出版社寄稿

子供をあやしながら、殺人事件について考えること【実業之日本社 関根亨氏特別寄稿】


 

子供をあやしながら、殺人事件について考えること

~小説家志望の方へ、マインドを応援する~

担当:関根亨(実業之日本社文芸出版部担当部長)

 

 

小説家志望のみなさん、実業之日本社で文芸出版部の担当部長をしております関根亨と申します。今日は、天狼院さんサイトをご覧の方々のうち、小説家志望のあなたへ向けて書きたいと思います。

自著が書店に平積みされ、ベストセラーランキングをにぎわせ、多数の編集者たちが依頼の列をなしたら、とお考えになったことがあるでしょう。事実、書店さんには小説家志望教養本が多数並んでおります。講座・スクールもいつくかあり、「小説の書き方」をティーチングするソースは、選び放題です。

私は編集の方で、20数年ほどやっているプロの端くれとして、書き方に関しては上記先達ソースに任せ、本稿では小説家志望の皆さんのマインド面を応援しようと思います。いわば心構えについてですね。

その前に「お前は何者だ」と思っておられるでしょうから、冒頭の写真、ここ2~3年で私が担当させていただき、市場で好反応をいただきました小説の一部をもって自己紹介に変えます。「あ、エンタメ系編集ね」と思っていただければ正解です。

私が編集者として側聞した、小説家の方々の、ふだんのマインド面の一端をお話しして、皆さんを鼓舞してみましょう。

プロ小説家、優れた小説家たりえる方々は、皆さんが考える以上に、24時間365日小説のことを考えています。執筆時間帯はもちろんのこと、書いていない時も、次の作品をどうしようか必死なのです。

Aさんは、書く時間、分量のノルマを決め、達成するまでパソコンの前を離れません。

Bさんは、手書き原稿ですが、喫茶店で編集者を待つ間、移動中の乗り物はもちろん、歩きながらでも書くことができます。

Ⅽさんは、家族旅行で、ある公共交通機関を利用。それをヒントに、その直後の作品で、殺人犯の移動手段にその公共交通機関を使いました。

Ⅾさんは、ビジネスマンと小説家の兼業です。週末は子供と昼間遊んでから、月曜朝に会社に行くまでが執筆の時間になっています。

以上は、ほんの少数例を挙げました。念のため申し上げておきますが、この写真に出ている方々のことではありません。「Aさん」「Bさん」と単数のように書きましたが、おひとりの方の例をそのまま書いたわけではありません。

手っ取り早く申し上げましょう。

小説家志望のあなた、自分の子供をあやしながら、殺人事件のことを考えられますか?

「それはミステリーの人だけのことだろ」とお考えかもしれません。極端な言い方になりましたが、私が言いたかったのは、「そこまで覚悟を決められますか」「自分の頭の中を小説でフルスロットルできますか」ということです。

次段階へ話を進めます。優れた小説家は、心血を注いで書いた作品を編集者や読者にゆだね、大げさな言い方をすれが審判をあおぐことになんの躊躇もありません。

編集者の改稿要請には、前向きになります。またその意見が納得いかない場合でも、我を張ることなく、懇切丁寧に意見交換を行います。

無事に書店に並んだ暁には、執着という概念はありません。間違っても、

「私の作品が売れないのは読者に見る目がないからだ」と思うことはないのです。

いったん市場に出た作品に対しては天命にまかせ、次に考えている、書いているのは新しい作品になります。

どうですか、自己のすべてをかける姿勢と、同時に後事を天に任せる潔さ。

私ですか。 もちろん、拙文を読んでくださるかどうか、天命にゆだねております。天狼院1日店長になりたいなどという、よこしまな考えなんてありませんよ、もちろん……。

 

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2015-05-11 | Posted in 出版社寄稿

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