STUDIO天狼院

「トキワ荘」という言葉は、まもなく、書き換えられる〜「スタジオ天狼院」の挑戦〜


まだ、スマートフォンがない時代。
スマートフォンどころか、インターネットすらない時代、ある一人の高校生が東京は上野駅に降り立った。

新幹線もまだ走っていない当時、東北出身者にとっての東京の入り口と言えば、上野駅だった。

天才の名をほしいままにしていた漫画家の誘いを受けて、公務員の親の大反対を押し切っての上京だった。

彼は、池袋の、正確には今でいうところの椎名町か東長崎あたりにあった、小さなアパートに住み込んで漫画を書くことになった。
そこには、彼を誘った天才手塚治虫を始め、赤塚不二夫や藤子不二雄といった、後年、国民的漫画家となる才能達が暮らし、日々、研鑽していた。

あるいは、故郷、宮城の地での安寧を捨てて、東京のアパートに飛び込んだその少年は、明治維新の際に、志士たちが好んで口にしたこの句と同じ心境だったのかもしれない。

 

男子志を持って郷関を出ず 学もしならずんば死すとも帰らず(長州藩月性の句)

 

もっとも、彼がこの句を知っていたかどうか不明だが、少なからず、覚悟を抱いての上京だっただろう。
その中でも、最年少だった彼は、人並み外れた筆の早さを見せ、あの赤塚不二夫をアシスタントとして使っていたという。
彼は、その後、すぐに頭角をあらわし、国民的な漫画家となる。

その豊島区にあったアパートこそは「トキワ荘」であり、その少年こそが石ノ森章太郎だった――

 

天狼院書店店主の三浦でございます。
僕には、とある幼い日の記憶があります。

僕は宮城の農村出身で、祖父母とも生まれた頃より一緒に暮らしていたのですが、祖母の実家に正月やお盆に挨拶に行く際に、祖母の実家の近くの、カーブを曲がったところで、必ず、祖母は車の中から外のたばこ屋を指して、僕にこう言ったのでした。

「こごがさ、石ノ森章太郎の実家なのよ」

「だれ、それ?」

「ほら、仮面ライダー作った人さ」

そう、祖母の実家は、宮城県の石森町にありました。

僕は幼いころから、どうやらそこで「すごい人」が生まれたらしいことを、祖母に教えてもらっていたのですが、もちろん、幼かったのでピンと来ませんでした。
けれども、成長するに連れてその偉大さがようやく分かるようになってきて、そして、偶然、石ノ森章太郎が筆を振るった東京豊島区に天狼院書店という小さな書店をオープンさせてからというもの、脳裏のどこかで「宿命」とまではいかないまでも、急かされるような、小さな衝動を常に抱くようになりました。

現代版の「トキワ荘」を、僕が創らねばならない、と。

実は、天狼院書店の設立の背景として、ひそかに、これに「トキワ荘」を担わせようと思っていました。

それなので、まずは、本が好きで、書くことに適正のあるスタッフを、「意図的に」集めました。

今、彼女たちは天狼院で書くことを通して、徐々に力をつけています。
おそらく、たとえば川代紗生か三宅香帆などが先陣を切って、プロとしてデビューすることでしょう。
それは、今の天狼院にとっては、何も難しいことではない。

ひとり、プロが出れば、余勢をかって、さらにプロが出るでしょう。
そうなれば、きっと、それを感知した感受性の豊かな新たな才能たちが競うようにして全国から天狼院を目指すようになるでしょう。

まるで、螺旋を描くように、その「場」には上昇気流が巻き起こって、天狼院は「コンテンツ・メイキング」の拠点になるだろうと僕は想像しました。それは、難しいことではなく、遠い未来の話でもありません。
それまでは、おそらく、「天狼院書店」で十分に実現が可能です。

ところが、予想外のことが、今、天狼院では起きています。

天狼院書店を「トキワ荘」に見立てて、天狼院のスタッフをトキワ荘の住民に見立てて彼女たちを「作家」にしようとしていた僕の未来予想図が、リアルにおいて大きく書き換えられようとしているのです。

原因は、天狼院のお客様でした。

設立当初はまったく想定外のことだったのですが、天狼院書店のお客様たちが、僕が集めた才能たちを、あるいは凌駕してしまうほどの勢いを見せ始めたのです。
はじめは、偶然だろうと思っていました。
天狼院の本流のスタッフたちが、関与の薄いはずのお客様に負けるはずがないと高をくくっていたのです。

ところが、もう、逆に天狼院のスタッフのほうが、お客様に刃が立たなくなっている。

しかも、「ライティング」や「小説」の分野ばかりではありません。
「演劇」も「起業」も「読書」も、そして「写真」の分野においても、お客様の創作能力が著しい成長曲線を描くようになってきました。

これまでの未来予想図であれば、「天狼院書店」で十分でした。スタッフの創作能力を上げるだけであれば、それでよかった。
ところが、数多くのお客様があらゆる分野の「創作」や「研究」に興味を示し、力を示されている今となっては、もう、「天狼院書店」という概念と規模では、お客様の求めるものに対して、十分に対応できなくなっているのです。

本とその先にある「体験」を提供する書店として誕生した「天狼院書店」は、いつしか、お客様の顕在的な意志や潜在的なニーズによって、「人生を変える書店」に書き換えられていたのです。

天狼院書店は、オープン以来「iPS細胞のように自在に進化し成長する書店」を標榜していますが、それにしても、当初の予定よりもはるかに成長速度が早く、そして、そのかたちも想像以上に変容しています。

このままでは、せっかく生まれたお客様の可能性が、十全に育たないままに露のように消えてしまう。

より大きな、そして燦然とした未来を描くための道を、僕は常に模索して来ました。

そして、ある日、僕はその「解」に辿り着いたのでした。
たどり着いた「解」は、とても、シンプルなものでした。

新しいお客様が常に往来する「天狼院書店」と「創作の場」を切り離そう。
そして、その新しい「創作の場」に新しい名前を与えよう。

それが「スタジオ天狼院」です。
天狼院がお贈りする新しいブランドとして、あらゆるクリエイティブのための「スタジオ天狼院」を設立いたします。

スタジオ天狼院の「スタジオ」の意味ですが、これは「写真館」という意味よりも「スタジオジブリ」の「スタジオ」により近い意味です。
クリエイティブ・スタジオとして、「小説」、「ライティング」、「デザイン」、「漫画」、「イラスト」、「写真」、「映画」、「演劇」など、あらゆる「創作の場」として、ご利用いただけるようになります。
もちろん、「フォトスタジオ」の機能も兼ね備えます。そして、小劇場であり、映画館でありという「シアター」の機能も兼ね備えます。
そして、「ギャラリー」としての機能も持たせます。

つまり、「コンテンツ・メイキング」のための「創作の場」でありながらも、コンテンツの「発表の場」でもあるという両面的な場所となります。

また、お客様とスタッフの創作を促進させるために、「読書会」「部活」「ゼミ」に続く、まったく新しい概念を始めます。

それが「天狼院の研究所(インスティテュート)」です。

たとえば、単発のイベントやゼミでは制作が難しかった「雑誌」や「映画」などは、この「研究所(インスティテュート)」で長期的な制作を試みます。また、研究いたします。

これは、大きなくくりでなくとも、お客様の要望によって、たとえばフォト系なら「ポートレート研究所」、「風景写真研究所」など、可能性があれば細分化しても設立させる場合があります。

ひとつのスタジオに「18〜36」の研究所を設立する予定です。

ここで、お客様同士で、長期的に研究し、長期的に制作してもらいます。

「スタジオ天狼院」の一店舗目は、12月23日(祝)に東京、池袋に34坪の大きさでオープン予定です。
それは、ちょうど福岡天狼院を同じ大きさで、東京天狼院からすれば、2.8倍ほどの大きさになります。

これを、順次、全国に展開してまいります。

ただし、「スタジオ天狼院」は、「天狼院書店」と「凹」と「凸」の関係性になっています。

天狼院書店にある「小さなどこでもドア=本」を入り口として、天狼院書店が提供する「READING LIFE」を体験していただき、その先に「スタジオ天狼院」という「創作の場」に至ってもらうという流れになります。

つまり、基本的には「天狼院書店」がある場所に、「スタジオ天狼院」がつがいになるべく設立されます。
もちろん、福岡天狼院や京都天狼院など、売り場と「創作の場」が切り離せる広さがある場合は、その中に設立されます。

ただし、「スタジオ天狼院」は、「天狼院書店」と違って、自由に無制限に参加できる場ではありません。

まずは、体験講座やオープン講座は用意しますが、CLASS天狼院「プラチナクラス」のお客様に限定させていただきます。
そして、大変申し訳ありませんが、質の高い「創作」を実現させるために「プラチナクラス」の定員数も限定させていただきます。
(スタジオのオープンによりある程度は増席しますが、どの程度、ご要望があるか読めませんので、お早めに席を確保することをおすすめします)

「天狼院の研究所(インスティテュート)」については、随時、発表しますので、お待ち下さい。

そして、「スタジオ天狼院」における「創作」の発表の場として、雑誌『READING LIFE』を復刊させます。
こちらは、何度も発売を目指し、延期を繰り返し、皆様にご迷惑をかけておりますが、端的に言って、発売を見送ったのは、読者となるお客様にお金を支払ってもらい、満足してもらえるだけの「コンテンツ」を十分に揃えられなかったからです。

ただし、「創作の場」としての「スタジオ天狼院」がオープンすることによって、継続的に雑誌の中の「コンテンツ」が生み出されていくだろうと思います。また、ライティング・ゼミの皆様、プロフェッショナル・ゼミの皆様、小説家養成ゼミの皆様は、飛躍的に力をつけておりますので、面白いコンテンツが生み出されるだろうと期待しております。

最後に、「スタジオ天狼院」の最大の特長を申し上げたいと思います。

それは、全国のスタジオが一体である、ということです。

石ノ森章太郎の時代は、スマートフォンどころかインターネットもありませんでした。
けれども、今はインターネットがあり、スマートフォンがあり、そして、SNSで人は強固に繋がることができます。

また、トキワ荘の時代は、新幹線もなかったので、移動にはとんでもなく費用と時間を要しました。
けれども、今は新幹線があり、格安航空券もあり、移動が飛躍的に容易になりました。

ひとつの「スタジオ天狼院」に所属することは、全国の「スタジオ天狼院」に所属するのと同じことになります。

一昔前まで、僕は「トキワ荘」にあこがれていて、天狼院書店で「トキワ荘」を実現しようと考えていました。

けれども、今は、その時代ではない。

全国各地にある「スタジオ天狼院」が強力な「創作の磁場」となり、その「磁場」が最新の技術で縦横無尽につながりあって、より開かれて強固な「創作の場」を現出できるものと、僕は信じております。

あるいは、近い将来、様々な新しいクリエイティブな才能を生み出す場のことを「トキワ荘」のような、ではなく、「天狼院」のようなと言われる日が来るだろうと思います。

いや、僕は、そう信じております。

*「スタジオ天狼院」オープンを記念して「アドバンス・セール」を12月1日より開始します。オープンならではの超絶お得なチケットを分野ごとにご用意します。ただし、数に限りがありますので、お早めにお買い求めいただくことをおすすめします。「アドバンス・セール」の詳細については、近日中に発表いたします。
*「スタジオ天狼院」オープンにともない、クリエイティブに特化した「クリエイティブ・インターン」を募集します。学生のみの募集となりますが、詳細については、近日中に発表します。
*「スタジオ天狼院」オープンにともない、天狼院の雑誌、天狼院がプロデュースする書籍のモデル、動画や舞台への出演、撮影会のモデル等に優先的に起用される「天狼院フォトジェニック(モデル)」を募集します。詳細については、近日中に発表します。

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F TEL:03-6914-3618 FAX:03-6914-3619 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階 TEL 092-518-7435 FAX 092-518-4941

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2016-11-23 | Posted in STUDIO天狼院, 天狼院通信

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