのか、育て方がまちがったのか考え込んでしまった。
あの手この手で学校に行きたくなるようにおだてたり、しかったりいろいろしてきた。
でも、わたしの言葉や想いが子供の心に届いているような感触はない。
最近は、家庭での体罰も問題になるような時代なので、力技もできない。
もちろん、意味もなく親の都合で暴力をふるうことは許されな時代だ。
 

わたしの子供のころの父は厳しかったと思う。
なにかあると、物置にとじこめられて怖い思いをしながら、思いっきり泣いたりしたこともあった。それこそ、周りの友達も同じような経験をしているのを聞いたこともあった。
悪いことをすると、怖い親がしかるのが普通だと思っていた。
 

バチン
 

私のほほを父がたたいた音がひびきわたった。
一瞬なにが起こったのかわからず目の前が真っ暗になった。
ビンタをもらっていたのだ。あまりの痛さに、涙が思わずでてきたのを覚えている。
テストの結果が悪くて、父の前に正座をさせられて、説教を受けている時だった。
テストの問題に答えがなぜか書かれていて、父がそれを指摘した。
私はつい嬉しくなって友達に教えてあげようと思って、つい言ってしまった。
 

「すごい。友達に教えてあげよう」
 

 

その瞬間にビンタが飛んできたのだった。
 

「だからお前はダメなんだ。勉強は戦いだ。なんでお前はそんなにお人よしなんだ」
 

厳しい父は、ほかの人が得することは黙っておけという人だった。
子どもながらに納得して、ほかの人にあまり良いことをしゃべらないようになった。
勉強をたくさんしても、「あんまり勉強してないよ」と相手を油断させるようになった。
いい解き方を見つけても、まったくシェアしないようになった。
こころの狭い生き方をしてしまったと思う。
 

でも、どうだろう。
大人になったら、情報を共有することが自分にもプラスになって、より深い理解が得られるという。また、いい情報を出すといい情報が相手からもらえるようになる。
インターネットでも、いい情報を出しているサイトには人があつまり、情報交換する流れがうまれている。みんなで情報は共有するのがいいという時代になった。
 

そんな現実を知ってから、情報共有を否定した父からのビンタをよく思い出す。
離婚して一人でわたしを育てていた父が、精一杯考えた末の教育方針だったのだろうか。
不思議と当時も反発心はあったけど、うらむまでには至っていない。
体罰を自然と受け入れていたのかもしれない。
一方で、感謝していることもある。なぜなら、過去の厳しい父からの教えが今のわたしを形作っていて、無駄なんてないと思うからだ。正確に言うと思いたいからだが。
時代、時代で考え方なんて変わるし、誰にも正解はわからない。
  

でも、そんな理解は、大人になり親になり社会経験をつんでからわかることである。
まだわたしの子供は中学生。
伝えたいけど、つたわらずもどかしい会話が続く。
 

子供の人生は始まったばかりで、将来がどうなるのかわからない。
だから、いま学校に行かなくても、本人にとっての結末はわからない。
でも、少なからず学校に行かないことはいい方向に向いていないと思った。
 

そして、子供を呼んで何度か話し合いをした。
学校に行きたくないといいながらも、本人には、お店をやりたいとか、動物園で働きたいとか、夢を持っているのはわかった。
学校も、人間関係や勉強が理解できないことで行きたくない気持ちもわかった。
そして、本人も苦しんでいるのが伝わってくる。
友達は普通に学校に行っているのに、自分は行けないことに負い目を感じているようだ。
痛いほど伝わってくるけど、いいアドバイスができない。
 

しかし、一つ気が付いたことがあった。子供の夢の一つが、ずっと変わっていないことだ。
子供とは将来のことを何度か話し合ったことがある。
それこそ、学校に行かなくなった数年前からよく聞いていた。
なぜなら、夢を語れば子供も学校に行きたくなると思ったからだ。
目指すものがあれば、勉強も楽しくなると思ったから。
その中で何度も出て来た子供の夢。
 

沢山出てきて、消えて出てこない夢もある。
でも、動物をお世話する仕事は何度も子供の夢としてでてくる。
なんでって聞いてみた。
 

「何度も消えかけても、やっぱりやりたいって思うんだよ」
興味がいろいろ変わっていくなかで、何度も冷えて、何度も温め直してどんどん夢の形がしっかりしてきて、本当にいい夢になっているようだった。
まるで、冷えたら電子レンジであたためれば、元のおいしいご飯に戻るように、子供は夢をあたため直している。そして具体的に行きたい専門学校も探している。
 

親としては、応援したい。
しかし、みんなが行くような普通の高校に行ってほしいと思っていたわたしがいた。
子供がまだ親を頼って甘えてくる時期が続いてほしいと思っているわたしがいた。
 

でも、驚くことに子供はよく考えて自分の道を作っている。
もう応援するしかない。
親の子供に対する夢も温め直すときがきたのかもしれない。

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2018-11-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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