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メディアグランプリ

ウォルト・ディズニーに学ぶキャリア戦略


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:横山信弘(ライティング・ゼミ火曜日コース)
 
 
「また会社、辞めるの?」
 
思わず私は大きな声を出してしまいました。
 
「そういう言い方はないでしょう。会社辞めるの2回目です」
 
「だって、この前入社したばかりじゃないか」
 
4年前のことでしたか。セミナーで知り合い、プライベートでも仲が良かった知人が私を喫茶店に呼び出して「来月、会社を辞める」と言ったのです。3ヵ月前に、入社したばかりの会社だったのに。
 
彼が最初に勤めたのは、印刷会社。営業に配属され、2年が経過したころに退職を決意。そのまますぐに辞めています。営業成績が悪かったのが原因かと思っていたら、「自分には夢がある。その夢をかなえるために」というのが理由だとのこと。
 
「もっと世の中に役立つ仕事をしたいんです。とくに子どもたちを笑顔にする仕事がしたい」
 
そう言ったのを、よく覚えています。
 
次に入社したのが、広告代理店でした。ここでも営業職に就いたようで、子どもの笑顔が見たいと言っていたあの夢はどうなったんだと聞きたくなるのをグッとこらえ、
 
「営業でがんばれよ」
 
と連絡しました。
 
「3年以内にトップ営業になります!」
 
とメールが戻ってきたのに、今度はたった3ヵ月で退職を決めたのです。
 
私のお気に入りの喫茶店でしたが、彼の前で飲むコーヒーは、いつもより渋みが増しているように感じられ、ため息しか出ませんでした。
 
「どうして広告代理店に勤めたんだよ」
 
「知人に勧められたんです。営業職に空きがあるからと」
 
私はどちらかというとリアリスト。現実家です。ですから「夢は子どもを笑顔にすることじゃなかったのか」などと言って責めるつもりはありません。
 
だからこそ、すぐにあきらめずにもう少し頑張れよと言いたくなります。
 
「辞めた理由は、広告代理店にいるかぎり、夢がかなわないと思ったからか」
 
「そう、ですね……」
 
ハッキリしない態度をとり続ける彼に、私はリアリストになれとアドバイスしました。「ディズニー・ストラテジー」を引き合いに出したのです。彼と一緒に通った自己啓発セミナーで習ったノウハウです。
 
ウォルト・ディズニーが夢を持ったとき、「ドリーマー(夢想家)」「リアリスト(現実家)」「クリティック(批評家)」という3つのポジションを自分の中に持ち、シチュエーションによってそれぞれの「目」を使って意思決定をしていきました。
 
「いつまでも青い鳥症候群ではいけない。リアリストの目で物事を見ろ」
 
「もっと現実的になれ、ということですか」と聞くので「そうだ」と答えました。私の知人にキャリアコンサルタントがいるから紹介する。3回目の転職になるのだから、次は失敗しないほうがいいとも言いました。
 
しかし、私のアドバイスは彼の耳に届かなかったようです。
 
それからすぐ、転職サイトを参考に、老健施設へ勤めたと聞きました。そして、また半年ほどで退職。8ヵ月ほど居酒屋でアルバイトしてから、閉店とともに職を失ったので、また私に連絡がありました。同じ喫茶店で会ったのですが、相変わらず私の助言は上の空で聞いています。そして、
 
「冬からスキー場でアルバイトをする予定です。それまでの4ヵ月は未定」
 
と言うので、
 
「もっと現実を見ろ」
 
と私は言いました。
 
「リアリストのポジションをとれ。いつまでドリーマーなんだ」
 
そう私が指摘すると、「横山さんはいつもクリティックですね。他人を批評してばかりいる」と言い返されたものだから私もカッとなり、
 
「だったら、夢をかなえたいだなんて俺に言うな。君がそう言うから、俺だって夢見ちゃうじゃないか。君が夢をかなえるという夢を」
 
そう吐き捨てて喫茶店を出ていきました。言われたことが図星だったからなのか、私はとても傷つきました。彼と何度か会った過去すべてを消したいとさえ思いました。
 
それから1年以上が経ち、たまにフェイスブックを確認すると、一週間に一回は、自分の食べたラーメンの感想や、好きなヨーロッパーサッカーについての投稿を目にするぐらいです。彼がどんな仕事に就き、どんな生活を送っているのか、判然としません。
 
そうやって年月が過ぎ、ひょんなことから去年、彼と再会しました。場所は、以前と同じ自己啓発セミナーの会場です。
 
「フェイスブックを見たら参加すると書いてあったんで」
 
もう30歳を過ぎた彼は、豊かなアゴ髭をたくわえていて、戸惑う私の顔を見ながら、にこやかに笑います。顔色がとてもいい。
 
「子ども食堂、やってます」
 
え、子ども食堂……?
 
「本業はカメラマンですが、7カ所で子ども食堂の運営を手伝っています」
 
素直に、私は感嘆しました。たった数年で、こんなに人は変わるものか。とても生き生きとした表情をしています。セミナーを受けたあと、一緒に飲みに行こうと誘ったが断られました。撮影の仕事が入っていると言う。
 
しかし、駅へ行くまでの道すがら、彼から聞いた言葉がとても心に残っています。
 
「ディズニー・ストラテジーはいつも頭にありますよ」
 
ドリーマー、リアリスト、クリティック。この3種類の「目」が自分の中に同居しているから、今はうまくいっているのだと。そして自分が「リアリスト」と「クリティック」のポジションを手に入れるには、いろいろな仕事を経験し、いろいろな種類の人と出会うことが必要だったのだと言ったのです。
 
「単なる夢想家で終わらないためにも、これまでの遠回りは、そんなに無駄じゃなかったのでは、と」
 
夜道でしたが、30歳で、そんな風に言える彼が、私にはとても眩しく見えました。
 
 
 
 
***
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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